コロナ禍で1日平均1,000件の利用!LINE公式アカウントが駒澤大学の窓口対応の負担を軽減
約1万4,500人の学生が所属する駒澤大学の教務部では、2020年4月にLINE公式アカウントを開設し、在学生から寄せられる質問に対応するチャットボットとして運用を開始しました。サービスの設計と運用を容易なものにしたのが、LINE公式アカウントのAPI対応ツール「KANAMETO(カナメト)」です。
LINE公式アカウントを活用して学生のサポートを行う駒澤大学 教務部の鎌田麻美氏(以下、鎌田氏)、山本典之氏(以下、山本氏)、玉井成承氏(以下、玉井氏)と、「KANAMETO」を開発・提供しているtranscosmos online communications株式会社(以下、transcosmos online communications)の佐藤隼人氏(以下、佐藤氏)、LINE株式会社(現 LINEヤフー株式会社)の事業開発を行う佐藤将輝(以下、LINE 佐藤)に話を聞きました。
目的 |
・窓口対応の業務負担を軽減したい ・夜間でも学生からの問い合わせに対応したい |
施策 |
・LINE公式アカウントのAPI対応ツール「KANAMETO(カナメト)」を導入し、在学生から寄せられる質問に対応するチャットボットを運用 |
効果 |
・運用を開始して2カ月で友だち数3,844人、チャットボットの起動回数・利用回数は1万8,479件を記録 ・5月の履修登録時期には1日平均1,000件以上の質問が寄せられた ・新型コロナウイルス感染拡大下で窓口対応が難しい場合でも、チャットボットによって質問への対応が可能になった |
※本記事は2020年10月LINE for Businessに掲載された記事を転載しています。
※2023年10月更新
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窓口対応の代わりにLINE公式アカウントを導入
駒澤大学 教務部 教務課長 鎌田 麻美氏(写真左)
駒澤大学 教務部 教務課 教務1係 玉井 成承 氏(写真中央)
駒澤大学 教務部 教務課 教務1係長 山本 典之氏(写真右)
7つの学部と9つの大学院研究科からなる駒澤大学は、すべての学部が東京都世田谷区の駒沢キャンパスに集約された総合大学です。約1万4,500人の学生が所属し、履修登録や試験、成績に関して学生のサポートをする教務部の窓口への問い合わせ件数は、年間5,000件にものぼります。そこで、同大学教務部の玉井氏は在学生から寄せられる質問に対応するFAQチャットボットの運用を企画しました。その理由について玉井氏は次のように述べます。
「理由は大きく二つあります。一つは、学生から寄せられる質問の8割が、全学生に配付している資料や大学のホームページ、在学生専用ページなどを参照すれば解決できる内容であること。それでも問い合わせが多いということは、必要な情報が学生に届いていないと考えていました。
もう一つは、これまで夜間の問い合わせに対応できていなかったことです。学生からよく寄せられる質問の一つが履修登録に関してですが、履修登録が行われる時間帯を分析したところ、夜間に集中していることが分かりました。しかし、夜間では大学の窓口が空いていないため、学生が困ったときにすぐに対応することができません。そこで、日中の職員の窓口業務の負担を軽減し、夜間でも学生が問い合わせることのできる体制を構築するため、2019年の夏頃から学生の質問に自動回答するFAQチャットボットの導入を検討しはじめました」(玉井氏)
FAQチャットボットの導入にあたり、玉井氏が数あるツールの中からLINE公式アカウントを選んだ理由は「学生にとって一番馴染みのあるツールがLINEだったため」だといいます。
「2018年度に本学が実施した調査では、調査に回答した学生のLINE利用率は98%を超えていました。LINEに親しんだ学生にとってメールは馴染みの薄いツールであることも分かり、1年生の中には使用した経験がないという学生も珍しくありません。そこで、学生に情報を広く届けるにはLINEの活用が適していると判断し、LINE公式アカウントの活用を決めました」(玉井氏)
当初の計画では1年かけて準備をし、2020年9月から運用を開始する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって状況が一変。感染拡大防止のために2020年3月から大学が全面閉鎖され、窓口対応ができなくなったことから急遽、LINE公式アカウントの導入を同年4月1日に前倒しました。同部の鎌田氏は当時を次のように振り返ります。
「LINE公式アカウントの開設は、煩雑な手続きや事前設定が必要なくスムーズに行えたので大変助かりました。新型コロナウイルス感染拡大における本学の対応を学生に知らせるため、急遽チャットボットにも新型コロナウイルス関連の項目を設けることにし、3週間という短期間で準備を終えて運用を開始しました。運用開始にあたっては大学ホームページや学生専用のWebページなどで告知をして、友だち追加を促しました」(鎌田氏)
新型コロナウイルスへの大学の対応をLINE公式アカウントを通じて告知
誰でも簡単に運用できる「KANAMETO」を活用し、FAQチャットボットを実装
今回、短期間でFAQチャットボットを導入ができた理由のひとつに、transcosmos online communicationsが開発・提供するLINE公式アカウントのAPI対応ツール「KANAMETO」を利用したことが挙げられます。
「KANAMETOはLINE公式アカウントの機能を拡張するカスタマーサポートツールです。KANAMETOの導入により、LINE公式アカウントからメッセージのセグメント配信やアンケートの実施、そしてチャットボットの実装という3つの機能が簡単に利用できるようになります。複雑なシステム連携が不要で、LINE公式アカウントの開設後、最短1週間ほどで実装が可能です」(佐藤氏)
transcosmos online communications株式会社 LINE関連営業部門
部門長 佐藤隼人氏(写真左)
LINE株式会社(現 LINEヤフー株式会社) プラットフォーム事業開発室 ビジネスコンサルティングチーム
アシスタントマネージャー 佐藤将輝(写真右)
現在、KANAMETOは人材紹介会社における仕事情報の配信やECサイトのカスタマーサポート、自治体の市政情報の発信、教育委員会のいじめ相談など、さまざまな用途で活用されています。
「幸いにもKANAMETOを利用する9割以上のクライアントに満足いただいています。最近は自治体でチャットボット機能を利用する事例が増えていて、宮城県都城市では移住相談の窓口に、熊本県熊本市では新型コロナウイルスに関する最新情報の発信や症状が出た際のガイドラインの提示に活用いただいています」(佐藤氏)
さらに、KANAMETOを導入すると、最大で6分割できるLINE公式アカウントのリッチメニューが12分割まで設定できるようになります。駒澤大学では10分割を採用し、履修や授業、成績などに関する「よくある質問」を上部に配置しました。特に目立たせたい「新型コロナウイルスに伴う本学の対応」を「履修・成績に関する個別相談」と一緒にボタン2つ分のスペースを使用して中段に配置。学生が直感的に操作をしやすいように工夫しています。
リッチメニューのボタンを押すとチャットボットが起動し、学生が知りたい項目を選択することができる
それぞれのボタンを押すとFAQチャットボットが起動し、質問項目を選ぶか、フリーワードで質問を入力すると事前に設定した応答内容が自動で返信されます。質問項目と応答内容はこれまで窓口に寄せられた問い合わせを分析し、あらゆるパターンを想定して作成しました。
ユーザビリティーに優れている点もKANAMETOの特長の一つで、「30分ほどのレクチャーを受けたら、すぐに自分で作業できるようになった」と玉井氏は語ります。
「職員から別の職員へのレクチャーも簡単で、現在は複数人がKANAMETOを操作してLINE公式アカウントを運用しています。また、学生からの問い合わせ内容もリアルタイムで確認できるため、日々データとして蓄積し、応答内容の新規追加・改善もスピーディーに行っています。対面での窓口対応と比較すると、学生への問い合わせ対応におけるPDCAサイクルが高速化したと実感しています」(玉井氏)
運用開始から2カ月で学生全体のうち25%が友だちに
駒澤大学ではLINE公式アカウントの運用にあたり、他大学の活用事例を参考に「2カ月で友だち数3,500人、FAQチャットボットの起動回数・利用回数1万5,000件」をKPIに設定しました。運用を開始して2カ月が経過した2020年6月末時点での友だち追加数は3,844人、実際のFAQチャットボットの起動回数・利用回数は1万8,479件と、当初のKPIを達成しています。これらの成果について、同部の山本氏は次のように述べます。
「5月の履修登録時期には1日平均1,000件を超えるチャットボットの利用がありました。当初の予定を前倒ししての導入となり、準備不足なのではないかという懸念もありましたが、窓口が全面閉鎖される状況下でLINE公式アカウントは重要な役割を果たしたと感じています。もしチャットボットがなかったら、問い合わせフォームに送られてきた膨大な質問に、職員が個別に対応しなければなりませんでした」(山本氏)
今後はコミュニケーションツールとして、さらなるLINE公式アカウントの利用を検討していきたいと玉井氏は展望を語ります。
「チャットボットの導入によって、学生たちが抱えている潜在的な疑問や悩みを知ることができました。これまで窓口に足を運ぶことがなかった学生も、LINEで気軽に質問ができるようになったのは大きな成果です。今後はさらに応答の精度を高めつつ、学生に寄り添った活用を模索していきたいと思います」(玉井氏)
駒澤大学の取り組みを受け、事業開発担当であるLINEの佐藤は、次のように今後の展望を語りました。
「LINEは2020年春にLINE公式アカウントの『学校プラン※』を提供しましたが、対象は全国の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校に限られていました。大学への支援を届けることができなかったこともあり、駒澤大学さまがこのようにLINEを活用いただいて非常に嬉しく思っています。学生の皆さんとLINEの相性の良さを実感するとともに、今後も学校と学生の円滑なコミュニケーション環境を支えられるよう、努めていきたいです」(LINE 佐藤)
※現在、「学校プラン」の新規申し込みは締め切っています。
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