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ニューノーマル時代を店舗はどう勝ち抜いていくべきか。オピニオンリーダーが語る、リテール業界に求められる「今」と「未来」

あらゆる企業がコロナ危機のもたらした困難を乗り越えようと、模索を続けている昨今。経営者・マーケターのみなさんにとって、先行きが不透明な今のこの状況で知りたいことは、精神論ではなく、前進するための考え方と具体的な行動指針ではないでしょうか。

トランスコスモスではこのような課題感を見据え、様々な業界の第一人者をお招きしリテール業界における「コロナ危機下の経営手法」や「今注目すべきソリューション」について議論するオンラインイベントを全3回に渡って開催しています。

本記事はその第一回、7/10(金)に開催した『withコロナ環境下で店舗ビジネスはどう進化し、生き残れるのか』についてのダイジェスト版イベントレポートとなります。



●パネリスト

店舗のICT活用研究所 代表 郡司 昇氏

グリッドCEO / 吉野家CMO 田中 安人 氏

フリーランス 村田 昭彦 氏

ワコール 執行役員 下山廣 氏

●モデレーター

トランスコスモス 常務執行役員 柏木 又浩

※以下、敬称略


目次[非表示]

  1. 人々の行動変化によって店舗ビジネスには何が起こったのか
    1. 1. FMCG―ステイホーム需要を捉えた業種は今なお需要が高い。「レジ待ち問題」は業界の共通課題
    2. 2. 外食―各社、郊外型店舗にシフト。吉野家は「ソーシャルグッド」と「デジタルシフト」を意識しニューノーマル時代に備える
    3. 3. アパレル―業界はファーストリテイリング一強だが全体的に売上減。突破口はECか。
  2. ニューノーマル時代を店舗が勝ち抜くためにすべきこと
  3. 第二回のお知らせ

人々の行動変化によって店舗ビジネスには何が起こったのか

1. FMCG―ステイホーム需要を捉えた業種は今なお需要が高い。「レジ待ち問題」は業界の共通課題

では最初に、コロナ禍で各業界にどんな変化が起こったのか、それぞれご紹介ください。まず郡司さんから、FMCG(※) 業界の現状についてお願いします。

(※) FMCG:Fast Moving Consumer Goodsの略。消費者向けの低価格製品 (日用消費財)



はい、FMCGで一番需要が増えたのはスーパーマーケットでした。政府の大型イベント自粛要請がかかった2/24週に最も需要が跳ね上がった以後はゆるやかに下がり、6/22週には平時の落ち着きを取り戻しています。

コンビニエンスストアは少し厳しい状況で、 都市部への通勤が減ったなど様々な要因で需要が減りました。

ホームセンターはスーパーマーケットに似た需要曲線を描いていますが、「自宅でのリモートワーク環境を整える」などのユーザーニーズがなお高いので、まだ需要は落ちていません。同じ理由で家電量販店も似たような需要曲線を描いています。

ドラッグストアでは、緊急事態宣言が発令される前から既に流行の兆しがあったため、2/26週より前の1月からすでに需要が高かったです。当時マスク・アルコールを求めて行列ができていましたよね。

しかし2/26週を過ぎたら前年度割れを起こしています。理由は「外出しない」「口紅などの化粧品がマスクに付く」などの事情でドラッグストアのメイクアップ商品が売れなくなってきたためです。これはドラッグストアだけでなく、現在、化粧品業界が置かれている厳しい状況です。


コロナ禍を経て浮上したFMCG固有の課題はありますでしょうか。


店舗内でのコロナ対策の実行によって、店舗での購買に時間がかかるようになりました。

たとえば、ビニールシートとマスク越しに会話すると、そもそもお互いの声が聞こえにくいですよね。しかもキャッシュレス決裁も種類が増えているので、どの決済手段なのかが聞き取れず、更に時間がかかります。

さらには、ソーシャルディスタンシングを保つため、レジ列は物理的に長くなっていきました。 そして7月から始まったレジ袋有料化のため、袋詰めのプロではないお客さんがマイバッグに商品を詰める事になりました。ますます待ち時間が増えていくわけです。

このように、レジでの待機時間は様々な要因で雪だるま式に増えていて、これを解消していくのがFMCGの当面の課題と言えるのではないかと思います。


<コロナ禍における変化>


2. 外食―各社、郊外型店舗にシフト。吉野家は「ソーシャルグッド」と「デジタルシフト」を意識しニューノーマル時代に備える

 出典:朝日新聞デジタル


続いて田中さん、外食業界の現状についてご紹介ください。


「外に出る行為」そのものが禁じられたため、外食業界全体の売上状況は必然的に落ち込みました。中でも単価が高い「ファミリーレストラン」と、"ハレの行事への自粛"によって「パブ・居酒屋」は大幅減となっています。

しかし一方で、4~5月の主要な外食企業の売上高を見てみると、テイクアウトやドライブスルーなどの施策を強化したマクドナルド・ケンタッキー・モスバーガーは伸長しています。

駅前にいる人々を狙ったいわゆる「都心型」の店舗は外出自粛によって売上減となっていますが、郊外にいる人を狙った業態、例えばドライブスルーやモバイルオーダーを強化した企業が勝ち残ったといった感じですね。



そのような状況のなか、吉野家ではどのような取り組みを実施してきたのでしょうか。


緊急事態宣言が発令された翌日、子ども支援の取り組みとして380円の牛丼を278円に割引し、12歳以下のお子様は上限無制限でお持ち帰りできるようにしました。

このような「お持ち帰り」に関する取り組みをしたのが外食業界では吉野家が1~2番手だったようでかなり多くの取材が入り、「吉野家のテイクアウト」の認知が高まりました。3/26に全てのお客様を対象とした時も、かなりのPR効果がありましたね。

ここで実感した事は、昨今のコロナ危機において"ソーシャルグッド"、つまり社会的価値の高い事をすると、お客様は非常に好意的に受け止めてくださるということです。危機的状況下など有事の際、いち早くソーシャルグッドなことをするのは、キーになるかなと思ってます。

また、PR効果に加えてモバイルオーダーシステムが功を奏し、吉野家のテイクアウトは通常売上の30%程度ですが、コロナ危機においては70%まで伸びたんですよね。

外食業界はデジタル化が遅れていたりもしますが、UberEATSや出前館の伸びによって都市型の店舗の売上も伸びていきましたので、デジタルの需要は大いにあることが伺えます。

ですので、吉野家は今後テイクアウト専門店を開発するなど、ニューノーマルに向けてデジタルシフトを進める方向で考えています。

コロナ危機が過ぎれば今まで通りに戻ってくることもあるし、あえてコロナ前に戻さない事や仕組みを決める事も大事なのではないでしょうか。


3. アパレル―業界はファーストリテイリング一強だが全体的に売上減。突破口はECか。

最後にアパレル業界の現状について、村田さん、お願いします。


出典:経済産業省、矢野経済研究所


ここ10年くらいの国内アパレル市場は9兆2千億円程度の規模感で、横ばいあるいは緩やかに減少する形で推移しています。内訳をオンライン・オフラインで見ると、オンラインは1兆1000億円増、オフラインは1兆7000億円減でした。


出典:経済産業省、矢野経済研究所


直近の国内アパレル企業の現在の時価総額トップ10を見てみますと、 ファーストリテイリングが64,400億円あり、市場のおよそ7割がファーストリテイリングに一極集中しています。ほとんどの企業が競合している中、ユニクロ(ファーストリテイリング)の「ライフウェアを提供する」という唯一無二のコンセプトで独走しています。


出典:経済産業省、矢野経済研究所


アパレル業界でコロナ危機の影響は、どのような形で現れたのでしょうか。


マーケットのほとんど全てが赤字転落したという事ですね。

3~5月の売上高を世界3大手でみると、ファーストリテイリングは-39.4%で黒字から赤字に転落しています。

6月以降は、もともとECのシェアが多かった企業は先に減少した売上分をカバーできるようになってきたようですが、コロナの影響で製造が止まっていたり、そのために在庫が少ない状況もあるので、7~8月も厳しい状況が続くと思われます。

ニューノーマル時代を店舗が勝ち抜くためにすべきこと

ここからは事例など、具体的なお話を通じて、ニューノーマル時代を勝ち抜くために何をすべきかを考えていきたいと思います。まず最初に下山さん、ワコールではどのような取り組みをしているのか教えていただけますか?


はい、お客様の購買行動は実店舗からECに移ってきていますよね。

そこでワコールでは、一人ひとりのお客様と「より深く、広く、長く」つながることを実現するため、ビジネスモデル改革に着手しました。

その一環として、ECと店舗の相乗効果を狙い、測定・リコメンドを自動化する「3D smart&try」という次世代型ショップを2019年に初出店しています。

3D smart&try がどのようなシステムかというと、お客様自身が5秒で体型を測定し、自動で体型を分析。その結果を元にAIと対話し、要望を加味したリコメンドを行うというものです。



数多ある他のスキャニング技術と、smart&tryのサービスが異なるのは、正確にサイズを計測するというだけでなく、お客様の要望や嗜好を反映したリコメンドまで繋げているという点です。

さらに、精度という点においても、点間距離だけでなく、人間の身体が固定的ではないということに、着目し、容積算出を踏まえてサイズリコメンドをしているといのも特徴です。


なるほど。ちなみに、3D smart&tryのボディスキャン技術を伊勢丹様に提供し、洋服のマッチングサービス“マッチパレット”が7/15に開始しますよね。 (参考) こちらに関する気づきなどがあれば、教えていただけますか? 


僕たちワコールという企業だけでは、下着という商品に重きを置きすぎてここで収集した顧客の3Dデータを下着へ活用することくらいにしか想像が及ばなかったのですが、そうではなく下着のマッチングにとどまらない様々な事業展開が行えるんだという気づきはありましたね。今回の伊勢丹様との取り組みのように社内だけでなく「横のつながり」から新たなビジネスチャンスが生まれた事に、ニューノーマル時代らしさを感じました。


ワコールさんのこの事例のように、雇用・仕事・組織の壁を溶かすような企業が進出・台頭してくるのではないでしょうか。この時期に成功している企業に共通しているのは、横のつながりを作り出せる企業だと思います。


同じくそう思います。横のつながりを活かすにはスピーディな動きが求められるので、社内に根深く複雑なヒエラルキーがあり、意思決定フローがシンプルじゃない企業は、それが足かせになって成功から遠ざかっていくかと。ですので、今後は企業の価値構造がシンプルになっていくんじゃないかなと思います。


なるほど、ではみなさんの業界はそれぞれどのように変化していくと考えますか?


FMCGだとBOPIS(※) は本格導入が進んでいくと思います。米 ウォルマートはこのコロナ危機下においてデジタル売上が176%~200%以上伸長したそうで、その売上に貢献したのがBOPISだったそうです。ただし、商品をいかに効率的にピックアップするか・在庫管理システムやオペレーション構築を進めるかといった、効率化に向けた仕組みづくりが必要なので、日本でもそれが進めばBOPISは普及していくと考えられます。

(※) BOPIS:Buy Online Pickup in Storeの略。オンラインで購入して店頭で受け取るサービスまたはショッピング形式のこと


ちょっと極論ですが、外食だと、今後ロボットレストランVSフロントには人間が出て裏は機械化するような業態の2極化が進んでくと思います。ちなみに中国のアリババグループはロボットレストランを運営していて、5年前に比べると今は演出が進化し違和感がなくなっていました。その意味でロボットレストランは現実的かなと思っていますね。


アパレルでは、コロナ危機によって加速した「リアルマーケットの縮小」を前提にマーケティング施策を考えるようになっていくと思います。

ブランド認知の面では「店舗」は圧倒的なので、店舗を「売り場」ではなく「体験・メディア」の場として再設計する。ユニクロ一強の昨今の状況であれば特に、差別化の手段として、店舗がもたらすブランディング効果は強いフックになると思います。

これからは、店舗を販売数で評価するのではなく、ブランド認知と再来店(ロイヤルカスタマー化) の場として活用する事になると思います。


ワコールがたどり着いた一つの解が、「3D smart&try」であったり伊勢丹様への技術提供であったように、一方的に商品を届けるのではなく、お客様ひとりひとりに価値のあるものが何かを深堀りした先に解があると思っています。


これからの経営・マーケティングは、どうあるべきなんでしょうか?


そうですね、既に成功体験がある企業ほど揺り戻しをしがちなんですよね。ですので、成功体験のある大企業などは、あえて意識的に揺り戻しをしないようにするべきだと思います。


確かにおっしゃる通りですね。今ある評価体系そのものを否定するというか、業績以上に本質的なところを見直すべきタイミングなのでしょうね。

そもそも経営としてはそうあるべきだし、ニューノーマルの中心にあるものはマーケットなので、マーケットの中心たるお客様を見て、きちんとした変革を起こすべきだと。まさにピンチをチャンスにするいい機会になっていくのかなと思います。


皆様、本日は貴重なお話ありがとうございました。

第二回のお知らせ

今回レポートとしてお届けした本オンラインイベントの第二回目の開催が決定しました!

次回のテーマは、日用品領域の店舗ビジネスにおけるコロナ時代の生き残り方についてです。

無料でご参加いただけますので、ぜひお申し込みください!



●テーマ:ホームセンター、ドラッグストア、スーパーマーケット領域のwith コロナ時代の進化と生き残り方

●日時:8月28日(金) 16:00~17:50 @オンライン

●お申し込み:こちら

漣香代子
漣香代子

トランスコスモスのデジタルエージェンシー事業の広報担当。広報業務のかたわら、毎日業界ニュースを取りまとめて社内へ情報発信している。 プロレスが好きすぎて蛍光灯を見るとデスマッチの武器にしか見えずギラギラしてしまうのが長年の悩み。

trans+(トランスプラス)に掲載しているコンテンツや、サイト内で紹介したサービスに関することなど、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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