AI時代に取り残されるな!製造業のための組込み開発効率化セミナーをレポート

AIやIoT技術が進歩するとともに複雑化する製造業では、品質向上やセキュリティ強化などの課題が山積しています。

製造業が、AI時代を生き残るために、そして勢いを増す海外メーカーとの競争に勝ち残るためには、いま何をするべきなのか――。

トランスコスモスは、その課題解決のヒントとなるセミナーを開催しました。

「先端技術適用のための組込み開発効率化セミナー~AI・IoT検証業務を効率化するDigital BPOサービス~」(2月19日)の内容をレポートします。


目次[非表示]

  1. 講演1 「AI時代に適したBPOサービスとは」
    1. 製造業が抱える課題と迫りくるAI化の波
    2. モノづくりプロセスにAIを適用するための準備
    3. 業務効率化に向けてBPO・EPOを活用
  2. 講演2 「AI・IoTを取巻く輸出管理の状況」
    1. AI・IoTの輸出管理におけるモノづくり企業の実務的視点
  3. 講演3 「AI・IoT検証業務効率化事例のご紹介」
    1. トランスコスモスの組込み開発と該非判定
    2. トランスコスモスのAI導入の対応状況
    3. 検証業務でのAI活用事例

講演1 「AI時代に適したBPOサービスとは」

トランスコスモス株式会社 BPOサービス統括 事業推進本部 EPOコーディネート統括部 統括部長 安東秀樹

第一部は「AI時代に適したBPOサービスとは」と題して、トランスコスモスの安東秀樹が登壇し、効率化に向けてAI適用を迫られる製造業の課題と課題解決のための準備について解説しました。


製造業が抱える課題と迫りくるAI化の波

創造領域に専念すべき製造業の設計者が、それ以外の業務に忙殺される理由は何か。この問いに対する安東の答えは、「要求事項の増加」と、「開発期間の短縮」でした。

「要求事項の増加」とは、製品の多機能化・高性能化や規制強化に伴う検証事項の増加を指し、「開発期間の短縮」とは、海外メーカーとの競争激化や市場投入早期化のため、手戻りが許されず、基準化・ルール化された要件に設計者が追い立てられる状態を指します。

設計者が忙殺され、本来注力するべき品質・生産性の向上に割ける時間を失うことは、最終的には企業競争力の低下を招く事態となります。これは決して珍しい話ではなく、モノづくりに携わる多くの企業が抱える課題でしょう。

さらに、世界中のモノづくり領域で上記のような課題を解決するために、AI適用の波が到来していますが、日本のAI事情は諸外国と比べて遅れを取っていると言わざるを得ません。日本の製造業におけるAI導入率は4%に満たないのが現状で、このままでは日本の産業は先進諸国から取り残される恐れがあります。製造業はいま、新たなモノづくりの在り方を考えるタイミングに来ていると安東は語りました。

日本の製造業の国際競争力を高めるためには、設計者が創造領域に専念できるよう効率化に向け開発工程にAIの適用を検討する必要がありそうです。


モノづくりプロセスにAIを適用するための準備

製造業のAI活用領域は大きくわけて2つあります。ひとつ目は、エンドユーザーへ届ける製品やサービスへのAI搭載(例:AIスピーカーや自動運転など)、ふたつ目はモノづくりのプロセスにAIを適用することです。センサー情報を活用した故障の予兆検知や先端素材開発など、活用分野に広がりを見せています。

安東は、モノづくりプロセスへAIを適用するための「3つの準備」を紹介しました。


1、情報のデジタル化

現在のAIは、過去に蓄積したデータに基づいて判断アルゴリズムを自動生成する機械学習が主流です。精度の高い判断のためには、あらかじめデータクレンジングやデータ整形を実施しておきます。また、使用用途によって、今後のデータ蓄積方法を検討する必要があります。


2、プロセス標準化

AIとプロセス標準化は実は切っても切れない関係です。AIやRPAを用いる業務はもちろん、人間がやるべき業務を標準化して整備しておきます。特にAIに判断させる前後のプロセスは極力標準化しておかなくてはなりません。


3、AIを適用しない領域の明確化

技術的にAI化できないものはもちろん、AI化できるが「してはいけない」領域を定めます。代表的なものは技術認証があります。なぜAI適用してはいけないのか、その理由は、ブラックボックス化された判断ロジックで予期せぬことが発生した際、ロジック解明に莫大な工数がかかるからです。


業務効率化に向けてBPO・EPOを活用

製造業の課題は冒頭で述べた「要求事項の多様化への対応」、「生産性の向上」の二つです。その解決の糸口となるのがAIの適用です。この製造業の課題を理解した上で最適な解決策として安東が提案するのがBPO、そしてEPOです。

BPOとは、ビジネスプロセスアウトソーシングの略。見える化、標準化、共通化、ECRS、デジタル化、AI化などの「仕組みづくり」を担うアウトソーシングです。EPOとは、エンジニアリングプロセスアウトソーシングの略で、「仕組みづくり」のBPO領域に加え、「専門技術」による支援を提供するトランスコスモスのサービスです。

オペレーション領域はもとより、専門領域に対応したEPOを取り入れることによって、製造業は本来注力したい創造領域に専念することができます。安東は、このような製造業のアウトソーシングの時流を説明し講演を締めくくりました。

講演2 「AI・IoTを取巻く輸出管理の状況」

行政書士ファインテック技術法務事務所 代表 特定行政書士 印東 宏紀氏


第二部では、行政書士ファインテック技術法務事務所の印東氏が登壇。AI・IoTに特化した事例を用いながら、製品を輸出する際に必要な輸出管理について注意を促しました。モノづくり企業がその技術を悪用されないために、どのような視点を持つべきかを啓蒙します。

※輸出管理(安全保障貿易管理)について

国際社会の平和と安全を維持するため、軍事転用の可能性がある民間製品や技術の輸出規制をかけること。日本における安全保障貿易管理は、外国為替及び外国貿易法(外為法)によって定められている。

「製品や技術の海外移転の結果として、兵器類の開発や拡散、過度な蓄積とならないように、我が国を始めとした国際各国の協力により、輸出許可の対象となる場合がある。無許可による貨物や技術の流出については、企業コンプライアンス違反はもとより、国家の信用低下に繋がることがある。」


AI・IoTの輸出管理におけるモノづくり企業の実務的視点

実は、軍事目的で開発されたIoT、AI技術が民間ビジネスに波及している例は存外多いと印東氏は説明します。GPSや高度言語処理などが代表例で、軍事用途として開発された技術がいまの我々の生活に欠かせないものとなっていることがわかります。

しかし、企業が気を付けなくてはならないのが逆のパターン、つまり製造業を含む民間企業の技術が軍事転用されることです。

例えば、海洋観測装置のIoT化が可能になれば、海底資源開発や港湾土木作業への活用が期待される一方、潜水艦などの軍事用途へ転用可能だと考えられます。このような民間技術の軍事転用に巻き込まれるのは、国の研究機関や大企業だけではなく中小企業や地方大学でも充分ありえる話だと言います。

さらに技術革新が進むことにより、民生技術と軍事用技術の境界があいまいになりつつあると印東氏は語ります。軍事技術から民生技術への「スピンオフ」の例としては、戦車に用いられる高精度追尾技術が監視カメラ等の遠隔監視システムに転用されます。民生技術から軍事技術への「スピンオン」の例としては、GPSに依存しない(GPSが機能しないエリアでも利用できる)民間の位置測定技術が軍事訓練に利用される可能性があります。

そのうえで印東氏は、「AIだから、IoTだから規制する」という考えは短絡的と強調しました。AIやIoTは日進月歩であるため、従来の判定対象、判定フローでは対応できずに管理対象になったとしても、AIやIoT自体が危険だということではありません。特にモノづくりに携わる企業は、AIやIoTを取り巻く輸出管理の改正動向に注意を払うことを推奨します。

講演3 「AI・IoT検証業務効率化事例のご紹介」

トランスコスモス株式会社 BPOサービス統括 エンジニアリングソリューションサービス本部 グローバル事業部 ベトナム事業課 大塚 健一


第三部では、トランスコスモスの組込みサービスを担うトランスコスモスベトナムの大塚が、AI・IoTの検証事例とオフショア活用による業務効率化を紹介しました。


トランスコスモスの組込み開発と該非判定

トランスコスモスが提供する組込みサービスは、仕様策定から保守・改良まで幅広く対応しています。その一部をトランスコスモスベトナムが担っています。トランスコスモスベトナムは、開発要員の9割がIT系大学卒、さらにAI開発専門チームを置いており、お客様企業のAI導入を支援する充分な環境が整っていることが特徴です。


トランスコスモスのAI導入の対応状況

トランスコスモスベトナムでは、エンジニアリングソリューションサービス提供領域のうち、研究・調査フェーズにおいては学習データ作成・アルゴリズム開発・精度向上などのPoCの支援を実施、開発フェーズにおいては実装・検証でAIの組み込みやチューニング対応をしています。

※PoC(Proof of Concept)とは

概念実証/実証実験のこと。概念や理論が実現可能であるか示す試作のことを指す。要件決定後にPoCを実施して効果測定を行う。AIやIoTなど新しい技術開発に取り組む際にはPoCが欠かせない。

実は、PoC実施にもコツがあると大塚は説明します。効果的なPoCをおこなうための3つのポイントは、「AIに固執しないこと」、「スモールスタートであること」、「最終確認は実運用環境を想定すること」です。大塚は、これらを実施した上でのAI・IoT導入成功事例を4つ紹介しました。本レポートではそのうちのひとつを紹介します。


検証業務でのAI活用事例

【お客様企業の課題】


カメラで撮影された画像から対象物を人が目視確認する「画像判別」の検証業務を、AIによる自動化で効率化し、ミスを軽減したい。


【対策】


該当の検証業務におけるAI活用可能領域を図るため、プロセスを可視化。またAI学習モデルを構築する前にPoCを実施し比較検討。もっともふさわしいモデルを選定した上で、撮影画像をAI判定する学習モデルの構築を開始。AIが自動判別したものを人間がチェックするという作業を繰り返すことで徐々に精度を高めていきました。


【成果】


確認検証業務工数を約26%削減することができました。




本セミナーは、製造業の課題として突きつけられるAI活用に関する考え方や、導入準備のポイント、導入事例などを紹介するものでした。

製造開発プロセスにおけるAI適用が成功すれば、生産性や製品価値の向上へとつながります。それを理解しAI・IoTを導入すべきか検討しながら足踏みしてしまっている企業が多い今だからこそ、一歩踏み出すことが有効な手段になりうるのです。​​​​​​​

トランスコスモスでは、導入検討の初期段階からパートナーとしてコンサルティングをおこなっています。製造業の企業様が本来実施するべき創造領域の業務に注力するためにも、AI・IoT導入をご検討の場合は、トランスコスモスへご相談ください。


▼BPOフォーラム2018で紹介されたDX成功事例はこちらから

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trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

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