【AIと共に成長するビジネス】活用事例から学ぶ 生成AIと人間の協働がもたらす変革と新たな可能性
生成AIは “人間とマシンとの関係に重大な変化をもたらすもの” として注目されており、生成AIの登場によって、マシンは『人間の代わりに何かをするもの』から『人間と共に何かをするもの』に変わりつつあります。
これはガートナージャパン株式会社が主催するイベント『Gartner IT Symposium/Xpo 2023』にて語られた内容で、“2030年までに人間の80%はスマートロボットと日常的に関わるようになる” との見解を示すと同時に、企業は今後1~2年の間に「AIの活用機会の特定」と「AI-Readyになるためのシナリオ策定」が最優先課題になると述べています。
GartnerのITエグゼクティブに対する調査では、2023年4月時点で生成AIの導入状況は、70%が検討段階、実証実験段階が15%、実装段階の割合はわずか4%となっています。2024年11月現在では、さらに実証実験および実装している企業の割合は高まっていると考えられ、AI開発プラットフォーム『Vertex AI(Google)』や、自然言語処理技術を用いた検索エンジン型のチャットボット『Copilot(Microsoft)』など、相次いで生成AIプラットフォームが提供されたことで、いよいよ生成AIの導入フェーズは検討段階から実装段階へ移ってきたと言えます。
生成AIを安全に導入するためには、AI活用を前提としたガイドラインや、セキュリティ対策も必要です。Gartnerの調査では、現在AI活用に対して将来的なビジョンを持ち、計画的に戦略を策定している企業は、日本ではわずか7%しか存在しないことも分かっています。
こうしたなか、先進的な企業は早期に生成AIを活用し、顧客へのサービス提供、社内サポート体制の構築、業務効率化などを進めています。
<参考>Gartner、AIの活用機会の特定とAI-Readyになるためのシナリオ策定が、今後1~2年のCIOの最優先課題であるとの見解を発表
目次[非表示]
企業の生成AI活用事例
企業の生成AIの活用シーンについて、例えば、大手ECプラットフォーマーのAmazonでは商品説明や広告の自動生成、商品レビューの要約、バーチャルアシスタント『Rufus』を提供するなどしており、Shopifyではパーソナル・アシスタント『Sidekick』を始めとしたいくつかのサービス・アプリケーションを提供しています。
Amazon:出店者向け業務効率化および顧客体験向上
<出店者向け>
商品説明文を自動生成するための生成AIを提供し、出店者が商品内容をプロンプトに入力することで、AIが魅力的な商品説明、タイトル、商品詳細を生成します。出店者は生成された説明文等をそのまま使用するか、編集してから公開するかを選択することができます。
また、Amazon Adsに加入している出店者は、Amazon広告コンソールで商品画像を選択し、商品に適した背景を生成することができます。生成AIは、商品の詳細に基づいてライフスタイルやブランドに関連する複数の画像を生成し、オプションとしてプロンプトで画像を調整することも可能です。
<顧客向け>
Amazon内に投稿されたレビューを要約し、商品の特徴などのキーワードを抽出。それをレビューの上位に表示させることで、購入を検討している顧客が詳細かつスピーディーに商品についての情報を得ることができます。
また、バーチャルアシスタントの『Rufus』はAmazonのECサイトに加え、Web上のあらゆる情報を学習し、顧客の質問に対して回答します。目的や利用シーンなどを理解し、コンテキストに基づいて商品をレコメンドします。まずは、βテストとしてアメリカ国内の一部利用者に提供し、順次全国展開を進める計画です。
<参考>
生成 AI – ユースケースとリソース Amazon
【超速報】Shopify Editions Summer ’23で公開された主要トピックを解説
Shopify:プラットフォームを活用する事業者向けにECサイト運営を支援
<出店者向け>
テキストや画像の生成を支援する『Shopify Magic』や、対話形式で業務実行をサポートする『Sidekick』など、生成AIを活用した支援ツールを提供しています。
Shopify MagicではAI画像編集や商品説明の自動生成など、 顧客接点となるWebサイト・メール・チャットで活用できる画像・テキストのコンテンツ生成が可能となり、Sidekickでは顧客分析、テーマ編集、商品の割引設定、ブログの自動投稿などを実現することができます。
<顧客向け>
曖昧検索に対応した検索ツール『Shopify Search&Discovery』を提供し、どのようなキーワードに対しても必ず関連商品を表示することでコンバージョンの改善や、顧客の行動データを収集・分析することでインサイトに基づいた商品のレコメンドなどに繋げています。
<参考> Shopify MagicとSidekick:コマース特化型AI Shopify Search & Discovery
この他のブランドや小売についても業務効率化や顧客体験向上による差別化に注力しており、商品の利用意図を理解したセマンティック検索や、リアルタイムにパーソナライズ化されたレコメンドを行うバーチャルアシスタントなどを提供しています。
L’Oreal:これまで蓄積してきた肌専門家やビューティーアドバイザーのノウハウを活用
世界最大の化粧品メーカーL’Oreal(ロレアル)では、24時間利用できるビューティーアドバイザー『BeautyGenius』を提供することで、他人には相談しにくいセンシティブな内容や日々の美容に関する疑問を解決することで顧客体験向上を実現しました。
生成AIには10種類以上のLLM(大規模言語モデル)、6,000以上の画像、15万人以上の肌専門家がアノテーションした画像を学習させており、画像認識技術やARなどの最新テクノロジーをかけ合わせることで、顧客のことを理解した上で商品をレコメンドしてくれます。
また、アドバイスをお願いする際には特定商品に関する質問に留まらず、利用シーンや目的からも質問でき、TPOにあったメイクの仕方を相談するなど、より曖昧な内容も質問することができます。
<参考>L’Oréal Paris Beauty Genius
生成AIの主な活用シーン、活用法、目的と効果について
分類 |
生成AIの活用法 |
目的・効果 |
コンテンツ制作 |
・商品画像の自動生成
・商品説明文の自動生成
・広告文の自動生成
・着用イメージの生成
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・制作時間の短縮
・顧客の購買意欲向上
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顧客サポート |
・チャットボットによる顧客対応
・AIアシスタント
・個別商品のレコメンデーション(セマンティック・サーチ) |
・顧客対応時間の削減
・顧客満足度向上
・顧客の購買単価向上
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業務サポート |
・AIアシスタント
・パーソナライズされた広告配信
・顧客の購買データ分析
・プロモーション管理、在庫管理
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・顧客の購買率向上
・顧客ロイヤリティ向上
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その他 |
・商品レビューの自動生成
・サイトデザインの自動生成
・VOC分析
・詐欺検知
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・レビュー掲載時間の短縮
・顧客ニーズの把握
・業務効率化
・セキュリティ向上
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日本でも大手企業が先陣を切り、生成AIを活用したサービスやサポートを提供しています。
ベネッセホールディングス:「自由研究お助けAI」で “考える力” を育成
ベネッセホールディングスでは、『Benesse Chat』という社内ChatGPT環境を導入・活用しています。主な用途は、議事録の要約、アイデアのブレスト、プログラムコードのサンプル生成などで、実際にChatGPTを使って理解を深め、次のステップに進むことを目的としています。
開発者・企画者が安心・安全な環境で、AIチャットサービスを検証できる環境を整備し、入力した情報の2次利用をしない、クローズドな環境で運用し外部に情報が漏洩しない仕様、利用履歴のモニタリングなど、セキュリティ面も配慮されています。
また、2023年7月には小学生の親子向け生成AIサービス『自由研究おたすけAI』をリリース。こちらもChatGPTのテクノロジーを活用し、ラボリーというキャラクターが夏休みの課題である自由研究のアイデアやテーマを見つけるためのサポートをしてくれます。
質問されたことに対して答えを教えるのでなく、実現したいことを具体化するためのアイデアなどを回答することで考える力を養うことを目的とし、夏休み期間の7/25から9/11まで提供されました。システムの不具合も報告されず、 8割を超える利用者から高評価を得たとのことです。
今後は自由研究だけでなく、例えば夏休みの課題をこなすためのスケジュール管理など、ユーザーである子どもたちが求めているものに応えるプロダクトを提供していくとしています。
<参考>
注目の生成AIを自社プロダクトに導入 子どもの期待に技術で応え続ける | CASE STUDY | ベネッセのDX戦略 | ベネッセグループ
第15回 デジタル時代の人材政策に関する検討会(METI/経済産業省)※資料4 参照
【その他、国内企業における生成AIを活用した取り組み】
伊藤園
AIタレントを起用した「お~いお茶 カテキン緑茶」のTV-CM第二弾!新作TV-CM「食事の脂肪をスルー」篇を、4月4日(木)より放映開始
業界初!『商品デザイン用画像生成AI』を活用したデザインで伊藤園「お~いお茶 カテキン緑茶」リニューアル発売
七十七銀行
生成AIを活用した実証実験の開始について
セブン‐イレブン・ジャパン
セブンイレブンのAI革新で商品開発加速
セブンイレブン、商品企画の期間10分の1に 生成AI活用
日本コカ・コーラ
「話すコーラ」を生成AIで開発 背景にコカ・コーラのマーケ戦略転換
生成AIを活用したブランド戦略 日本コカ・コーラ、「ジョージア」の若者ファン獲得図る
誰でも「クリスマスカード」作れる画像生成AIツール、日本コカ・コーラが公開 自社の広告制作にも使用
人間と生成AIの協力:創造性を活かした仕事の価値と企業の利益
生成AIが簡単なタスクを代替してくれることで、人間は新たな業務やより高度なスキルを求められる業務に専念できるようになり、そのスキルを学習する時間を増やすことも可能になります。
ただし、注意すべきなのは “生成AIとの協力には、適切な理解と活用が求められる” ということです。
例えば、カスタマーサポート領域では一部の問い合わせ対応を生成AIに任せることで、専門的な知識を必要とする問い合わせへの対応や、新たなサービスの開発などに人間の労働力を投じることが可能になります。
一方、なんでもかんでも生成AIに任せるのは、逆効果になる可能性もあります。生成AIにはまだまだ十分な感情認識の能力が備わっておらず、人間のように顧客の微妙な感情変化を察知して対応することができません。そのため、無闇に生成AIを顧客対応に利用すると、顧客の不信や不満を引き起こし、結果的に顧客離れを引き起こす可能性があります。これを防ぐためには、人間が直接対応しているのか、生成AIによる対応なのかを明示し、適切な期待値を設定することが重要です。
また、生成AIの課題であるハルシネーションの解決、セキュリティの担保、透明性・信頼性の確保などへの対応も必要不可欠です。
これらを解消するには、AI TRiSM(AI Trust、Risk、Security Management)が重要となり、説明可能性の実現、データ監視、ModelOps、アプリケーションセキュリティ対策、プライバシー対策など、生成AIを安全に利用するための準備が必要です。現時点ではこれに対応できている企業は少なく、今後、生成AIの実装が拡大する中で対応が求められていきます。
トランスコスモスが独自開発・提供する生成AIを活用したチャットボット
トランスコスモスも生成AIを活用したサービス・サポートを提供しており、お客様企業のビジネス成長を強力にバックアップしています。
アジア最大規模となるWeb/アプリ開発事業とコンタクトセンター事業を展開するなかで得られた応対ノウハウと、顧客接点のCX最適化を実現してきた知見を結集し、生成AIを活用したチャットボット『trans-AI Chat』を独自開発・サービス提供しています。
生成AIを搭載したハイブリッドチャット対応では、エンドユーザーからのお問い合わせに対し自然な文章で回答し、より専門的な知識・案内が必要になる内容については有人チャット対応とのシームレスな連携を行うことにより、高品質な顧客体験を提供します。
また、コンタクトセンターのアウトソーシング業務強化にも積極的に活用しており、 コミュニケーターから管理者へのエスカレーション対応時間を38%までに短縮や、コミュニケーターの問い合わせ応対後の応対履歴作成時間を17%までに短縮することに成功しています。
現在、日本国内でWeb/アプリ、ハイブリッドチャット、コールセンターの顧客接点チャネルを統合的にトランスコスモスへアウトソースいただいている計85社(※)のお客様企業から『trans-AI Chat』の導入を順次拡大しており、2025年度までにグローバルで300社への導入を目指しています。
※導入社数は2024年4月30日時点のものです。
<参考>トランスコスモス、企業と顧客接点のCX最適化を実現するDXプラットフォームに生成AIチャットBot「T-GPT」を追加 ※「T-GPT」は、「trans-AI Chat」に名称を変更しています。
【セミナー情報】
トランスコスモスフォーラム2024
「CX・BXの成功に必要なものとは~最新テクノロジーとリスクコントロール~」
テクノロジーがビジネスを変える。わたしたちは今、大きな岐路に立っています。
CX向上やBXの実現に不可欠である一方で、技術の進化は、新たな課題を生み出しました。
さまざまな制約やリスクをコントロールし、テクノロジーを活用していくためには、いったい何が求められているのか。
本フォーラムでは、ビジネスを成功へと導く企業様に最新の取り組み事例をご紹介いただき、トランスコスモスがその取り組みを支援するサービスをご案内。
人と技術を融合し、一歩先の未来へ。今、ビジネスに何が必要なのかを紐解きます。
11/27 大阪、11/28 東京で開催されるCXパートでは、trans-DXを中心とした最新のCXソリューションのご紹介をはじめ、記事内でも触れたトランスコスモスが独自開発・提供する生成AIチャットBot「trans-AI Chat」などについても、事例や導入動画を交えて具体例をご紹介します。
【詳細】
トランスコスモスフォーラム2024
「CX・BXの成功に必要なものとは~最新テクノロジーとリスクコントロール~」
https://www.trans-cosmos.co.jp/forum2024/