時代はインバウンドよりTmallの越境EC!日本企業が続々出店する中国・アジアEC市場の実態
経済産業省が発表した「通商白書2018概要」によると、世界の越境EC市場は2014年の2,360億ドルから2020年には9,940億ドルに増加が見込まれ、越境EC利用者も同期間に約3億人から9億人超となる見通しだと発表しています。
特に電子商取引額が世界第1位となった中国では、現在5億人以上がオンラインショッピング、オンライン決済を利用。さらに2020年までにインターネット人口はさらに伸びる予想がされていることから、越境ECを含むオンラインショッピング利用者もさらに増加することが予測できます。
中国をはじめ、勢いづくアジア諸国のEC市場の実態をまとめました。
本記事のまとめ ■ポイント1 ■ポイント2 ■ポイント3 |
目次[非表示]
アジア10都市のEC利用状況調査
トランスコスモス調査部による「アジア10都市オンラインショッピング利用動向調査2018」データをもとに、アジア各国におけるオンラインショッピング状況を見ていきましょう。
▼オンラインショッピングする際に利用しているサイトおよびアプリ
都市名/国名 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
東京/日本 | Amazon | 楽天市場 | Yahoo!ショッピング |
上海/中国 | 淘宝(Taobao) | 天猫(Tmall) | 微信 |
台北/台湾 | PChome | Facebook | Yahoo!奇摩 |
クアラルンプール/マレーシア | Lazadaマレーシア | Facebook | 11streetマレーシア |
ハノイ/ベトナム | Facebook | Lazadaベトナム | shopeeベトナム |
マニラ/フィリピン | Lazadaフィリピン | Facebook | shopeeフィリピン |
バンコク/タイ | Lazadaタイ | Facebook | LINE |
シンガポール/シンガポール | Qoo10シンガポール | Facebook | Carousell |
ジャカルタ/インドネシア | tokopedia | Lazadaインドネシア | Facebook |
ムンバイ/インド | Amazon | Flipkart | Facebook |
(表1:オンラインショッピングする際に利用しているサイトおよびアプリ「アジア10都市オンラインショッピング利用動向調査2018」トランスコスモス調査部)
アジアEC参入のポイント「主要モールへの出店」
表1「オンラインショッピングする際に利用しているサイトおよびアプリ」では、10都市すべてで現地の主要オンラインショッピングモールが上位にランクイン。東京と比較すると国外のショッピングサイト利用状況は高いものの、やはり国内オンラインショッピングモールの利用が一般的なようです。
国外ショッピングサイトを利用する理由としては、「国内では手に入らないから」「海外限定ブランド・商品が欲しいから」と回答(図1参照)。企業のブランド力や商品の魅力が高ければ、アジアの消費者は国外オンラインショッピングサイトの利用にも積極的です。
反対に、国外ショッピングサイトを利用しないと回答した各都市消費者は、「関税や配送料が高い」「返品・交換・保証などのアフターサービスが不安」「配送に時間がかかる」「自国通貨に対応していない」「サイトが信用できるかわからない」という理由を挙げました(図2参照)。
全体の傾向としては、ブランド力や商品力が高い場合は海外サイトからも積極購入する意思があるが、そこまでの魅力を感じない場合は国内サイトを利用するほうが利便性が高く信頼できると考えているようです。
日本企業のアジア進出への勝機は、高品質で安全な製品を国内のオンラインショッピングモールで購入したいという消費者ニーズにありそうです。
▼国外オンラインショッピングサイトを利用する理由
(図1:国外オンラインショッピングサイトを利用する理由「アジア10都市オンラインショッピング利用動向調査2018」トランスコスモス調査部)
▼国外オンラインショッピングサイトを利用しない理由
(図2:国外オンラインショッピングサイトを利用しない理由「アジア10都市オンラインショッピング利用動向調査2018」トランスコスモス調査部)
アジアEC参入のポイント「Facebook活用」
また、表1「オンラインショッピングする際に利用しているサイトおよびアプリ」からわかるのは、東京と上海以外の9都市で共通しているFacebookショップ利用率の高さ。東南アジアとインドではFacebookでコミュニケーションを取ったり情報収集をしたりしながら、同じプラットフォーム上で商品を直接購入するのが一般的です。
また、すべての都市で「インフルエンサーの意見が買い物に影響する」「購入商品をソーシャルメディアに投稿する」「メッセンジャーやチャットで店員のアドバイスをもらいたい」「メッセンジャーやチャットで直接価格交渉したい」という意向があり、東京以外の9都市が東京を大きく上回る結果となりました(図3参照)。
興味関心、比較検討、購入申込、共有というすべてのフェーズでソーシャルを積極利用していることにも注目です。
▼オンラインショッピングに関する意識と行動
(図3:オンラインショッピングに関する意識と行動「アジア10都市オンラインショッピング利用動向調査2018」トランスコスモス調査部)
以上のことから、アジア・東南アジアへの越境ECの勝機は、現地の主要オンラインショッピングモールへの参入と、Facebookでのプロモーションやメッセンジャーを使った消費者サポートにあることがわかります。※中国に関しては、中国ローカルSNSである微信(WeChat)や微博(Weibo)を利用してください。
世界の4割を占める巨人・中国のEC市場
規模も成長率も世界一を誇る中国EC。「通商白書2018概要」によると、中国EC市場は世界全体の4割を占めるほどの巨大マーケットです。成長率は2位のアメリカと比較しても高く、将来的にも世界のEC市場をけん引する存在であることは間違いありません(図4参照)。
▼各国のEC化率/成長率/BtoC EC市場規模(単位1億ドル)
(図4:各国のEC化率/成長率/BtoC EC市場規模(単位1億ドル)「通商白書2018概要」経済産業省)
中国EC市場を支える王者アリババの「天猫」と「天猫国際」
中国の巨大市場を支える主要ECサイトは、アリババグループの「淘宝(Taobao)」と「天猫(Tmall)」の2つです。2017年の独身の日の天猫(Tmall)・淘宝(Taobao)の取扱高は、過去最高の1682億元(約2兆8594億円)となりました。
アリババグループは2003年にCtoCショッピングサイト「淘宝網」をオープンし、2008年にBtoCショッピングサイト「天猫」の前身である「淘宝商城」を展開。淘宝網はCtoCであるが故に模造品・詐欺などのトラブルが絶えず問題となっていたことから、イメージ一新を図って天猫をオープンしました。
天猫の特徴は、出店者側に課せられた厳格な審査。中国国内に法人を有することが条件となっており、信用度が低い個人の出店を防ぐことで消費者の信頼を勝ち取りました。
現在、天猫には世界を代表する大手メーカーや有名ブランドが出店しています。2016年の独身の日、ユニクロがセール開始わずか2分53秒で売上1億元(16億円)達成したというニュースはあまりにも有名ですよね。
中国現地法人を持たない企業には、アリババグループが国外EC事業者向けにオープンした「天猫国際(TmallGlobal)」に出店するという道があり、中国でもっともポピュラーな越境ECプラットフォームとなりました(表2参照)。
天猫国際には、資生堂、カネボウ、花王、ライオン、カルビーなどのメーカーや、マツモトキヨシ、イオンリテールなどの小売を中心に有名な日本企業が名を連ねています。
アリババグループは、EC事業のほかにもロジスティックサービスや決済サービス(Alipay)、地図サービス(amap)、動画共有サービス(Youku)、そして中国最大規模のSNSの微博(Weibo)を展開。そこから得たビッグデータを解析し、マーケティング施策の強化を始めています。今後は、天猫や天猫国際をマーケティングプラットフォームとして活用する企業が増えていくでしょう。
天猫(Tmall) https://www.tmall.com/
天猫国際(TmallGlobal) https://www.tmall.hk/
▼天猫(Tmall)と天猫国際(TmallGlobal)の出店条件を比較
サイト | 天猫(Tmall) | 天猫国際(TmallGlobal) |
---|---|---|
出店先 | Tmall中国 | Tmall香港 |
必要法人 | 中国法人 | 日本法人でも可 |
銀行口座 | 中国口座 | 日本口座でも可 |
入金方法 | Alipayによる元建て支払い | Alipayによる円建て支払い |
(表2:天猫と天猫国際の出店条件を比較)
天猫だけじゃない!No.2「京東商城」のビジネスモデル
天猫に続き第2位のシェアを占めるECサイトが「京東商城(JD.com)」。その越境EC「京東全球購 (JD Worldwide) 」にも日本企業の出店が相次いでいます。
天猫のビジネスモデルが楽天のような出店型なら、京東商城のビジネスモデルはAmazonのような直販型といえば、両者の違いがわかりやすいかもしれません。また、天猫・天猫国際はコスメなどの美容関連商品の人気が高い傾向にありますが、京東商城・京東全球購はデジタル家電に強いという特徴があります。
運営する京東集団は日本企業の参入に積極的で、2015年には日本製品だけを専門で扱う「日本館」をオープンしました。2018年には、日本企業からの商品調達や出店サポートを行う購買センターを開設し、中国国内で評判の良い日本製品の取り扱い拡大を狙います。
【中国越境EC】 現地モールへ出店?自社サイトをグローバル対応?
日本企業が中国ECへ越境進出する代表的なパターンを3つ紹介します。
(1)自社グローバルECサイトを立ち上げる
自由度が高く、成功すればリターンが大きい方法。日本国内向けのサイトを多言語対応することは簡単だが、日本と中国では商品へのニーズや好まれるUI/UX、決済方法や配送方法が異なるため、売上を確保するためには市場調査からECサイト構築・運用、プロモーション、フルフィルメントすべての構築を視野に入れることが望ましい。
(2)現地のオンラインショッピングモールに出店する
天猫国際(TmallGlobal)や京東全球購 (JD Worldwide) であれば、現地法人を設立しなくても出店可能。現地ルールに即した運営で決済や出荷システムも利用できる。世界中のEC事業者が参入しているため、現地の消費者に好まれるSNSプロモーションやサポートでいかに現地に溶け込めるかが勝敗のカギとなる。
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(3)国内モールの海外販売機能を利用する
もっとも手軽なのが国内モールの海外販売。楽天市場やQoo10といった日本のオンラインショッピングモールの海外販売機能を利用申請し、海外版サイトに出品する方法。楽天市場は「Rakuten Global Market」、Qoo10は「QExpress」がこれにあたる。配送料金が高額になること以外は、国内ECサイトを運営しているのとほぼ同じ。
トランスコスモスは海外進出をワンストップで支援
海外の現地市場を把握し、現地でのニーズに合わせたブランディングやマーケティングをおこなっているトランスコスモスは、海外進出を目指す企業のために、海外販売におけるECサイト構築・運用、フルフィルメント(入荷・ピッキング・梱包・出荷)、カスタマーケア、Webプロモーション、分析などのオペレーションをワンストップで用意しています。
また、グローバルEC市場での積極的な提携・投資を行い、世界各国の大手ECモール、大手ECサイトなどで売り場を確保。アジア・東南アジアでの対応国は、中国・韓国・台湾・インドネシア・タイ・フィリピン・ベトナム・シンガポール・マレーシア・インドの10カ国へと広げています。
自社グローバルECの構築・運用、日本からの越境EC・海外販売、そしてトランスコスモスのECチャネルを通じた商品販売まで、企業のニーズにあわせたグローバル展開を支援します。