【EC業界ニュース スペシャル】世界8都市オンラインショッピング利用動向調査2023
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インフレがオンラインショッピング行動に影響を与えているみたいだね!安価な商品を求めて海外EC利用も増えているよ |
※本記事は3月20日にトランスコスモス 調査部公式ブログに掲載された記事を転載しています。 |
2018年に開始したアジア10都市対象調査の設問を継承し、2022年からは対象都市から5都市を残したうえで、ソウル(韓国)、ニューヨーク(米国)、ロンドン(英国)を加えた世界8都市のショッピング利用者を対象としています。テーマとして「ライブコマース」(Live Streaming E-commerce)や「越境EC」(Cross Border E-Commerce)の利用実態のほか、今回は世界的なインフレが与えた購買行動の変化についてもとりあげました。
1. インフレ率が高い国ほど商品価格の上昇を実感する消費者が多い
・オンラインショッピングにおいて1年前と比べた商品価格上昇について15の商品カテゴリーごとに「非常に思う」「ある程度思う」「あまり思わない」「まったく思わない」の4段階でたずねた。ロンドン、ニューヨーク、ムンバイ、ソウルでは商品を問わず「非常に思う」との回答が多い。 ・この傾向は各国のインフレ率統計とも一致している。インフレ率が高かったロンドン(9.1%)、ニューヨーク(8.1%)、ムンバイ(6.9%)では多くの商品で価格上昇が実感されていた。またソウル(5.5%)では特に食品・日用品での価格上昇を感じる人が多い。一方、インフレ率が比較的落ち着いている東京(2.0%)、上海(2.2%)、ジャカルタ(4.6%)では、多くの商品カテゴリーで「非常に思う」との回答は2割以下にとどまった。 ・商品カテゴリーでは食品・飲料、日用品のほか、ファッションや家電などの値上がりが大きいと感じられている。携帯電話もソウルやムンバイをはじめ大幅な価格上昇を感じる人が多かった。 |
8都市のオンラインショッピング利用者に対して、1年前と比べた商品価格上昇について15の商品カテゴリーごとに「非常に思う」「ある程度思う」「あまり思わない」「まったく思わない」の4段階で尋ねたところ、ロンドン、ニューヨーク、ソウル、ムンバイでは商品を問わず「非常に思う」との回答が多かった。
この傾向は、各国の2022年のインフレ率統計とも一致しており、インフレ率が高かったロンドン(9.1%)、ニューヨーク(8.1%)、ムンバイ(6.9%)、ソウル(5.5%)では多くの商品で価格上昇が実感されている。
一方で、インフレ率が比較的落ち着いている東京(2.0%)、上海(2.2%)、ジャカルタ(4.6%)では、多くの商品カテゴリーで「非常に思う」との回答は2割以下にとどまる結果となった(図表1)。
なお、商品カテゴリー別の価格上昇の実感を比べると、15品目のうち、①食品・飲料・酒類(全体平均:42.1%)、②「携帯電話(ガジェット)(37.8%)、③ファッション(アパレル、鞄、アクセサリーなど)(37.7%)、④健康食品(34.6%)、⑤家電・パソコン(33.4%)の5品目が多い傾向となり、食品・飲料、日用品のほか、ファッションや家電なども値上がりが大きいと感じられている(図表1)。
図表1 1年前と比べた商品価格の上昇(「非常に上がっている」と回答した人の比率)(%)
(注1)インフレ率は国際通貨基金(IMF)による(2022年)
(注2)20%以上40%未満を黄色、40%以上を赤でハイライト
2. 国内価格の上昇によって越境EC利用も増加している
・商品の値上がりにともない、オンラインショッピング行動がどう変わったかについても尋ねた。いずれの都市でも、割引クーポン利用やセールにあわせた購入など安く買う工夫だけでなく、まとめ買いや頻度の見直しなどふだんの買物行動を見直す動きも見られた。
・加えてインフレ率の違いや為替の変動によって越境ECの利用もインフレへの対応方法のひとつとなっている。ムンバイやバンコクでは商品カテゴリーを問わず30%以上の人が「国内よりも安く購入できる海外ECサイトを利用するようになった」と回答している。
・インフレ率が低い上海とジャカルタでもほかの都市同様に、購買行動を見直し計画的に行動する消費者は多い。東京はほかの都市に比べると具体的な行動に移す人が少なかった。
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8都市のオンラインショッピング利用者に対して、商品の値上がりに伴って変化したオンラインショッピング行動について尋ねたところ、①割引クーポンの有無で買い物をするようになった(全体平均:38.1%)、②セール日に合わせて購入するようになった(33.2%)、③全体的に購入する頻度や品数を減らした(33.2%)、④計画的に購入するようになった(32.6%)⑤これまで購入していたブランドより安価なブランドを選ぶようになった(31.4%)などの回答率が高かった(図表2-1)。
そのほか、都市別の傾向として、ムンバイやバンコクでは商品カテゴリーを問わず30%以上の人が「国内よりも安く購入できる海外ECサイトを利用するようになった」と回答している(図表2-2)。
なお、インフレ率が低い上海とジャカルタも含め、購買行動を見直し計画的に行動する消費者は多い一方で、東京はほかの都市に比べ具体的な行動に移す人が少なかった(図表2-1)。
図表2-1 商品の値上がりに伴って変化したオンライン購買行動(あてはまると答えた人の比率)(%)
図表2-2 商品の値上がりに伴って変化したオンライン購買行動(全10項目から抜粋)(%)
3. バンコク、ジャカルタ、上海ではライブコマースが定着、東京は普及に遅れ
・ライブコマースで購入した経験があると答えた人は、前回、前々回と同様、全都市の中でバンコクが最も高かった。アジアの都市では購入経験、認知ともに高い傾向は変わらない。
・ニューヨークとロンドンは、アジアの都市ほどではないものの、6割前後が認知しており、購入経験者もほぼ昨年並みで定着している様子がうかがえる。
・東京と他都市との差は、今回も顕著である。認知度については徐々に増えているものの、利用者は2.8%と非常に低い水準にとどまった。名前を聞いたことのない人も半数以上を占める。
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8都市のオンラインショッピング利用者に対して、ライブ配信を視聴しながらオンラインショッピングを行う「ライブコマース」の経験・認知率について尋ねたところ、認知率は東京を除く7都市で70%を超え、他の都市と大きく差が開く結果となりました。
また、経験率も同様に、東京のみ一桁台(2.8%)に留まる状況。特に、経験率の高い都市としてはバンコク(63.4%)と上海(54.7%)の2都市が挙げられ、過半数以上が利用している(図表3)。
経年で見ると、2年継続してバンコクと上海、ジャカルタにおける経験割合は高く40%を超える結果となった。一方で、東京については一桁台が続いている。なお、全体的に利用率において大きな変化は見られないが、上海とソウルではそれぞれ2022年と比べてライブコマース経験率が約5ポイント減となっている。また、ニューヨークとロンドンでは、それぞれ0.6ポイント増、1.2ポイント増とライブコマースの経験率が微増傾向にある(図表3)。
図表3 ライブコマースの経験率・認知率(%)
■「世界8都市オンラインショッピング利用動向調査」について
調査方法:インターネットによるパネル調査
調査対象都市:東京(日本)、ソウル(韓国)、上海(中国)、ムンバイ(インド)、バンコク(タイ)、ジャカルタ(インドネシア)、ニューヨーク(米国)、ロンドン(英国)
調査対象者:10歳から49歳の男女、直近半年以内のオンラインショッピング利用(購入)経験者
回収サンプル数:320x10都市=計2,560サンプル
調査実施期間:2023年2月2日~2月12日
調査委託機関:クロス・マーケティング
今回の調査結果から、インフレがオンラインショッピングの購買行動に少なからず影響を与えることが伺える。特に、インフレ率の高い都市ではその傾向が顕著にみられ、ロンドンやニューヨーク、ムンバイなどの都市では多くの商品で価格上昇が実感され、オンラインショッピング行動を積極的に変える動向がみられた。
今後も引き続き世界的にインフレ圧力が強まる中で、今回購買行動の変化があまりみられなかった都市(東京や上海)でも同様の傾向がみられるようになると思われる。
なお、ムンバイやバンコクのように、インフレ率の違いや為替の変動によって越境ECの利用もインフレへの対応方法のひとつとなっており、今後も日本商品の越境販売は、円安も追い風に絶好のビジネスチャンスになり得るだろう。
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