【2024年EC業界ニュース】韓国市場 中国大手EC事業者と地場EC事業者の市場シェア争いが激化
トランスコスモス調査部が厳選する国内・海外EC業界ニュース
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韓国市場 中国大手EC事業者と地場EC事業者の市場シェア争いが激化
韓国市場で中国大手EC事業者Alibaba(アリババ)と、地場EC事業者の市場シェア争いが激化しています。
3月14日、Alibabaが同国での物流強化に向けて今後3年間で11億ドル(約1,600億円)を投資することを発表しました。同社は格安ECサイトAliExpress(アリエクスプレス)の韓国展開を強化しており、2024年中に首都圏にて物流センターを設備し、翌日配送サービスを展開する予定です。さらに300人体制のコールセンターや、韓国商品を越境販売するための仕入れ部門を設け、3年間で小規模事業者5万社の輸出支援を目指します。
それに対し、地場大手EC事業者Coupang(クーパン)と百貨店の新世界グループが物流の強化を進めています。Coupangは物流センターで史上最大規模となる新たな採用募集を開始し、新世界グループは新たに物流センターを建設して2024年は1日に配送できる商品数を2023年の4倍に拡大する計画を発表しました。
専門家によると、Aliexpressが物流センターを建設することで韓国市場内の競争が一層激化すると考えられます。
中国EC事業者の進出に対し、韓国政府は規制強化を進めています。規制の背景にはAliExpressやTemu(ティームー)などのECサイトで、有名ブランドの偽造品や不適切な商品の宣伝や販売などが堂々と行われていることがあります。
韓国の特許庁と関税庁は偽造品被害の防止に向け、海外ECサイトに掲載された広告をチェックして通関段階での摘発を強化する方針です。
公正取引委員会は電子商取引法を改正し、一定規模以上の海外ECサイトに対して韓国国内での代理人設置を義務付けました。韓国政府は中国EC事業者を始めとする海外ECサイト利用者の被害を救済するために、今後も規制を強化していく予定です。
情報源:日本経済新聞 「アリババ、韓国でクーパンに挑戦状 3年で1600億円投資」(2024/3/14)
情報源:Chosun Online 「韓国政府が中国ECサイトの規制強化...消費者トラブル対応、韓国国内に代理人設置を義務化」(2024/3/14)
情報源:The Korea Times "Coupang, Shinsegae reinforce logistics to take on AliExpress"(2024/3/17)
米大手小売事業者Walmart AIを活用したサービス展開を広げる
米国小売市場ではAIを活用したサービス展開が広がっています。特に大手小売事業者Walmart(ウォルマート)はAI活用を活用した検索サービスを強化しています。
同社はAIを活用したショッピング体験のパーソナライズ化に注力し、ユーザーの商品購入履歴や閲覧した商品、サイトのクリック履歴などの個人の検索データをAIに学習させ、商品検索やレコメンドサービスを実施しています。
専門家によると、AI技術が進化するにつれて今後はユーザーの検索内容に応えるだけでなく、ユーザー行動やユーザーの所在地、季節や現在の社会トレンドに合わせた商品レコメンドが可能になります。これにより、ユーザーは細かい検索条件を入力せずに興味関心に適した商品を発見できるようになります。
特にゼロクエリ検索技術の発展により、AIがユーザーのプロフィールに基づいてニーズを予測し、ユーザーからの入力がなくてもパーソナライズされた商品レコメンドが表示されるようになると専門家は予測しています。
情報源:PYMNTS "Walmart, Other Retailers Tap AI-Powered Tools to Personalize Consumer Journey"(2024/3/12)
米Amazonが出店事業者に対して新たな生成AIツールを発表
3月13日、米Amazon(アマゾン)が出店事業者に対して新たな生成AIツールを発表しました。出店事業者は商品ページのURLを貼るだけでAmazon向けの商品説明を生成できます。
同社は2023年9月にも商品の概要を簡単に入力すると生成AIが商品説明を生成するツールや、商品画像をアップロードすると商品名や背景を追加して出品用の画像を生成するツールを発表してきました。Amazonによると、すでに10万社以上の出店事業者がこれらの生成AIツールを活用し、うち80%近くの出店事業者が生成されたコンテンツを商品ページに使用しています。
今回の生成AIツールでは、出店事業者がすでにAmazonや自社ECサイトで展開している商品ページを活用でき、既存の商品ページよりもアップデートされたコンテンツ生成が可能になります。同社は今後も様々な生成AIツールを展開し、出店支援を強化する予定です。
情報源:Techrader "Amazon's new ecommerce AI tool will let you create a listing using just a URL"(2024/3/14)
中国フィンテック大手Ant GroupのAlipay+ アジア展開を強化
中国フィンテック大手Ant Group(アントグループ)は、同社が展開する国際決済サービスAlipay+(アリペイプラス)のアジア展開を強化しています。
同社は2017年から韓国の大手決済サービスKakao Pay(カカオペイ)と提携し、韓国国内の主要免税店や百貨店、コンビニ、飲食店、交通機関など170万以上の加盟店にサービスを展開してきました。また反対に中国でもKakao Payが利用でき、相互運用性を強化しています。
さらに、Alipay+はKakao Pay以外の韓国の電子決済との提携を増やし、現在ではNaver Pay(ネイバーペイ)やToss Pay(トスペイ)とも提携しました。これら電子決済のユーザーは数十カ国のAlipay+のグローバル加盟店でQRコード決済ができるようになりました。
Ant Groupはパキスタンやスリランカなど、南アジアの新興国市場でも事業を拡大し、先行者利益の獲得をねらっています。一方、中印関係の緊迫化が影響しインド市場からは徐々に撤退しています。
これまでAnt Groupはインドのフィンテックユニコーン企業のPaytm(ペイティーエム)の株式を多く保有していたものの、現在は売却を進めています。同社は今後、Alipay+の欧州展開を計画しています。
中国テック企業への監視を強める米国と比べて障害の少ない欧州で、アジア人旅行者への決済サービス展開を広げる予定です。
情報源:Forbes Japan 「中国アントグループのAlipay、アジア各地で電子マネー事業を戦略的に拡大」(2024/3/18)
GoTo 2023年第4四半期及び通期決算を発表
3月19日、インドネシアの大手配車事業者GoTo(ゴートゥー)が2023年第4四半期及び通期決算を発表しました。
2023年第4四半期決算の売上高は前年同期比3%増の6兆5,000億ルピア(約627億500万円)で総取引額は同8%増の163兆ルピア(約1兆5,730億円)に達し、2四半期連続の増加となりました。
通期決算の売上高は前年比6%増の24兆2,600億ルピア(約2,340億3,400万円)で、最終損益が90兆5,190億ルピア(約8,700億8,730万円)の赤字を記録。前年通期の最終損益40兆4,080億ルピア(約3,900億2,600万円)から大幅に赤字が拡大した原因として、傘下EC事業者Tokopedia(トコペディア)の株式の75%をTikTok(ティックトック)を運営するByteDance(バイトダンス)に売却して、一時的な損失が発生したことがあげられます。
赤字が続いていた同事業者の売却により、収益体質の改善を見込むと同社は発表しています。
配車や宅配事業では、割引キャンペーンの削減などによりコスト最適化を図り収益改善を行いました。
同社はEC市場の競争激化に対してTikTokとの協業で競争力を高めると共に、配車や決済、金融サービスなど幅広い事業を展開し、独自のエコシステムを活用したビジネス展開を行うと発表しています。
今週の注目は韓国EC市場における中国EC事業者と地場EC事業者のシェア争いです。AlibabaとCoupangは物流投資を進め、韓国政府は偽造品規制を進めています。 |