
D2Cブランドを支える"Shopify(ショッピファイ)"とEコマースの未来
「アマゾンキラー」として注目されるカナダ発のECプラットフォーム“Shopify(ショッピファイ)”。まだまだ日本でなじみの薄い同社だが、グローバル規模では既にeBayを抜き、Amazonに次ぐ規模まで成長。昨今のD2Cブランドにとって「必須のツール」として紹介されるほど、EC業界で大きなうねりを起こし続ける存在だ。
※本記事の情報は2020年2月時点のものです
Shopify(ショッピファイ)とは
そもそも「Shopify(ショッピファイ)って何?」という方も多いかもしれない。
Shopifyとは2004年にカナダで創業したEコマースプラットフォーム。ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しているグローバル企業で、世界175か国、100万店舗(2019年12月時点)に利用されているECサイト構築システムだ。
“Make commerce better for everyone”を掲げ、“Entrepreneur(起業家)”を支援するShopifyは、複雑なサーバー周りの契約などは必要なく、月額29ドル(約3200円)で即時に自分のECサイト立ち上げが出来る手軽さと、デザイン性の高さ、カスタマイズ性などが多くのブランドに支持され、急速にEC市場シェアを拡大している。

利用ユーザー数が100万店舗を超え、急速に拡大するShopify (ショッピファイ)
国内ASPカートが多く存在する日本のEC市場では、まだまだその認知度は高いと言えないが、2017年11月に日本法人が設立され、Shopifyを利用するEC事業者や開発パートナーも増え続けている。また、管理画面の日本語化なども完了済みで、様々なヘルプ、国内ユーザー向けガイドなども、日本市場へのローカライズ化も急速に進められている。
そんなShopifyが注目を浴びる背景の一つに「D2C(Direct to Consumer)」ブランドの隆盛があげられる。
大手ECモールが市場を席巻する中で、SaaS型でスピーディーにブランドを立ち上げることが出来るShopifyは、多くのユニコーン(評価額10億ドルを超える未上場企業)により採用されており、市場で脚光を浴びるD2CブランドにとってShopifyは「デフォルトのツール」とさえ言われている。
先日日本上陸が話題となったシューズブランド“Allbirds(オールバーズ)”もShopifyマーチャント(ユーザー)として有名だ。

「世界一快適なスニーカー」として知られる「Allbirds(オールバーズ)」のストアもShopifyを活用
Shopifyの特徴の一つが「拡張性」の高さ。Shopifyが提供するコアシステムに対して、まるでレゴブロックのように「アプリ」を組み合わせ、自社のニーズに合わせた、「自分だけのECサイト」を簡単に構築することが出来る。
D2Cブランドは指数関数的に成長を遂げる。立ち上げ期に始まり、成長期、成熟期と、めまぐるしくニーズは変化し続けるが、Shopifyではそのいずれのフェーズに対しても、ニーズに合わせたアプリを組み合わせて利用することが出来る。ユーザーは、フェーズの変化に合わせてECプラットフォームを乗り換えることも必要ないのだ。

ユーザーは、アプリストアから自分のニーズに適したShopifyアプリを探すことが可能
また、日本のEC市場におけるアジェンダの一つでもある「越境EC」の文脈においても、Shopifyは大きな可能性を秘めたプラットフォームとして注目されている。Shopifyは多言語、多通貨決済に対応していることも強みの一つであり、国境を越えてEC展開を行おうと計画する事業者にとって、非常に相性の良いシステムとも言える。
未来のECとShopify
次々と新しいメディアやデバイスが生まれるように、ユーザーの購買行動は常に変化する。
例えば、ユーザーはSNSで次に欲しい商品を見つけ購入することも出来るだろう。音声デバイスで商品を探し、ウェアラブルデバイスから購入することも当然可能になる。
かつてのようにPCに向かってじっくり商品を検討してWebサイトの購入ボタンをクリックする、そんな未来ではなくなってきている。
次々と変わるユーザー行動に伴って、ECシステムもアップデートが求められてくるだろう。しかし、単一のシステムではその都度スピーディーな変化に対応することは、少しハードルが高いともいえる。
そんな中、一つのシステムに依存しない「ヘッドレスコマース」という新たなECのカタチが注目されており、APIを公開し「接続する」ことを前提にしたShopifyを活用すれば、アイデア次第で様々なチャネルやコマース体験を実現することも可能になるかもしれない。

APIを経由して実現する「ヘッドレスコマース」
Eコマースを民主化するShopifyはしばしば世間から「Amazonキラー」として見られることが多い。だが、モールは本来「競合」でない。むしろ、米国ではAmazon.comとの連携も実現しており、Shopifyに登録するリテーラーが、直接Amazonにも商品を登録できる仕組みも導入している。
「直営店」であるShopifyと、「支店」であるモール店舗の役割は異なるものであり、共存可能な存在だ。それらをどのように活用するのか、EC事業者にとって戦略が必要とされる。
Shopifyを使えば、誰もが月額29ドルからEntrepreneur(起業家)になることができる時代。今後の日本において、より多くの「起業家」を生み出すうえで、ますますその価値が高まるのではないだろうか。










