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第16回SDGsオープンラボ:人権デューディリジェンスって何だ?


こんにちは、トランスコスモスSDGs委員会 オープン社内報 副編集長ワダユウです。

2021年6月24日(木)にオンライン形式で開催された、SDGsオープンラボの2021年度第16回目について報告します。

今回は、早稲田大学での研究員や国会議員秘書などをされている仁木崇嗣さんをゲスト講師にお招きし、「人権デューディリジェンスって何だ?」というテーマで語っていただきました。


仁木崇嗣

1986年奈良県生まれ(本籍:岡山県津山市)。デジタルハリウッド大学院修了。同メディアサイエンス研究所研究員。早稲田大学公共政策研究所招聘研究員。地域デザイン学会参与。認定NPO法人全世代理事。2002年、陸上自衛隊に入隊。少年工科学校卒業後、航空学校を経て、一般幹部候補生合格を機に退職。ベンチャー企業勤務を経て、選挙運動や政治活動に特化した制作会社を23歳で起業し、100件以上の選挙に関与。2015年、YDPAを設立。全国各地の20代当選議員のネットワークづくりと青年首長の支援に加え、市民の学びの場づくりを通じて、デジタル技術を前提とした未来世代のための社会システム・ガバナンスの在り方について探究を続けている。2020年11月より国会議員秘書兼務。剣道3段。銃剣道初段。


人権に関する直近の大きな出来事として、2021年5月、米国の税関当局は、中国・新疆ウィグル自治区でウィグル族など少数民族を強制労働させている団体によって製造された疑いがあるシャツの輸入を差し止めました。

ウィグル問題については、以下のゼンツ・レポートや、ASPIのレポートにまとめられています。

<ゼンツ・レポート>
https://jamestown.org/wp-content/uploads/2020/06/Zenz-Internment-Sterilizations-and-IUDs-UPDATED-July-21-Rev2.pdf

<ASPIレポート>
https://www.aspi.org.au/report/uyghurs-sale


更に、英BBC以前からウィグル問題に切り込む報道を行っており、大衆にもウィグル問題が広く知られるところとなりました。

<BBCのウィグル問題関連ニュース>
https://www.bbc.com/japanese/video-53465253
https://www.bbc.com/japanese/55945241
https://www.bbc.com/japanese/56035986


前述の米国でシャツが輸入禁止となったアパレルメーカーは、サステナビリティにとても力を入れている企業です。その一方でレピュテーションリスクを毀損してしまった背景には、中国市場への依存があります。レピュテーションリスクと、中国のサプライチェーンのどちらを選ぶかという経営判断が求められた事象です。

このような企業が抱える問題を考えるうえで2つの文脈があります。

1つは、CSRの文脈です。グローバル企業が広く進出していく中で、企業は市場を追求しつつ、進出先の安価な労働力などの人権保護など、サステナブルへの潮流です。

2つ目が、中国と米国との対立です。中国の拡大により、既存の秩序が脅かされているとするものです。

ビジネスと人権については、1976年のOECD多国籍企業行動指針(最終改定は2011年)で語られ始めました。2011年に国連において報告されたビジネスと人権に関する指導原則があります。さらに、中国の台頭や様々なリスクの顕在化に伴い動きが加速しており、各国が法制化や規制を作っていっています。人権のみならず企業の行動責任を示すものとして、2018年にOECDから責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンスが示されました。

責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンスを見ると、人権は行動指針の1分野として定められており、その他に雇用・労使・環境・消費者利益など守るべき行動指針がわかりやすく示されています。

<国連:ビジネスと人権に関する指導原則>
https://www.unic.or.jp/texts_audiovisual/resolutions_reports/hr_council/ga_regular_session/3404/

<OECD:責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス>
https://mneguidelines.oecd.org/OECD-Due-Diligence-Guidance-for-RBC-Japanese.pdf


日本では、2020年10月に外務省が「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定しました。これが国の文書としては最初のものと考えられます。この文書をきっかけとし、各省庁が人権に関して本格的に取り組むきっかけとなっています。

<「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)の策定について>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_008862.html


日本政府に先駆けて、2015年には日本弁護士連合会が人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス(手引)を公表しています。

<人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス(手引)>
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2015/150107_2.html


海外では、国連の指導原則に関わってきた人物の非営利団体が公表している国連指導原則の報告フレームワークがあります。指導原則をどのように実行していけばよいか、企業の行動評価をあげていくためのフレームワークが書かれています。

<国連指導原則の報告フレームワーク>
https://www.ungpreporting.org/wp-content/uploads/2017/06/UNGPReportingFramework-Japanese-June2017.pdf


コーポレート・ガバナンスコードにも人権の尊重がキーワードとして入っており、人権尊重に関する基準ができた場合、非財務情報として開示すべきという意図も含まれています。

<コーポレート・ガバナンスコード>
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/index.html


人権デューディリジェンスに関する法制化は、各国で罰則を含めて強化された形で検討が進められています。

<諸外国の人権デューディリジェンス法の概要>
https://drive.google.com/file/d/10bpghqLlUTFqHsbcPbbN9vcnC9phTX7s/view

<人権外交を超党派で考える議員連盟>
https://jinken-gaikou.org/


国や大企業にとって、何を大事にしてビジネスを行っていくべきか、どこに軸足を置いてやっていくべきかというところがビジネスと人権における重要な観点となってきます。

以上、仁木さんの講演でした!

今回はSDGs目標の#10 人や国の不平等をなくそう、#12 つくる責任 つかう責任、#16 平和と公正をすべての人に、とビジネスと人権に関する目標について勉強をしました。

今後も様々なゲストを招いてSDGsオープンラボを行ってまいりますので、ぜひお楽しみに!


trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

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