「史上最大」への挑戦。クラブツーリズム「fufufu ボヌール号」プロジェクトを支えるクリエイティブ体制
「デジタルマーケティングの会社が『バス』のデザイン?」
クラブツーリズム株式会社が11月から運行開始した女性専用バス「fufufu ボヌール号」。
この外装デザインをトランスコスモスCD統括部・CD2部・西日本エクスペリエンスデザイン課の岡田明奈が担当した。
「トランスコスモス史上、最も巨大なクリエイティブプロジェクト」
そう言われる本プロジェクトで、岡田がどのような壁にぶつかり、デザインプロセスはどのように行われたのか。
「そもそもトランスコスモスって、どんなクリエイティブが出来るの?」
そんな疑問を持つ方も多いかもしれない。
クリエイティブの力でクライアントの課題解決に奮闘した岡田のストーリーを紐解いてみた──
トランスコスモス CD統括部・CD2部・西日本エクスペリエンスデザイン課 岡田明奈
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「fufufu ボヌール号」プロジェクトについて
今回のラッピングバスプロジェクトの主役である「fufufu ボヌール号」は、クラブツーリズム社が展開する、女性限定の旅ブランド「fufufu」のツアーを中心に運行するバス。
ツアーの内容は「女子たび部」「ひとり旅」「写真撮影の旅」など、女性や若年層をターゲットにしたテーマが特徴的で、シニア中心という利用イメージを払拭し、新規顧客層の獲得を目指したいという狙いだ。そんなクラブツーリズム社とトランスコスモスは、長きにわたりパートナーシップを築いてきた。
「もともとクラブツーリズム様と当社とのお付き合いは長く、ウェブサイト制作などを東京本社のクリエイティブチームが担当しています。」
そうした日々のコミュニケーションの中で、今回のプロジェクトの話が出てきた。まさかウェブサイト以外で、しかもバスラッピングのデザイン依頼が飛び込んでくるとは思ってもいなかった。
今回のデザインを担当した岡田は、トランスコスモスで7年目になるリーダー。岡田個人としては、女子たび部のロゴデザインなど、クラブツーリズム社のプロジェクトには以前にも参画した経緯があるため、特に思い入れがあったという。
岡田の手掛けたfufufu ボヌール号の外装
バスラッピングプロジェクトのポイント
今回のプロジェクト与件では「内装がカフェっぽくなる」というような情報はあるものの、詳細に固まりきったものではなかったため、コンセプト提案から始まった。
その中で、岡田は「他のプロジェクトに共通する部分と、本プロジェクト特有の部分がある」と説明する。
まず、他のプロジェクトにも共通する部分は、デザインするうえで「企業理念」という会社の『芯』になる部分を大事にすること。
「クラブツーリズム様の企業理念は『旅を通して、出会い、感動、学び、健康、やすらぎの種をまき、はつらつたる喜びに満ちた社会を花開かせていく』というメッセージです。今回のデザインもここから着想を得ており、スズランやヒマワリ、コスモスなど春夏秋冬の花をモチーフに使用しています。」
確かに、白いバスの側面に色鮮やかな花々が彩を加えているのが印象的だ。
また「それぞれの「花言葉」について、ウェブサイトにも載っているので、その意味も楽しんでもらえると嬉しい」と、女性ならではの視点で細部まで丁寧に作りこまれている。
一方で今回のプロジェクトには特有の「難しさ」があったという。
「私自身、このような物理的に大きな制作が初めてだったので、まず「サイズ感」が全く分かりませんでした。」
そんな彼女を支えたのが西日本エクスペリエンスデザイン課に属する経験豊富なメンバーたち。
チーム内では、「ロゴなら〇〇さん」「動画なら〇〇さん」といった風に各人が得意分野を持っており、師弟関係のように協力し合っているという。
屋外でのクリエイティブが得意な同僚たちの英知を集結。「大きなサイズであれば、まずはプロジェクターで写してみると良い」といった具体的なアドバイスを貰い、会議室で実寸を確認しながらプロジェクトを進めた。
「実は、デザインの中に『隠れくまぶー』が盛り込まれているのですが、実寸サイズで投影してみたら、全く隠れてない!と気づくことも出来ました(笑)」
※「くまぶー」・・・クラブツーリズム公式キャラクター
「デザインのプロセス」に関しても、普段行っているウェブデザインとは「全く異なる難しさ」があったと言う。
ウェブデザインでは利用シーンやスクリーンサイズ、情報設計や使いやすさなどの観点が欠かせないが、今回のケースにおいては、ただサイズが大きいだけでなく、屋外且つバスは移動する特性があるため、色使いなどを工夫し「視認性」を高めるデザインを意識し「アートに近い感覚」だったという。
クリエイティブ力×チーム力×顧客理解
そんな岡田のデザインのルーツは、意外にも「漫画」にある。
芸術系の大学を卒業したのち、キャラクターデザインを得意とする彼女は漫画家を目指していた。だが、その夢は儚く散ったと言い、その理由が「書くのは楽しいのですが、漫画の柱となるストーリー作りが苦手でした。」と笑う。
だが、そんな彼女が現在は「チーム」を率いるリーダーとしてプロジェクトを進めている。大阪のクリエイティブチーム体制については前述の通り、専門分野の異なる各スペシャリストを揃えており、各人が専門性の高いクリエイティブ力を武器にしながら、一人では解決できない課題もチームの力を強みに取り組んでいる。
トランスコスモスのクリエイティブ領域
加えて、東西でクリエイティブ拠点を構えるトランスコスモスでは、日々の東西での情報交換が活発に行われるだけでなく、ボーダーレスな組織体制を活かして「社内コンペ」も行われており、東西それぞれのデザインの中で最適なものをクライアントに提案する仕組みが取られている。
今回の岡田のデザインもそのプロセスを通して磨かれたものであり、個人の能力だけではなく、まさに「トランスコスモス全体のクリエイティブ力」を活かしてブラッシュアップされた、顧客にとって最良のデザインと言える。
「トランスコスモスはデジタルマーケティングだけでなく、長年にわたり、顧客業務のアウトソーシング・運用を担ってきているため『顧客にとっての顧客(=エンドユーザー)を理解すること』がすべての中心にあります。それはクリエイティブ領域においても変わりません。」と岡田は言う。
自身も顧客とのコミュニケーションを重視し、直接現場に足を運ぶことも多く、日々のコミュニケーションを通して理解を深めている。クリエイティブを支えるDNAである「顧客・エンドユーザー理解」。これらがトランスコスモスのクリエイティブの強みだろう。
人間にしかできないクリエイティブで、顧客の課題解決を手助けしたい
「お客様と一緒に、誰かの記憶に残るものを創っていきたい」
fufufu ボヌール号のお披露目試乗会に参加し、自身もバスに試乗した岡田は言う。
今回のプロジェクトは「バスラッピング」という非デジタルの世界ではあるが、ウェブサイトやSNSなどトランスコスモスの携わるデジタルコミュニケーションとの統一された世界観を意識して設計されている。
テクノロジーの進化により、クリエイティブデザインにも機械学習や人工知能が使用される機会が増えた。トランスコスモスでもこうした応用技術への取り組みを進めており、一定の成果を出している。だが、何より重要なのはテクノロジーを活用する領域と、人間の価値が発揮される領域を理解し、共存していくことだろう。
そんな中で今回のプロジェクトを通して「ブランドを創り、人々の心にも残るようなクリエイティブは今後もなくならないし、人間にしかできない仕事だと思います」と岡田は未来を見据えている。
「私は運が良いんです」と言う岡田のクリエイティブは、今回のようなプロジェクトに関われること、チャンスをくれたクライアント、サポートしてくれる仲間、そのすべてに支えられているに違いない──
最後に、次なる野望を聞いてみると「トランスコスモスがデジタルだけじゃない、あらゆるデザインで顧客の課題解決サポートが出来ることを知ってもらえると嬉しい。バスの次は・・・飛行機かな!」とほほ笑んだ。
岡田が飛行機デザインを手掛ける日も近い?!