中国のライブコマース最新事情&アリババの戦略&効果的な活用方法まとめ【2020年】
アリババはここ数年の中国EC市場で驚異的な実績を上げているライブコマースに関し、国際的な影響力を持つ世界中のインフルエンサーや商品と連携する計画を2019年11月に発表しました。その時にTmall国際が公表したのが「Tmall GLOBAL walk of fame(中国語で「網紫計画」)」という計画。アリババのライブコマース戦略を含め、中国のライブコマース事情について解説します。
※本記事は2020年10月5日にネットショップ担当者フォーラムに掲載された記事を転載しています。 |
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ライブコマースに力を入れるTmall国際
「Tmall GLOBAL walk of fame(網紫計画)」は、著名人やインフルエンサーとの連携により、ライブコマースを通じてたコンテンツマーケティングで世界中の良質な商品を販売していく計画を指します。
「網紫(ワンズ)」とは、これまで影響力のあった「網紅(ワンホン)」より、さらに影響力のあるインフルエンサー。両者の違いは国際的な影響力を持っているかどうかです。もともとの意味合いは、唐の時代、高官だけが赤色から紫色への官服の着用を許されており、昇格を「紅得発紫」という言葉で形容したことが由来です。
米国の有名タレントであるキム・カーダシアン氏は、中国タオバオ1位のインフルエンサーである薇娅(ウェイヤー)氏と提携しました。彼らは「Taobao live」を通じてライブ配信を行い、自身のコスメブランド「KKW Fragrance」という香水を販売したのです。
その日はまさに「Tmall GLOBAL walk of fame(網紫計画)」が発表された日(2019年11月)。その後、薇娅氏とキム・カーダシアン氏は「網紫」の称号を獲得しました。
「網紫」の登場で、宣伝・販促手段としてのライブ動画配信(ライブコマース)は重要な位置づけとなりました。それに伴い、中国のライブコマース市場はさらに大きく飛躍しています。こうした背景を踏まえ、中国EC業界におけるライブコマースの現状を見ていきます。
中国EC市場で効果的な販促手法であるライブコマース
中国ではインフルエンサーによるライブコマースが盛り上がっています。2017年に台頭したインフルエンサーによる販売手法は2019年も成長。現在はインフルエンサーの配信するライブコマースが最も効果的な販促手法の1つとなりました。
Tmallによると、2019年のダブルイレブン(独身の日)における「Taobao live」の取引総額は200億元(1元15.7円換算で約3140億円)。今後3年間で5000億元(1元15.7円換算で約7兆8500億円)規模に成長すると予測しています。
また、中国ライブコマースによるマーケティングの市場規模は2020年には76.3億元(1元15.7円換算で約1197億9100万円)に達する見込みで、CAGR(年平均成長率)は50.8%。ライブコマース活用企業は120万社に増え、その潜在市場は相当な大きさです。
2016-2020年 中国ライブコマースによるマーケティングの市場規模と予測
(iiMedia Researchの公開したデータを使用)
テクノロジーの進化や生放送プラットフォームでの新しい機能などにより、ライブコマースマーケティングは低コストで大量のトラフィックと露出を獲得できるようになったため、多くの企業から注目を集めています。
従来型のマーケティングプロセスは認知から購入までのファネル型で考えられることが主流でした。ライブコマースは昨今の5A(認知:AWARE、訴求:APPEAL、調査:ASK、行動:ACT、推奨:ADVOCATE)の考え方のように持続性のあるマーケティングとも言えるでしょう。いわば認知(AWARE)から直接行動(ACT)へと結びつくモデルです。
盛り上がりを見せるライブコマース
「Taobao live」は中国有数のランキングプラットフォームである「淘榜単(タオバンダン)」と提携し、2018年の取引総額からタオバオライブコマースの億元ランキングを2019年1月に発表しました。
図1(左):タオバオライブコマースの億元ランキング
図2(右):ライブ放送総合ランクと短視聴動画ランキング
なお、2019年のダブルイレブン当日、表中にある薇娅(ウェイヤー)のライブ配信の視聴者は4315万人、李佳琦(リー・ジャーチー)の視聴者が3683万人です。
中国人消費者がライブコマースを利用するは何か?
まず、商品選びの手間が省けます。高い信頼度と影響力を持つインフルエンサーならではのライブ動画による商品の使用体験は、消費者は楽しみながら商品情報を取得できます。
次に、購入メリットです。インフルエンサーはライブ配信を行う場合、特別企画や優遇価格で販売するケースが多く、インセンティブを用意することもあります。トップインフルエンサーになれば自身の信頼性を維持するために、商品の仕入れ先や品質も徹底的に調査するので、消費者に安心感を与えます。
さらに、消費者はライブ配信を通じて臨場感のある買い物を楽しめます。リアルタイムのコミュニケーション、商品動画、レビューの閲覧……。消費者はライブならではのコミュニケーションの楽しみを味わえるのです。
中国の各ECプラットフォームは、相次いで「Eコマース+ライブ配信」市場に参入し、続々とライブ配信の仕組みを取り入れています。
ライブコマースを実施するにあたり、いくつかアドバイスをご紹介します。
中国ライブコマースマーケティング産業チェーン
(出典:iresearch「2018年中国ライブコマースマーケティング市場研究報告」)
1.数あるプラットフォームを選択するコツ
アパレル、コスメ、マタニティ・ベビー用品なら「タオバオ」
「Taobao live」は面白ネタを含む消費財のライブコマースと位置づけられます。アパレル、コスメ、マタニティ・ベビー用品などのカテゴリーはコンバージョン率が65%を超えるものもあります。
客単価が300元以下なら「快手(クアイショウ)」
ライブ配信アプリ「快手(クアイショウ)」はタオバオ、Tmall、JDなど多くのECプラットフォームと提携、各ECサイトへの商品ページにリンクを設定することができます。中でも客単価が300元以下で薄利多売、そして在庫を持っている商品では「快手」がお薦めです。なぜなら、地方都市や農村部のユーザーが中心ユーザーのため、低価格商品が売れる傾向にあるためです。
生活サービス、日用品、ペット用品なら「Tik tok」
「Tik Tok」のユーザーは60%以上が30歳未満の若年層です。コスメ、日常用品、ペット用品、旅行、グルメなどの生活サービス類は若年層の興味と親和性が高く、「Tik tok」での販売が効果的です。
2.実施商品の選定
インフルエンサーの特性に合う商品を選ぶことが大切です。そして、できるだけ多くの人に受け入れられて、コストパフォーマンスの高い、売れ筋の商品を選択しましょう。
3.販促施策との連携
ライブコマースはさまざまな販促施策(例:タイムセール、数量限定、期間限定、無料プレゼント)をうまく組み合わせることで、より良いマーケティング効果を期待できます。
コロナ禍で増加するライブ配信
新型コロナウイルス感染拡大により、生活スタイルに大きな変化が起きています。
消費者は外出自粛を要請されたため、オンラインショッピングを利用するユーザーが短期間で爆発的に増加。ブランド企業は新型コロナの業績への影響を最小限に抑えるため、続々とライブ配信を通じて商品PR、商品販売を始めました。
一方、「Taobao live」「Tiktok」「快手」「WeChatミニプログラム」などライブ配信機能を持つプラットフォームは一連の施策を打ち出し、ブランドのライブコマースをサポートしています。
3月8日に行われたオンラインショッピングイベント「三八女王様フェスティバル」において、「Taobao live」の売上高は前年比264%増となり、最も多かった日の取扱高は前年同日比650%増と驚異的な数字をたたき出しました。
中国では新型コロナウイルス対策が成果を出しつつあり、中国国民の消費意欲が徐々に回復し始めています。各ライブ放送プラットフォームのライブコマースがますます盛り上がり、国EC市場から注目されることは必至です。
アリババグループのニューリテールの消費新生態の重要な一環として、「網紫計画」の将来がますます期待されるため、日本の事業者も注視してください。