自動運転の実現でデジタルコンテンツとマーケティングが変わる!【2020未来予想図】
自動車のIT化、自動運転化という技術革新の大波が来ようとしています。自動運転車が実用化した未来には、一体何が待っているのでしょうか。今回は自動運転が実現すると私たちの生活やビジネスはどう変わるのかを考えてみたいと思います。
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未来の自動車、自動運転実現の構想と道のり
2020年には東京オリンピック・パラリンピックが控えていますが、実はこのタイミングで自動運転に取り組む業界も大きな変革を迎えようとしています。
安倍首相は2017年2月、未来投資会議(議長・安倍首相)において「2020年までに、運転手が乗車しない自動走行によって地域の人手不足や移動弱者を解消する」という方針を打ち出しました。2025年の自動運転社会の到来を見据え、2020年には完全自動運転を含む高度な自動運転の実現を目標に設定し、大きな注目を集めました。
一般社団法人日本自動車工業会は、トヨタ自動車など自動車メーカー10社が参加する自動運転車両80台の公道実証実験を東京オリンピック・パラリンピック直前の2020年7月に公開すると発表。それに先駆け、すでに全国の公道で各社自動運転車両の実証実験が実施されています。
筆者が住む愛知県では、春日井市が名古屋大学・厚生労働省と共同でモビリティサービス実証実験をおこなっています。実験の舞台となる街「高蔵寺ニュータウン」は1970年代に開けた世に言う「団塊の世代」の街。自分で運転することが困難な高齢者が多い地域や、バスやタクシーなどの移動手段が乏しい地域を次世代のモビリティサービスのターゲットとしました。
まずはこういった地域での実証実験を重ねていき、2020年には「レベル4(高度運転自動化)」を満たした無人タクシーの可動が期待されています。そして、最終的には「レベル5(完全運転自動化)」を満たした自動車が走る社会が現実のものになるのです。
自動運転レベルの定義
「官民ITS構想・ロードマップ2017」高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議
【予想1】未来の自動運転タクシーは「無料」になる?!
安倍首相が目指すように2020年に「自動運転技術レベル4」を満たしたタクシーが可動するとしましょう。世界中から観戦者、観光者が集まる東京でその実用性と利便性が実感されれば、オリンピック以後、自動運転タクシーは急速に普及することになります。
そこで気になるのが自動運転タクシーの乗車料金です。
タクシー業界最大手・日本交通の川鍋一朗会長は2016年にこう話していました。「自動運転タクシーのサービスは最終的には無料になると思います。タクシーが街を走る間は走る広告宣伝車として、お客を載せている間は車載モニターで広告宣伝を行う『広告収益モデル』がメインとなるでしょう」
なんと、将来タクシー料金は無料になるというのです。しかも、川鍋会長の発言を裏付けるように無料タクシーはすでに現実のものとなっています。
2018年12月、タクシー配車アプリMOV(モブ)と日清のどん兵衛がタイアップして乗車料無料のラッピングタクシー「どん兵衛タクシー」を運行したのは記憶に新しいところです。どん兵衛タクシーは自動運転ではなく運転手が運転する通常のタクシーで、しかも期間と運行エリアを限定するものでしたが、広告収益でタクシー料金を無料にする試みは始まっていました。
トランスコスモス渋谷本社付近に停車中のどん兵衛タクシー(2018年12月撮影)
【予想2】より高度な広告配信とマーケティングが可能に
自動運転タクシーの未来の広告は、配車アプリの登録情報や車載カメラから得られる乗客の属性データをもとにしたレコメンド型広告が主流となるでしょう。年齢や性別はもちろん、天候や時間帯、乗降車位置などの情報を連携させたターゲティングにより、車載モニターやアプリでの配信広告を最適化します。
また、タクシー空間を利用したより精度の高いマーケティングも期待できます。具体的には、タクシーの車載カメラと顔識別技術と連携して、広告を見た乗客の反応の良し悪しを解析するようになるでしょう。そうして蓄積したデータを活用すれば、さらに高精度な広告配信が可能になります。
【予想3】完全自動運転で生まれるビジネスチャンスとは
自動運転車両が一般販売されるようになった未来で求められるもの、それは一体何でしょうか。
「運転」という「作業」から開放されたとき、人間は自由な時間と空間を手に入れることになります。イメージしにくいかもしれませんが、完全自動運転(レベル5)が実現すればハンドルを握る必要がない(ハンドルすらない)のですから、車内は目的地に向かって勝手に移動してくれるプライベート空間になるわけです。
ここで少し想像してみてください。移動するプライベート空間にいるあなたは、目的地に到着するまでの間、何をして過ごしますか。
ゲームや音楽、動画・テレビ・映画鑑賞などの娯楽を思い浮かべた方が多いのではないかと思います。そういったエンターテインメントコンテンツが、自動運転車が走る未来で求められると筆者は考えます。
少し古いデータですが、損保ジャパン日本興亜が2017年に調査した「自動運転車に関する意識調査」(PDF)によると、自動運転中にしたいことのアンケート結果上位は、「景色を眺める」「同乗者と会話する」「飲食する」でしたが、続いて「音楽を聞く」「テレビ・DVDを見る」「携帯電話・スマートフォン・パソコンを操作する」「ゲームをする」といった声も目立ちます。このことからも、ゲームや音楽、動画などのコンテンツビジネスが飛躍的に伸びるのは間違いないでしょう。
また、アンケート上位の「飲食(する)」というジャンルでもコンテンツが活躍します。人間が窓の外に気を配る必要がなくなった自動運転社会では、道路わきに存在する飲食店が認識されず、そのためリアル店舗への集客方法を見直さなくてはなりません。小売でも同様です。
例えば、過去に「いいね」した店が目的地までの経由エリアにあれば通知で立ち寄りを提案したり、位置情報ゲームと店舗キャンペーンの連携を強化して来店を促進したり、「移動」×「販促」をキーワードにしたO2Oマーケティングに一層の力を入れる必要があるでしょう。
今回のレポートは以上となります。
自動運転の実用化が私たちの生活とビジネスにもたらす変化についてお伝えしました。
2020年は、日本の自動運転元年になるかもしれません。運転で拘束されていた時間が自由な時間に変わったとき、人はどう過ごすのかを想像することが、次のビジネスチャンスにつながります。今のうちから「変革」を迎える準備をしておきましょう。