GAZEHACKってナンダ?!動画クリエイティブの最適解
スマートフォンの普及で動画広告市場は急成長しており、2018年の日本の動画広告市場は約1,834億円、2020年には2,900億円、さらに2024年には5,000億円近い市場への成長が見込まれています。※出典:Criteo
トランスコスモスでは2017年に動画制作体制を強化。広告やサポート領域での活用など様々なシーンでの動画クリエイティブを提供しています。
今回は2019年7月にリリースされた、視線分析で動画広告演出を最適化するメソッド「GAZEHACK(ゲイズハック)」について、共同開発したSOOTH株式会社 森 亮人様をお迎えしてトランスコスモスの開発責任者である楳原 秀一とともに、サービス開発までの経緯や5G時代に向けた動画クリエイティブについて、詳しく話をお聞きました!
森 亮人 SOOTH株式会社 デザインコンサルタント |
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楳原 秀一 トランスコスモス株式会社 |
目次[非表示]
映像制作の強みを生かした”体験設計”SOOTH株式会社
----いきなりですが、「SOOTH」って・・なんて呼ぶのですか?スー・・?
スースです(笑)。英語で「真実」という意味です。もともとは映像制作会社の株式会社AOI Pro.の一事業部で、VRなどを使って体験設計しようということから始まりました。 VRはリアルと同じ体験・刺激を作りだすので、感じたことを可視化できればおもしろいのではないかということをコンセプトに、「データキャプチャ」「アナライズ」「デザイン」を得意としています。
SOOTH株式会社
----2018年2月にAOI Pro.からJVとしてSOOTHが設立されて、4月にはトランスコスモスとご一緒していたのですよね
動画制作の過程で、ABテストをやっては出稿して、CTRなどの反響を見るといったやり方に課題を感じておられ、視線や人間の反応をうまく使えないかと、イベント出展中に声をかけて頂きました。まだサービスインしたばかりで事例がなかったですが、すぐに一緒にやろうとなりました。
トランスコスモスの動画サービス
----トランスコスモスは広告やコールセンター、BPOのイメージが強いのですが、動画も結構作っているのですよね
2018年度は約5,000本の動画を制作しました。人材・金融・ゲーム・エンタメ・化粧品・メーカー・小売など、業種は多岐にわたっています。2017年4月にビデオマーケティング課が発足して、YouTubeやSNS媒体などを中心としたWeb動画広告の企画・クリエイティブディレクション、制作まですべて行うようになりました。
----映像制作を専門とした会社はたくさんありますが、トランスコスモスの強みはどこにありますか?
国内外に制作拠点があり、元総合代理店出身のCMプランナーやCMプロダクション出身のプロデューサーが在籍しています。また、動画編集に特化した専門スタッフが社内にいるため、企画から制作まで社内一気通貫で対応できるのが強みですね。例えば、訴求開発ツール「coemo」を使ってどのような訴求が視聴者に刺さるのかを決めて、制作して、GAZEHACKで分析する。企画・制作・検証を自社開発のメソッドで対応できるのも強みです。
SOOTH×トランスコスモス=GAZEHACKとは?
----GAZEHACK(ゲイズハック)の開発経緯を教えて下さい
動画広告市場が急成長している中で、競合優位性を出せる武器が必要と常々考えていて、視線ってまだ誰もやっていないのでは?というところから始まりました。
SOOTHのサービスを使っていただいて、「視線がどこをみているのかわかれば、提案の強い武器になる」という話をいただきました。視線が何に当たったかを集計すればデータを有効活用できると考え、1ヶ月後にはプロトタイプが完成しました。
動画広告のABテストをしたときに、「なぜAが勝ったのか」というのは具体的にわかりませんでした。その要因を、視線を基に詳しく特定・分析することでより説得力のある提案が出来るということで、サービス化に踏み切りました。
VRを活用した”GAZEHACK”で視線を解析
----良い動画とはどのようなものでしょうか?
多くの人に見てもらう”視聴率”をよく言われますが、それだけでなく、正しく内容が伝わったかという”視聴質”も重要になってきます。テレビCMとか見ていて、タレントさんはすごく印象に残っているけどなんのCMだったっけ?ということないですか?(笑)これは、企業からしてみればマーケティング効果があまりないので、このようなことが減らせるのではと思っています。
外資のメーカーさんなどは、広告を配信する前にそれが受けるのかどうか、ある程度テストします。インタビューするケースもあれば、試聴室に呼んで見ていただくこともあります。GAZEHACKではこれをVR空間上で再現しています。
----なるほど。トランスコスモスは、実際の視線をもとに、本当に訴求したい内容が伝わっているのか、分析してより視聴質の高い動画が提供できるのですね。動画は何人くらいでテストするのでしょうか?
だいたい20人くらいです。弊社グループ社員をモニターとするスタンダードプランと外部の調査会社経由で一般のモニターを集めるプレミアムプランを用意しています。後者ですと性年代や興味関心など、動画の想定ターゲットに合わせたより精度の高い調査が可能です。
----成果はどうですか
CTRの低い動画AとCTRの高い動画BをGAZEHACKで比較した結果、Bの方が"商品"に視線が1.5倍集中しており、さらにCTRが2.5倍高いという結果が出ました。"商品"に視線をフォーカスすることで成果が向上することがわかりました。
視線が関係なければそんなにCTRが増えないはずなので、GAZEHACKのコンセプトは間違っていないと考えています。”視線といえばこうだよね”というナレッジを蓄積している段階なので、クリエイティブチームと連携してより成果が出せるようになると思います。
視線のその先にある潜在的インサイト
----動画広告の他にGAZEHACKで成果が出しやすい動画はありますか
個人的にはHOWTO動画とはとても相性が良いと思っています。テキストとイラストのどちらで説明した方が良いのか演出していて迷うところがあるので、どこをみているのか特定できればよりわかりやすい動画がつくれると思います。
レポーターが人混みの中で喋っているとき、人混みに視線が向いてしまい、「人がたくさんいる」というメッセージのみが伝わり、結果的に伝えたいメッセージが伝わらない事があります。情報が入りすぎていると視線が分散して伝わらなくなるので、説明系の動画は視線を軸にすると良いと思います。
視線情報はそれ自体が消費者の潜在的なインサイトであるため、そこで得られたクリエイティブの知見はWeb広告だけではなく、ポスターやTVCMなど他のメディアの制作にも有効です。
----GAZEHACKを利用いただいているのはどのようなお客様が多いですか
動画広告のPDCAに課題を感じているお客様から多く引き合いを頂いております。動画を改善するにあたり、従来の定性的なアンケート調査やクリエイターの勘や経験に頼るのではなく、“視線”というデータに基づいた根拠ある改善アプローチを取れるのが強みです。
5G時代到来にむけた動画クリエイティブ
----5Gがすぐ近くに来ていますが、今後動画はどうなって行きますか
確実に動画の量が増えていくので、どういう動画が良いのかもっとシビアに見ないとコストだけ増えていってしまいます。動画分析がより重要になるため、GAZEHACKはチャンスです(笑)
企業側も、Web広告ならではのテクノロジーを活用したOneToOne配信やリッチ体験の提供ができ、クリック率や離脱率など効果が測れるWeb動画により注目していくことになると思います。
Webならではのより細かいターゲティングにクリエイティブを合わせることが重要ですね。
----今後の目標を教えて下さい
GAZEHACKを利用してきちんと消費者のインサイトに基づいた動画を制作し、業種別のナレッジを蓄積して、動画の勝ちパターンをつくっていきます。
新しい切り口で映像を評価してより効果の見込める映像を作っていく第一歩を踏み出しました。映像を見た人は視線や脳波など、なにかリアクションがあるのではないかという仮説を元に、まずは機械的ではなく試行錯誤しながらデータとして蓄積していくことが今は重要です。その先に、統計データとして傾向値を出せば様々な予測ができるようになります。
動画の未来を切り開いていく二人。GAZEHACKに今後も注目!