catch-img

次世代コンタクトセンターの世界~第4章:レベルゼロから始める、AI・データ活用の進め方 ~なぜ、AIプロジェクトは必ず3回失敗するのか?

北出
北出 大蔵

 

DEC統括
アナリティクスセンター統括部 統括部長
兼 トランスコスモス・アナリティクス株式会社 COO



目次[非表示]

  1. コールセンターはデジタルトランスフォーメーションの最前線
  2. レベルゼロから始める、AI・データ活用プロジェクトの進め方
  3. AI・データ活用の「課題設定」に失敗する理由
  4. コンタクトセンターにおけるAIプロジェクトの実践事例
  5. ようこそ、次世代コンタクトセンターの世界へ
  6. さいごに

コールセンターはデジタルトランスフォーメーションの最前線

近年、デジタルトランスフォーメーションや第4次産業革命といった言葉を耳にする機会が増えました。デジタルトランスフォーメーションとは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念のことです。

また、総務省が発表した「我が国のICTの現状に関する調査研究」にある、企業が「デジタル技術を使って、新しい製品やサービス、ビジネスモデルを生み出し、ネットとリアルの両面での顧客体験の変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」を指します。

いずれにせよ、最新のデジタル技術によって新たな産業や顧客体験を生み出す変化を起こそうというムーブメントのことを指し、コールセンター/コンタクトセンターもデジタルトランスフォーメーションの影響を大きく受けるであろうと言われています。

しかし、そもそもコールセンター/コンタクトセンターの歴史とは、図1にあるように、その発祥から現在に至るまでデジタルトランスフォーメーションの影響に常にさらされ、進化を遂げてきた歴史そのものといえます。

理論的には、前述の「グッドマンの法則」に代表されるCS重視の経営に対する理解が浸透し、技術的にはNTT転送でんわサービスの開始が契機となり、いわゆる「お客様相談室」が登場しました。そしてIT革命や金融ビッグバンなどを契機に急成長を遂げ、コールセンターと呼ばれるようになり、さらにはインターネット/スマートフォン/SNSの普及とともに、電話以外にも対応したコンタクトセンターとして拡張されました。最終的に、現在はビッグデータやAIなどの活用に向けた対応を求められています。

このように、デジタルトランスフォーメーションという言葉ができるよりずっと前から、常に最新のデジタル技術と向き合い最前線を担ってきたのがコールセンターという存在なのです。

デジタルコンタクトセンター

 図1:コールセンターの進化の歴史は、デジタルトランスフォーメーションの歴史


ところが、最近はメディアなどで「AIの登場でコールセンターは10年後に無くなるのではないか」といった言説をしばしば耳にします。これは、英国のオックスフォード大のオズボーン教授の研究で、コールセンターのテレマーケター業務が「AIで10年後に無くなる仕事」の代表格としてリストアップされていたことがきっかけとなっています。

個人的には、本当にコールセンターが10年後に無くなるのかと聞かれたら「NO!」と即答しますが、残念ながら、そうした道聴塗説を真に受けて「AIは人間の敵か味方か?」といった議論を戦わせている人々を見かけることは少なくありません。そして、そのような議論を好む人ほど、そもそもAIについての基礎知識や実践経験が足りていないということが多く見受けられます。

幸いなことに、近年の過度なAIブームは2019年あたりから沈静化し、最近でいうとタピオカミルクティのような過剰な期待のピークは越えたように感じます。そして、顧客ニーズの対応や現場の課題解決に役立つ活用方法を現場で地に足を着けて考える段階に入りつつあります。実際に、数年前までは「AI を使って何ができるか?(AIを使って成果が出るなら何でもよい)」というご相談が多かったのですが、最近はAI活用に真剣に取り組んでいる企業ほど「~の課題解決のために使えるAIは何か?(成果が出るなら別にAIじゃなくてもよい)」という健全な思考回路で、実務的なご相談をいただくことがほとんどになってきました。

逆に、いまだにAIという言葉をありがたがっている人は、少し足元を見つめなおすべきだと思います。フェイクニュースにいつまでも振り回されているほど、現代のビジネスパーソンは暇ではないはずです。

レベルゼロから始める、AI・データ活用プロジェクトの進め方

とはいっても、デジタルトランスフォーメーションの最前線を担うコンタクトセンターとしては、AI・データ活用という課題に向き合っていかねばなりません。

日経コンピュータと日本経済新聞が実施した、国内大手企業113社へのAI活用状況に関する調査では、83%の企業でAI活用は当たり前になっており、60%の企業で期待以上の成果が出たと回答しています。しかし、必要なデータがそろっている企業は10%程度しか存在せず、そうしたAI活用を担う人材の増強を課題としている企業は88%に上ります。AIの必要性は認識していても、AIに必要不可欠なデータを持っておらず、その状況を打開し推進する取り組みができる人材が不足しているというのが、日本企業の実態だと考えてよいでしょう。

そのように、AI・データ活用をどこからどう進めてよいかわからないという企業のために、トランスコスモスでは図2のような「AI・データ活用レベル診断表」をご用意しています。

一般的に、AI・データ活用プロジェクトは最初に少数の専門部隊を編成し、トライアルを限定的に行い、局所的な成功事例をつくり出します。それを横展開し、複数の現場で自律的に運用できる状態をつくり上げ、最終的にはAIの活用を前提に事業全体を再構築するというプロセスを辿ります。そして、レベルゼロからAI・データ活用プロジェクトを始めるには、まずはAIの基礎知識の習得と具体的な活用課題の設定が必要となります。

本稿では、そうした基礎知識と課題設定の勘所を、かいつまんでご説明したいと思います。

デジタルコンタクトセンター

図2:レベルゼロから始める、AI・データ活用レベル診断表


AIについてレクチャーを求められたとき、私はそもそも「AI」には2種類あるという話から始めます。

ひとつは、人間のように理解して自律的に判断する能力をもつ「汎用AI」。某国民的ネコ型ロボットのような存在です。もうひとつは、人間が行う特定の作業の一部を支援する「特化型AI」。AIスピーカーやチャットボットはこれにあたります。

そして大事なことは、現状では「汎用AI」は空想上の実在しないものであり、実用化されているAIの大半は「特化型AI」しかないという事実です。AIについて過度な期待を抱いている人は、この2つのAIの違いを理解していないことが多いようです。

「特化型AI」は最近になって登場したものではなく、けっこう前から存在します。私はロールプレイングゲームが好きなのですが、最初に「特化型AI」に出会ったのは中学生時代、戦闘AIといって味方キャラクターが勝手にバトルをしてくれるAIでした。しかし、当時のAIは学習能力がなく、味方の僧侶が大魔王に効かない即死魔法をひたすら唱え続け全滅するという致命的な問題を抱えていました。

ところが、最近のAIはその学習能力を身につけたのです。ビッグデータを蓄積し高速処理することでAIに学習させ、数多の画像から猫の画像を認識したり、電話の音声会話をテキスト化したり、購入確率の高い顧客を予測したり、チャットボットや自動運転のように対話や行動を制御したりできる特化型AIが登場しました。

これらの特化型AIのベースにはすべて「教師あり機械学習」が活用されています。

「教師あり機械学習」とは、過去の教師データから反復学習し、そこに潜むパターンを発見し、未知のデータにあてはめて予測スコアを付ける技術のことです。特化型AIを開発するためには、企業や業界の特性を踏まえつつ、AIに解決させたい課題を設定し、そのために必要な学習用の教師データを準備しなければなりません。逆に予測に使うアルゴリズム自体は既にツール化されていたりWeb上のフリーウェアで入手できたりします。

つまり、重要なのはAIのアルゴリズムではなく、AIが学習するために必要な、設定した課題に対応した教師データなのです。「Data Is New Oil」 (20世紀の経済の富の源泉が石油であったように、21世紀の石油はデータだという意味)といわれる所以はここにあります。そして、前述の「必要なデータがそろっている企業は10%程度しか存在しない」という調査結果から、AIに解決させたい課題に対応した教師データの重要性を理解できていない日本企業がいかに多いかという現状を読み取ることができます。

AI・データ活用の「課題設定」に失敗する理由

さて、AI・データ活用の課題設定に対応した教師データが大事だと連呼しましたが、実はこの「課題設定」というやつが「言うは易く行うは難し」を地で行く厄介な作業なのです。

たとえば、「自社のダイレクトマーケティングやコールセンターの業務で、AI・データを活用して解決したい具体的な課題を設定してみよう!」というお題を与えられたら、皆さんはどんなものをイメージするでしょうか。

よく挙げられる代表例をご紹介しましょう。

  1. 解約防止:解約しやすい顧客を予測したい
  2. 在庫予測:在庫管理のために在庫予測する
  3. 離職予防:離職者を察知しひきとめたい
  4. 未入金督促:不履行者(デフォルト)を予測したい
  5. 法人テレセールス:成約確度が高い企業を予測したい
  6. カタログ・DM送付:購入確度が高い層にだけ送付したい
  7. コールログ要約:音声認識の会話テキストからVOCを自動抽出し要約したい
  8. クロスセル/アップセル:感情認識で顧客の買いたい気持ちを見える化したい

他にもいろいろ挙げられるでしょう。しかし、実はこれ、すべてがAI・データ活用の課題設定に「失敗」した、非常によくある代表例なのです。「課題設定」はそんなに甘いものではありません。

たとえば、コールセンターにおける解約防止を例にとると、解約確率を予測するだけでは解約申し出のインバウンドコールがあった際に、水際でのカウンタートークを仕掛けるといったことはできません。解約防止の実務経験者ならば、効果的なカウンターオファーを立案するためには、解約理由の解明やその理由で解約したい人を識別する仕組みが必要だと気が付くはずです。

また、解約予防のためのアウトバウンドコールを行う場合は、解約の予兆を示した顧客に早期のケアやリテンション施策を打とうとすると、業界用語でいうところの「寝た子を起こす」リスクが発生します。架電がかえって解約のきっかけを与えてしまうという現象です。そのリスクを軽減するためには「寝た子を起こす確率」を予測し、その層はリストから外してあえて架電しないといった工夫が必要です。

このように、予測したいのは漠然とした解約確率ではなく別の指標であったと気が付き、予測の目的や対象から見直したり、予測するだけでは施策化できないため、別の仕組みを用意してあげたりしなければいけないことが、AIプロジェクトにはままあるのです。また、実際に予測をしてみたら精度が低く、別の目的での活用を再検討し、教師データを集めなおすところからリスタートすることも多いです。

こうした「課題設定」の失敗は、図3にあるような3つの理由に集約されます。AIを活用したいけれど「知識不足」や「技術先行」でなんとなく課題に正面から向き合って考えられてないというケースも少なくありません。「AI や データ を活用した次世代コミュニケーションを実現したい!」というような考え方のまま始動したプロジェクトは必ず失敗します。その理由は、まさに「AIやデータを活用し~」という発想がそもそも「技術先行」の失敗を誘発しているからにほかなりません。

デジタルコンタクトセンター

図3:AI活用の課題設定に失敗する理由


しかし、どんなに正しい知識と取り組み姿勢でAI・データ活用プロジェクトに臨んでも失敗することがあります。それは、最初に飛びついて設定した課題は「真の課題」ではないということがほとんどであるということを知らずに、「真の課題」に気づかないままプロジェクトを続け、終わりを迎えてしまうからです。そして、そのような失敗は、多くの場合は現場におけるアクションを見据えた課題設定をできていないことに起因します。

したがって、我々は「真の課題」に辿り着くための正しい思考手順と、AIプロジェクトの進め方を学ぶことが必要になります。トランスコスモスでは次の図4のように、PoTとPoCとPoVの3つのトライアルを区別したプロジェクト進行を推奨しています。

デジタルコンタクトセンター

 図4:「真の課題」に辿り着くためのAIプロジェクトの進め方


PoT(Proof of Technology)とは、AIなどの新技術を見たことも使ったこともないので、目的はないがなるべく色々な技術を試してみて比較したい!というときに行う無償のデモやトライアルです。


PoC (Proof of Concept)とは、コンセプトやアイディアが本当に実現できるか、解決したい課題を明らかにしたうえでプロトタイプの技術を試験導入し、概念の実現性を判断したい!というときに行うトライアルです。有償の場合も少なくありません。


PoV (Proof of Value)とは、開発済の製品・技術や仕組みを本格導入する前に、短期的に一部の業務に試験導入してみて、既存の仕組みと優劣を比較し、ROIを検証したい!というときに行う有償トライアルです。

割とよく見かける失敗が、「PoC」のつもりでPoTを繰り返しているパターンです。これは研究開発部門のAIプロジェクトにありがちです。逆に、AI活用を熱心にプッシュする経営層に指示されて、現場が場当たり的にAIを導入し、事前に成功の定義や判断基準を設定しないままPoCやPoVを行っているパターンも見かけます。これらの失敗は、PoTとPoCとPoVの違いを理解せず使い方を間違っているから起きるのです。

本来、技術の内容が不透明で、活用イメージが沸かない場合は、PoTを行い、その過程で足りない知識も補っていけばよいのです。また、実際にやってみてから「真の課題」に辿り着くことも多いので、「真の課題」を見いだせているか怪しい場合はスピード重視でスモールスタートの形でPoCを行い、「真の課題」が明確になったと確信できたらPoVに移行すればよいのです。

このように、PoTとPoCとPoVの3つを正しく使い分け、各フェーズで「3度の失敗」を経験しながらリスクをコントロールし、その反省を踏まえ計画を見直していくというのが、合理的なAIプロジェクトの進め方だと考えます。

問題は、AIプロジェクトの推進担当の根気や熱意が最後まで続くのか、そしてAI活用に懐疑的ないしは拙速な経営層と、度々行われるトライアルに巻き込まれる運用現場が「必ず3回は失敗を繰り返す」ことを許容して、結果が出るまで待つことができるかということです。AI活用に対して意欲を示す人材や、そのようなチャレンジに理解のある企業風土に恵まれず、消えていったAIプロジェクトはきっと山のようにあるでしょう。正直、不憫でなりません。

コンタクトセンターにおけるAIプロジェクトの実践事例

ここで、トランスコスモスが手掛けたAIプロジェクトのなかから、通販におけるLINEメッセージのセグメント配信の最適化事例をご紹介します。

この総合通販会社では、購入を喚起するためにLINEの友だちへメッセージを全配信していたのですが、ムダ打ちが多く、あまりにコストパフォーマンスが悪いという課題を抱えていました。

そこでトランスコスモスは「教師あり機械学習」を活用することで、バラマキ配信ではなく、なるべく「買いそうな人」が「閲覧しそうな時間」に個別セグメント配信したいというコンセプトを提案しました。具体的には、「買いそうな人」に絞ったLINEセグメント配信を可能にするために、機械学習を自動化してくれる特化型AIであるDataRobotを使って、過去の購買/回遊データから「買う人」のパターンを機械学習し、一人ひとりに購買確率スコアを付与する統計予測モデルを構築しました。

DataRobotを活用したことで手軽に未来予測ができたのはよいのですが、それだけでは現場に実装する仕組みとしては不十分でした。というのも、図5にあるように、日々蓄積・更新されるデータを毎回、手動で取り込み、予測モデルをつくり直し、メッセージを配信するというのは大変な作業だからです。一過性の取り組みではなく今後も継続して運用するには、予測だけでなく配信業務全体を自動化する必要がありました。

デジタルコンタクトセンター​​​​​​​

 図5:予測だけでなく自動配信の仕組みも必要


そこで我々は、トランスコスモス独自のDMP(データマネジメントプラットフォーム)である「DECode(デコード)」を導入し、複数のデータベースの統合・加工処理を自動化しました。そしてターゲットセグメントの予測モデルの生成やチューニングは、DataRobotで自動化しました。さらに、独自開発ツールで高確度層に絞ったリストを選定しLINEを自動配信するという独自の業務用ツール「WHITE BASE」を開発しました。

以上の取り組みの全体像を描いたものが図6です。この仕組みは見事に効果を発揮し、従来の一斉配信と比べ4.3倍のROIをたたき出すことに成功しました。

図6:通販|LINEセグメント配信のリスト生成事例


しかし、このプロジェクトには続きがあります。

というのも、この仕組みを運用し続けていくうち、高確度層を狙い撃ちして「焼き畑農業」的に刈り取るだけでは、いつかリストが枯渇してしまうという新たな課題が生じたからです。そこで、高確度層は追加配信などで着実に短期的な売上を刈り取り、逆に低確度層にはクーポンなどで将来の高確度層を掘り起こし、未来の高確度層を育成するという施策を追加投入しました。

さらに、せっかくLINEを配信しても開封・閲覧率が伸び悩むという別の問題も派生して起こりました。そこで購入確率だけでなく「最適配信タイミング」を予測するモデルを構築し、既存の仕組みに追加で組み込みました。その結果配信後2日間でサイト流入1.2倍、購入率3.4倍にすることができました。

この事例のような紆余曲折をたどるAIプロジェクトは珍しくありません。ほとんどのケースにいえるのですが、AIを導入するだけではダメで、課題の見直しや追加を行ったり、人間の手作業で補ったり、BIや自動化ツールなどの周辺システムを開発して運用に落とし込むといった作業が必ず発生するものなのです。AI活用に理解のある企業風土をつくりあげていくには、AIプロジェクトとはそういうものだということを、推進担当者だけでなく経営層や運用現場も認識しておく必要があるのではないでしょうか。

ようこそ、次世代コンタクトセンターの世界へ

本稿でお伝えしたかったことは以下の3点に集約されます。

  1. デジタルトランスフォーメーションに備え、教師あり機械学習などの最新技術を正しく理解し、AIの学習に必要な教師データを蓄積する。
  2. 「課題設定」はあくまでヒトの仕事。PoT/PoC/PoVを正しく使い分け、「真の課題」を突き止めるようなAIプロジェクトの進め方が求められる。
  3. AIの導入だけではダメで、人間の役割や業務プロセス、働き方の見直し、BI/自動化ツールの開発も必要になることがほとんどである。

以上で紹介したような、コンタクトセンターにおけるAIプロジェクトを経験したことがある人に、「AIによって本当にコールセンターが10年後に無くなるのか」と聞いたならば、どのように答えるでしょうか。

重要なことは、音声認識であれ、チャットボットであれ、DataRobotのような機械学習ツールであれ、現状のAIの技術水準ではできるコトとできないコト(ヒトがやるべき仕事)があるという現実を受け止めることです。私は「AIが人間にとって代わる」という考え方は非現実的であり、図7のように、人間が課題を考え、AIに学習させ、作業の一部を代行してもらう協業の形になるのではないかと考えています。

もちろん、異論がある方もいらっしゃるでしょう。ぜひ、あなた自身が実際にAIプロジェクトに参画し、自分なりの答えを導き出していただければと思います。

デジタルコンタクトセンター

 図7:特化型AIには、できるコトとできないコト(ヒトがやるべき仕事)がある


ただし、すべての事業会社がすべての業務において、このようなAIプロジェクトをイチから自社で行う必要はないということも、お伝えしておかねばなりません。

宣伝するわけではないですが、トランスコスモスのようなAIと運用を一体化させたアウトソーシングサービスを利用するという選択も、事業会社としてはアリだと思います。コア業務のAI開発は自前で行い、それ以外はアウトソーシングを活用をするというやり方は、とても賢い戦略ではないかと私は思います。

このように、AI活用の取り組み領域に優先順位をつけ、アウトソーシングを活用するという戦略的思考も、これからの経営層やAI推進担当者には求められるということを提言しておきたいです。

さいごに

「超」人材不足時代を迎えて多様化するワークスタイルと、AIの発展による高度化するテクノロジーに対応し、現代の企業は、そしてコンタクトセンターもデジタルトランスフォーメーションに取り組まざるを得ない状況に直面しています。そうした変革の先にある、次世代コンタクトセンターの世界とはどんなものでしょうか。

AIにより管理・支配されたディストピアのような世界を想像し、未来を嘆く人々も少なくありません。しかし、私はもう少し楽観視しています。AIはヒトの仕事を奪う存在ではなく、むしろAIがヒトに「人間性」を取り戻すきっかけを与えてくれるものだと思っています。

AIに学習させ、AIに支援してもらい、AIと協働することで、人間は本来ヒトにしかできないヒトがやるべき仕事に集中できるようになり、かえって「人間らしさ」をとりもどせるのではないでしょうか。AIを敵視するのではなく、共に働く仲間として受け容れてみてはどうでしょうか。

それは私たち自身の働き方や考え方、心の在り方をデジタルトランスフォーメーションするということに他なりません。そのような意識改革ができたとき、私たちは次世代コンタクトセンターの世界の入り口に立っているのかもしれません。

トランスコスモスがこれからも、そのような世界を目指す皆さまにとって、良きデジタルトランスフォーメーションパートナーであり続けることができれば、たいへん嬉しく思います。


最初の記事はこちら

  次世代コンタクトセンターの世界~第1章:変わりゆく、コンタクトセンターのデジタル活用 | trans+(トランスプラス) コンタクトセンターは今、労働環境の変化とAIなどの最新テクノロジーの登場で大きな変革期を迎えています。デジタル化するコミュニケーションと多様化するワークスタイルがコンタクトセンターの運営・管理に及ぼす影響について考えていきたいと思います。 trans+(トランスプラス)



trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

関連記事:

trans+(トランスプラス)に掲載しているコンテンツや、サイト内で紹介したサービスに関することなど、どうぞお気軽にお問い合わせください。

フォローする:

この記事をシェアする:

人気記事ランキング