【導入事例】東京都が児童虐待のLINE相談窓口開設 ~専用アカウントを試験導入した東京都福祉保健局にインタビュー
東京都は2018年11月1日から14日までの期間、児童虐待の防止を目指してLINEによる悩み相談を実施しました。相談窓口のLINEアカウント名は「東京 親と子の相談ほっとLINE」。東京都は最大10名の相談員を配置して専用アカウントを運用しました。
相談員と相談者がLINE上でやり取りする際に使用したメッセージングツールが、transcosmos online communications株式会社の提供するKANAMETO(カナメト)です。
KANAMETOはLINE@と連携させて、LINEユーザーと1対1のチャットコミュニケーションができるほか、KANAMETOのアンケート機能を使って取得したデータを用いて、属性ごとにあわせたメッセージ配信が可能です。
今回、東京都福祉保健局様へインタビューをして「東京 親と子の相談ほっとLINE」の運用状況やメッセージングツールKANAMETOを利用した感想などを伺いました。
※2023年10月更新
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「東京 親と子の相談ほっとLINE」とは
「東京 親と子の相談ほっとLINE」は、児童虐待を防止するためのLINEを利用した相談窓口です。
QRコードやリンクから東京都のLINEアカウントを友だち登録することで、LINE上でメッセージのやり取りが可能になり、電話よりも利用率の高いLINEを試験導入し、若い世代が気軽に相談しやすい環境を作りました。
虐待相談電話窓口としては、厚生労働省が主催する全国共通ダイヤル189(いちはやく)があり、東京都でも独自の電話相談室を設けています。しかし、2018年3月に目黒区で起こった児童虐待事件をきっかけとなり、小池知事は「よりアクセスしやすい相談体制の確保のためLINEを活用する」と発表しました。
対象は東京都内に住む保護者と子ども。「育児が大変、疲れた」「イライラして子どもを叩いてしまう」などの保護者からの相談だけでなく、また「親からいつも怒られる」「ご飯を食べさせてもらえない」などの子どもからの相談を受け付けました。
東京都は、試験導入期間のデータを集計し検証をおこなった上で、2019年度から本格運用を開始する方針です。
東京都福祉保健局様へインタビュー
「東京 親と子の相談ほっとLINE」の開設・運用について
虐待相談窓口としてLINEアカウントを試験導入した東京都福祉局様へインタビュー。まずは、LINEというコミュニケーションツールを選択した理由や、LINEアカウントを試験運用してわかったことについて質問しました。
――なぜLINEの虐待相談窓口を開設したのか、あらためて教えてください。
東京都福祉保健局:
最近のスマートフォンなどの普及によるコミュニケーション手段の多様化を踏まえ、これまで以上に子供や保護者がアクセスしやすい相談環境を提供する必要がありました。
LINEは、コミュニケーション手段としてのSNSの中で圧倒的な割合を占めていることから、児童虐待相談の新たな相談窓口を開設する上で、最適なツールと考えました。
――SNSという相談環境を提供することで、どのような効果を生むとお考えでしたか?
東京都福祉保健局:
虐待やいじめなどに悩む子供や子育てに悩む保護者が、匿名で気軽に相談できる相談窓口となることを期待していました。子供や保護者から相談いただくことで、虐待を未然に防ぐことを目的としています。
今回の試験導入では、期間中、多くの相談をいただくことができました。
――期間中「東京 親と子の相談ほっとLINE」が対応した相談件数を教えてください。
東京都福祉保健局:
期間中の2週間で「東京 親と子の相談ほっとLINE」対応した件数は、576件でした。
児童相談センターが電話で育児に関するあらゆる相談を受ける「4152(よいこに)電話相談」の対応件数は、同期間で約390件でした。
「東京 親と子の相談ほっとLINE」は、「4152電話相談」の件数と比較して、約180件多くの相談があったことになります。これは本LINE相談がアクセスしやすく、また気軽に相談できるものであると証明されたと考えます。
――電話相談とLINE相談では、相談内容や利用者層に違いはありましたか?
東京都福祉保健局:
利用者層に違いが見られました。「4152(よいこに)電話相談」では、母親からの相談が90%近くあり、3%が父親、児童本人は2.5%にとどまっています。今回のLINE相談は保護者からの相談は8割程度、児童本人からの相談は2割程度だったため、電話相談よりも児童本人からの割合が高いといえます。相談内容については電話相談と特段大きな違いはありませんでした。
「東京 親と子の相談ほっとLINE」の相談内容について
これまでは電話で会話しながら相談者とコミュニケーションを取っていましたが、「東京 親と子の相談ほっとLINE」はテキストベースでのコミュニケーションを測ることになります。その注意点や利点を質問しました。
――相談者とテキストでやり取りをおこなう上で相談員が気を付けたことはありますか?
東京都福祉保健局:
テキスト上の応答であっても、相談者の相談ニーズや相談ペースに応じた対応は必要です。電話応答と同じように、歩調合わせなどの面接技術で相談者が相談しやすい雰囲気を作るようにしました。
――テキストベースでやり取りすることの利点をお答えください。
東京都福祉保健局:
相談者は、自身の相談内容や相談員の応答を文字で確認することができるため、内容を再確認することができます。この再確認という過程は、相談者自身が自らの問題を整理したり、解決の糸口を発見したり、エンパワーメントできる契機となると考えます。
メッセージングツール「KANAMETO」について
「東京 親と子の相談ほっとLINE」へ寄せられた576件の相談に応えた都の相談員が、やりとりに利用したツールが、KANAMETOです。最後に、東京都福祉保健局様にKANAMETOを利用した感想を伺いました。
相談員がやり取りに利用したKANAMETO管理画面のイメージ
――メッセージングツールKANAMETOのUIや機能にご意見があればお願いします。
東京都福祉保健局:
KANAMETOは、同時に複数の相談者からの相談を受け付けることが可能なシステムであり、また相談者の属性(居住地、年齢、相談項目等)などデータを収集できることから、十分、必要な条件を満たすツールでした。アンケートやプッシュ通知の送信など、当初想定していなかった便利な機能があることもわかりました。
――KANAMETOがお役に立ててよかったです。質問は以上です。東京都福祉保健局様、ご協力ありがとうございました。
KANAMETOとは
「東京 親と子の相談ほっとLINE」のメッセージングツールKANAMETOには「KANAMETO PUSH」と「KANAMETO TALK」という2つの機能があります。
顧客属性にあわせたメッセージを配信して、キャンペーンの告知や店舗・ウェブサイトへの誘導を目指したいときには利用するのは「KANAMETO PUSH」。アンケート機能を使用してユーザー属性を取得し、ユーザーに対して能動的にメッセージを送信することができます。
友だち追加時のウェルカムメッセージでアンケートを送信すれば、新規ユーザーを自然な形でアンケートに誘導できます。アンケートでは、性別、住まいなどの基本的な属性情報から、ユーザーの興味関心、あるいはフリーテキストによるユーザーの声まで、多岐にわたる情報収集が可能。アンケート結果から得られた情報は、メッセージ配信時の配信対象のグループ分けに使うことができます。
▼「KANAMETO PUSH」アンケート作成・送付イメージ
ユーザーからの悩み相談や、商品・サービスに関するカスタマーサポートなど、1対1の丁寧なコミュニケーションを取りたい場合は「KANAMETO TALK」を使います。
トーク画面にはユーザーのアンケート回答結果が表示されるので、回答内容を参考にしながら、ユーザーがどのような点に困っているのかを事前に把握した上で相談対応を進めることができます。
また、複数の相談者から相談を同時に受け付ける機能も備わっており、「東京 親と子の相談ほっとLINE」でも活用されました。
▼「KANAMETO TALK」1:1トーク対応イメージ
▼「KANAMETO TALK」1:1トーク対応画面
transcosmos online communications株式会社について
transcosmos online communications株式会社は、2016年5月20日、LINE株式会社(現 LINEヤフー株式会社)とトランスコスモス株式会社の合弁会社として設立されました。2017年10月には株式会社セールスフォース・ドットコムの出資を受けて、3社での合弁会社となりました。
7,600万人以上のMAU(月間アクティブユーザー)を日本国内で抱え、日本の人口の59%以上をカバーし、日本国内の「生活インフラ」として定着したLINE。そこに、かねてより企業のLINE活用に取り組んできたトランスコスモスが蓄積してきたノウハウを発揮させて、新たな「企業と消費者のコミュニケーション・プラットフォーム」を構築し、皆様に提供していくことを目的としております。
KANAMETOの名前の由来ですが、肝心要となるサービスとなることを目指したいという思い、そしてKANAMETOを利用するお客様に対して業務に活用できるメトリクス(metrics, 指標)を提供していきたいという願いから、「カナメ」と「メトリクス」を掛け合わせて「KANAMETO」と名付けました。
“世の中を、より豊かで、より満足感のあるコミュニケーションでいっぱいにする。”
そんな世の中の実現を目指し、これからも活動して参ります。