コンタクトセンターにおける品質管理の課題と解決策とは?! プロが語るポイントを大公開!1/2
企業と顧客の接点が増加するとともに、品質の向上が今まで以上に重要視されるようになってきているコンタクトセンター。
しかしながら、コンタクトセンターの品質向上のためには、抜本的な課題の解決が不可欠であり、なかなか検討できず手を出せていないご担当者様も少なくないのではないでしょうか?
今回はトランスコスモスで10年以上コンタクトセンターの品質改善に携わっている富澤氏と、過去に現場責任者として品質改善に頭を悩ませていた経験のある岩浅氏にお話しを伺います。
まず前編ではコンタクトセンターの品質管理に取り組むにあたっての課題を紐解くとともに、本来目指すべき品質管理についてお伝えしていきます。
※ この記事は、2回に渡ってお届けしております。後編は後日配信予定です。
【インタビュイープロフィール】
富澤 美奈子 2000年にトランスコスモスに入社。 |
岩浅 佑一 2004年、コールセンターのオペレーターとしてトランスコスモスに入社。 |
目次[非表示]
コンタクトセンターの品質とは?また、その評価方法は?
コンタクトセンターにおける4つの「品質」
――そもそも、コンタクトセンターの品質というのは、どのようなものを指しているのでしょうか?
富澤
はい。一般的にコンタクトセンターの品質というと「運用品質」「接続品質」「応対品質」「処理品質」の4つを指すことが多いです。
・運用品質 ・・・ コンタクトセンターのミッション達成のための適切な運用 ・接続品質 ・・・ コンタクトセンターへの繋がりやすさ ・応対品質 ・・・ 適切な言葉遣いで迅速かつ正確に応対ができているか、お客様に満足を提供できる応対ができているか ・処理品質 ・・・ お客様からのオーダーに対して、適切に業務を処理できているか |
2つの「品質」評価方法
――品質管理というと、管理者や担当者の主観で判断されるもののように感じるのですが、これらは実際どのように評価されるものなのでしょうか?
富澤
評価方法については「外部調査機関による評価」と「社内調査による評価」の2つがあると考えています。
外部評価は、HDI-Japan※1、J.D.Power※2をはじめとした、調査を専門としている第三者機関に依頼して評価してもらう方法。
内部評価は、コンタクトセンターを運営している自社で、モニタリング指標を策定し、オペレーターがそれらの指標に対してきちんと業務を遂行できているかをスコア化することで評価する方法です。
※1 HDI公式HP https://www.hdi-japan.com/default.asp
※2 J.D.Power公式HP http://japan.jdpower.com/ja
コンタクトセンターにおける「品質管理」の重要性
「品質管理」はなぜ重要なのか、得られるメリットとは
――なぜ、企業は「品質管理」を重要視しているのでしょうか?品質管理に取り組むことで得られるメリットを教えてください。
富澤
品質をきちんとマネジメントすることで、高い「お客様満足度」を提供することが可能です。
「お客様満足度」が高まることで得られる具体的なメリットは「この会社と長く付き合っていこう」「この会社の商品をもっと買ってみよう」といった、企業や商品に対してポジティブな意見を持ってもらうことによるロイヤルカスタマーの醸成、プロモーター※となるユーザーの創出です。
※Promoter サービスや商品、またはそれらを提供している企業自体を、自発的に周囲に推奨している顧客
逆に、品質管理をおろそかにしてしまった結果、ユーザーの満足を得られないような不適切な応対が発生してしまうと、SNSをはじめとした情報発信ツールでネガティブな印象が拡散されてしまい、企業全体の評判が落ちてしまう、といったリスクもあります。
つまり、お客様窓口の品質管理は「優良顧客の醸成による利益拡大」と「企業イメージに対してのリスクヘッジ」という両側面でのアプローチを担っているため、企業が重要視しているのだと考えています。
他に付随するメリットもあります。品質向上のために必要な教育マニュアルやツールを整備することは、実はオペレーターの意欲向上にもつながっており、マニュアルやツールの行き届いた職場環境が整備されることで、コンタクトセンターで働くメンバーが安心して業務に取り組むことができます。
オペレーターの応対品質が向上するに従って、顧客満足が高まれば、オペレーターがユーザーから直接感謝されることも自然と多くなります。そのようなユーザーとのコミュニケーションもオペレーターのモチベーション上昇に大いに関係しています。品質向上の結果、「ありがとう」という言葉をいただく機会が多くなり、その言葉がさらなる品質向上のためのモチベーションになる、というサイクルは、コミュニケーションが重要な現場であるからこそ、大切にしていきたいですね。
また、先述の外部調査機関から品質を認められて獲得した資格や評価は、TVCMやWebサイトで対外的にアピールできる「目に見える成果」であることから、企業によってはそれらを獲得することを目指したオペレーターの教育を行っている企業もあります。そういった企業では「外部機関モニタリングで〇点以上を取る!」といった具体的で、見える化された目標を掲げて品質改善に取り組んでいることが多いです。
品質管理の取り組みを通して、明確な目標を設定し、正しく評価されることにより成長を実感しやすくなれば、ES※向上にも繋がります。
※ Employee Satisfactionの略。従業員満足
企業が「品質管理」に取り組みづらい理由 本来目指すべき「品質管理」とは?
「品質管理」の前に立ちはだかる課題
――コールセンター白書2018の調査データとして、品質認定やNPS調査について、約半数以上の企業がなかなか取り組めていないという現状が発表されていますが、先程教えていただいたメリット・デメリットのある中で、なぜまだまだ取り組めていない企業が多いのでしょうか?
岩浅
いざ品質マネジメントに取り組もうとした場合でも、社内メンバーごとに品質についての認識や重要視するポイントが異なっていると、どうしても時間と手間がかかってしまいがちです。特に品質向上というのは、カタチの無いサービスですので、「結果や成果を実感しづらい」ということもあり、そういった取り組みに対してコストやリソースをかけることが難しい、という現実的な課題が考えられますね。
リソース管理に腐心した、センター長時代を思い出し、遠い目をする岩浅氏
富澤
もう一つ考えられる理由としては「生産性とのバランス」ですね。これは、コンタクトセンターの品質管理という考えが広まり始めたころからの永遠のテーマとなっています。
ユーザーからの問い合わせを高い応答率で、できるだけ多く対応していくことと、丁寧で気配りの行き届いた応対品質をキープすることは、相反するものとして考えられることも少なくありません。
岩浅
過去の品質管理の考え方では、あいさつや言葉遣い、ルールやマナーなどの「丁寧さ」が極度に重視されており、どうしても応対に時間がかかってしまうことがありました。
ただし、コンタクトセンターの業界研究が進んだことで本来目指すべき品質管理の考え方が広まりつつあります。それが、「顧客満足」を念頭に置いた「適切なコミュニケーション」を重視することで、お問い合わせ全体がスムーズに進み応答時間をかえって短縮できるのではないか、という考え方です。
・過去の品質管理 ┗過剰なルールやマナーを徹底し、「クレーム回避」を重要視 ・本来目指すべき品質管理 ┗顧客視点を鑑みた適切で柔軟なコミュニケーションによる、「顧客満足」を重要視 |
本来目指すべき「品質管理」の考え方
富澤
特にここ数年、当社にお問い合わせいただく品質向上のご依頼では「ユーザー目線」「ユーザー視点」をキーワードとした品質管理を求められることが多いですね。
岩浅
50%以上の企業が品質管理に取り組めていない、という数値は出ているものの、どの企業も「品質が悪くても構わない」と考えているわけではないと思います。しかし、先述のような課題が障壁となり、なかなか自社だけでは取り組みにくい分野であることも確かです。そのような事情がある中で、我々はアウトソーサーとして、どの企業も品質管理に取り組みやすくなるようなサービスやソリューションを提供していきたいと考えています。
後編では、長年コンタクトセンターの立ち上げ・運営を行ってきたトランスコスモスが品質向上のために取り組む施策について紹介します。