デジタル社会をどう生き抜くか――日本初のCDO 長瀬次英氏が語るこれからの働き方

デジタル社会をどう生き抜くか――日本初のCDO 長瀬次英氏が語るこれからの働き方

日本初のCDO(チーフデジタルオフィサー)として、常に最高の顧客体験を考える長瀬次英氏。デジタル化によりこれからのビジネスはどうなるのか?一緒に働く仲間や顧客との付き合い方は?あらゆる情報が得られるようになったからこそ大事にしたい原点とは?デジタル社会で活躍する3つのポイントをトランスコスモスの社内大学プロジェクト「トランスコスモスカレッジ」で語った。

長瀬 次英 氏
1976年京都生まれ、中央大学卒。インスタグラム日本事業責任者、日本ロレアルのCDO、株式会社LDH JAPANのCDOを担い、この10月に自身の会社PENCIL&PAPER㈱とVisionary Solutions㈱ を立ち上げた。同時にブランディングビジネスで有名な柴田陽子事務所にてCSO(最高戦略責任者)を担い、またBORDERS at BALCONYというアパレルブランドのCEO等を担い真のパラレルキャリアを実践している。登壇しているセミナー等は数多く、史上初2年連続アド・テック東京(2017&18)で#1スピーカーを受賞。他にも2018年1月に「Japan CDO of The Year 2017」を受賞。Forbes・Japan(2017年12月号)にて「カリスマCxO」の一人として特集される。常に、新しいかつ時代にあったビジネスモデルの構築とサラリーマンの無限の可能性を模索している。

ポイント① ビジネスシフトに対応できる人材になる

講演当時LDHジャパンでCDOを務めていた長瀬氏。人気アーティストを多数マネジメントする芸能事務所でありながら、そのビジネスは飲食やアパレル、スクール運営など多岐に渡る。ひとつの業種や業態にこだわらないチャレンジングな企業だが、このようなビジネスシフトはあらゆる業界や企業で起きているという。

長瀬氏「まずデジタルな世界で何が起こるかというと、企業が生き残るために次々とビジネスシフトが起こると考えています。皆さんがいきなり新しい業種や業態をやれって言われる時代は、もうすぐそこに来ていると思うんですよね。そこに対して何をそなえていくかがポイントになります」

長瀬氏自身は、これまでの転職でまったく異なる業界や業種を経験したことによりビジネスシフトに柔軟に対応できていると語る。一見転職すべきとも聞こえる話だが、どうやらそれだけが解決策ではないようだ。

長瀬氏「皆さんに転職してくださいって話じゃなくて(笑)ここはマインドセット、考え方次第でどうにでもなります」

マインドセットが変われば、ポジションを変えることなく、どこにいても自身の視野を広げることはできる。自分の周辺はもちろん、遠いところまで理解するその姿勢がカギ。

長瀬氏「どれだけ外の会社を気にすることができるか、競合やグループ会社だけでなく、全然違う業界でも”こういうビジネスが流行っているんだ“というものを見ているか。そこからさらに、自社にもこれだけアセットがあるから新しい市場に進出できるかもしれないと気づく。そういう目を持っていることが大事です。これには職務経験や現在のポジションは関係ありません。もちろん、自社についてよく理解していなければいけないですが、全部を見られるポジションだからということではなく、全部を考えられる”マインドセットがあるか”が重要なんです」

キャリアやポジションにかかわらず、垣根を超えて想像する力。そして自分だったらどうするかを考えられる力。まずはそんな多角的な視点を持つことが、デジタル社会で起きるビジネスシフトに対応する第一歩になる。

ポイント② ランゲージを身に着けてコミュニケーション能力を磨く

“CDO”という仕事は様々な人をつなぐ仕事だという。”マーケティング”というバックボーンを持ち、そこでプロフェッショナル性を発揮する長瀬氏は自身の分野を例にこう話す。

長瀬氏「あるメーカーでマーケティングやセールスが加速し、ひとつのヒット商品が出たとします。そうするとあらゆるファンクションに変革が起こりますよね。商品を販売する店舗スタッフの人数や店舗数、商品を届ける流通システムや製造工場。さらには情報の発信方法、PRも変えなければいけない。人の手でまかなえないことはデジタルで解決していく必要もあります。外部のビジネスパートナーも含め、それらを理解して指揮することが求められるんです」

マーケティングが加速すると影響範囲は会社全体に及ぶ。そうすると、もちろんすべてのファンクションと会話をする必要がある。各部門・部署とのコミュニケーションをスムーズに進めるためには「共通言語」を見出さなければならない。

長瀬氏「例えばフランス人の上司と日本人の自分。お互い英語でコミュニケーションが取れたとしても、相手が日本語を喋れたらもっと理解が深まりますよね。同じように、エンジニアが使うコードを理解して、彼らが作るもの、そして彼らの気にするポイントがわかれば、ずっと話しやすくなります。これが共通言語とコミュニケーション能力が必要な理由です。ただ、これは今の世の中において、CDOだけに必要とされる資質ではないと考えています」

CDOだけに必要とされる資質ではない…その発言はビジネスの根本に深く関係していた。長瀬氏がもっとも重要だという「人」の存在だ。

長瀬氏「どんなビジネスでも動かすのは人なんですよ。人と人が協力してビジネスを動かしていく。だから、一緒に働く相手の仕事に興味を持って、知る努力をしなければいけないんです」

長瀬氏はこれまでに、KDDI、ユニリーバ・ジャパン、フェイスブックジャパン、日本ロレアル、直近ではLDHジャパンなど名だたる企業を渡り歩いてきた。その中で言語を理解するためには、社内ネットワークが欠かせないと感じたという。大事な情報を握っていて、新しい言語を教えてくれるキーマンという存在がいる。そのキーマンを見つけるためにも、いろんな部署の人を知り、社内ネットワークから様々な情報を手に入れる。そういう泥臭い人間力、そしてそこで知りえた情報を使って相手と円滑に話を進める言語力こそ、逆にデジタル社会では必要になるのだ。

ポイント③ リアルな顧客を理解する「現場ファースト」

人に興味を持つというのは、なにも社内に限った話ではない。人間関係の構築は顧客においても同じだ。対面でその瞬間、顧客が何を考えているかを知る必要があるという。

長瀬氏「僕は“顧客”から”個客”という考え方になってくると思います。例えば、シワがなくなるクリームができたとして、あたかも女性みんながシワを消したいと思っているかのように売るのが、これまでのマスマーケティング。確かにシワを消したいかもしれないけど、全員が全員そうではないんですよね。今までは相手を詳しく知らないからそうするしかなかったんですけど、今は違います。インスタグラムなどのSNS上からもお客様の声がすぐわかります」

この話からも、メーカーはプロダクトアウトからカスタマーセントリシティに移らなければならない時を迎えているとわかる。

長瀬氏「カスタマージャーニーって作りますけど、そのカスタマージャーニーに乗っかって商品を買う人ってほとんどいないですよね(笑)」

カスタマージャーニーが大事な時もあるとしながら、やはりこれからはユーザーの声をいかにリアルタイムに拾い上げることができるかが重要だと話す。

長瀬氏「人間はその時その時に感覚や感情によって判断しています。AとBの同じジャンルのお店が並んでいて、なぜAに入ってBに入らなかったかと聞くと、たまたまドアが開いてたからといった回答や、冷房がきいていたからという回答がでてくるんです。つまり、カスタマージャーニーとは全然関係のないところで決めています」

このように、顧客を知るためには現場を知らなければならない。

長瀬氏「お金が発生するリアルな場所、現場で何が起きているか、店舗があるならその店舗ですし、Webサービスやアプリなら、ユーザーがその画面を開いている瞬間です」

実際に日本では現場のデータがまだ少ないという。なぜその商品を手に取って購入したか。その時の天気や気温だけでなく、空調の温度や照明の様子、店内の混雑状況など、あらゆるものがモーメントを知るデータだ。これらをユーザーの状況と組み合わせて加工し、ユーザーが悩んだり考える瞬間を導き出す。
このように”顧客ファースト”から今後は”現場ファースト”に移り変わっていくと話す。

長瀬氏「人を知るってことが常にチャレンジとなっていて、目の前にいる人を知ることがこのデジタルの世界を生き抜くことの第一歩になるんじゃないかなと思っています」

デジタル社会というとテクノロジーを通じた見えない相手とのかかわりを想像するが、実際には対面で顔や表情を見ること、そして”現場”でコミュニケーションすることが重要。つねに「人」と、そして「現場」の熱量を知ろうとする姿勢をもつ必要がある。

最後に長瀬氏は「相手が今何を望んでいてどういったエクスペクテーションがあるかを知った上でサービスしたほうが絶対に喜ばれる。そういったデジタルの世界に生きていることを意識した方が、仕事でも人間関係でもうまくいくと思いますよ」と締めくくっている。

 

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