【ついに突入!】ポストコロナ時代を戦い抜くために振り返る、2019年度のインターネット広告業界まとめ
2020年4月7日、日本では新型コロナウイルス危機に際して「緊急事態宣言」が発令されましたが、およそ1ヶ月半を経た5月25日、ついに解除される事となりました。
"不要不急の外出自粛"をはじめとした高い緊張状態からは開放されたものの、コロナ危機そのものはワクチンの登場で完全に終息しない限り、第2・第3波の到来を否定できない状況です。
ハーバード大学公衆衛生大学院の研究者によると「2022年まで、長期または断続的な社会的距離(Social distancing)政策が必要になるかもしれない」との推測もあります。【参考】
したがって、緊急事態宣言が解除されても完全な形で「Beforeコロナ」に戻る事は難しいと言わざるを得ませんが、一方で「Beforeコロナ」から変わらないものとは何なのでしょうか。
2020年3月、電通より発表された「2019年 日本の広告費」によると、「Beforeコロナ」期にあたる2019年、日本の総広告費は8年連続でプラス成長。インターネット広告費は6年連続の二桁成長でついにテレビ広告費を超え、2兆円規模となりました。
加えて、かねてより好調だったインターネット広告領域に、「TVer」などマス4媒体由来のデジタル連携が加わって勢いを増し、またオフライン領域もサイネージ化やオリンピック特需などによって成長。それぞれの領域が成長を続け、総広告費全体を押し上げました。
コロナ危機に直面した「Withコロナ」期には6割以上の企業で広告宣伝費が減少。特に外出自粛に伴うイベント中止に伴うオフライン領域に大きな影響がありました。【参考】
一方で、若年層にテレビ視聴の伸びが見られるなど、オフラインメディアとの接点に新たな動きが見られたとの調査もあります。【参考】
さて、コロナと人間との共存期にあたる今、すなわち「ポストコロナ」期において、2019年度までに積み上げられてきた広告業界は何が変わり、何が変わらないのでしょうか?
新しい時代を戦い抜くヒントを探るべく、2019年度インターネット広告業界のニュースを改めて整理していきましょう!
※2024年2月更新
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市場の成長
日本の広告費によると、2019年のインターネット広告費は2兆1,048億円(前年比122.9%)にのぼり、背景には大型プラットフォーマーを中心とした堅調な伸びがありました。まずはプラットフォーマー各社の動向から振り返ります。
・インターネット広告
GAFA (Google・Facebook・Amazon・Apple)
世界最大級の証券取引所であるニューヨーク証券取引所が扱う「米国株 時価総額ランキング」によると、2020年5月14日現在、ベスト10位以内には「GAFA」がすべてランクインしています。順位に関しては去年4月時点から大きな変動はありませんでした。
▲米国株 時価総額ランキング (2020年5月22日現在) 【参考】
12月時点の報告によると米国の検索広告市場シェアの73.1%をGoogleが占め、依然としてシェア独占状態にありますが 、 “ショッピング”を軸に変動の兆しが見えはじめました。
6月、Amazonのブランド価値がGoogle・Appleを抜いたとの調査報告を皮切りに、7月には「ファッション情報」を調べる方法でInstagramがGoogleを抜き、12月にはAmazonが米国の検索広告市場シェアを12.9%まで伸ばした(前年比 約30%増)との見通しが報告されました。
なお、2021年にはAmazonの市場シェアは15.9%に拡大する一方、Googleのシェアは70.5%に低下すると予想されています。
2019年6月
2019年7月
2019年12月
これを受け、Googleは『ショッピング画像広告の提供範囲拡大 (3月)』、『ショッピング広告の配信面をYouTubeホーム画面とYouTube検索結果画面へ拡大 (11月)』など、ショッピング関連のアップデートに力を入れています。
2月、アルファベット社は2019年の決算報告で初めてYouTubeの広告売上を発表しました(売上高は150億ドル)。2020年5月現在、YouTubeユーザーは全インターネット人口の約三分の一もの20億人を超えるそうです。
コロナ危機によって外出制限がかかり、世界的にEC・動画需要が伸長傾向にある昨今、今後GAFA各社のEC・動画関連の施策は特に様々なアップデートがかかってくるのではないでしょうか。
2019年12月
2019年12月
2020年2月
Yahoo!×LINE
それぞれ国内最大級のユーザー数を誇るYahoo!・ LINEですが、9月にZホールディングス社(現 LINEヤフー株式会社)がZOZOを買収、11月にはYahoo!とLINEが経営統合し、それぞれ大きな話題を呼びました。
日経新聞の記事によると、これらは人々の生活全般にかかわるサービスを提供する「スーパーアプリ」としてのポジション確立に向けた動きと見られています。
BtoB領域で目立ったのは、Zホールディングス社(現 LINEヤフー株式会社)のデータ連携とインタラクティブ性を活かした動きの一つとして、LINE広告でLINEアカウントの「友だち」を広告配信に活用する「クロスターゲティング」が提供開始された事です。
このようなZホールディングス社(現 LINEヤフー株式会社)が提供するサービスで収集したデータを、横断的に活用するプロダクト開発の動きは要注目です。
2019年9月
2019年11月
2019年12月
TikTok
TikTokは2019年11月には全世界で15億ダウンロードを、その5ヶ月後の2020年4月には20億ダウンロードを突破し、猛烈な勢いで存在感を増しています。2019年度の主要な動きとしては、大手レーベルとの提携による音楽体験の強化や、EC機能のテスト実装(海外)を行うなどユーザーの生活に根ざすサービス拡充を行いました。
また3月には『Society 5.0 for SDGsの実現への貢献、日本の社会課題の解決への寄与、日本経済活性化に向けた活動への参画』を目的に、TikTokを運営するByteDanceが経団連に加入し、日本国内での影響力拡大に向け着実に動きを進めているようです。
2019年6月
2019年8月
2020年2月
2020年3月
オフライン⇔デジタル広告
日本の広告費によると、マス四媒体由来のデジタル広告は、民放公式テレビポータルアプリ「TVer」などのテレビメディアデジタルや、スポーツコンテンツのライブ・ハイライト配信などのプロモーションメディアが伸長し、715億円(前年比122.9%)、屋外広告はアナログ看板からデジタルサイネージ・屋外ビジョンへのシフトにより3,219億円(前年比100.6%)、交通広告は車内・駅構内のデジタルサイネージ、特にタクシー広告が伸長し2,062億円(前年比101.8%)でした。
▼マス四媒体由来のデジタル広告
2019年6月
2019年11月
▼屋外・交通広告
2019年11月
2019年11月
コロナ危機下においては外出自粛のため交通広告などのオフライン施策は一時的に厳しい状況にありますが、若年層にテレビ視聴の伸びが見られるなど、オフラインメディアとの接点に新たな動きがあります。
コロナ危機下における接点を、状況と照らし合わせながら見定め、オフライン施策をオンラインでいかに表現するか模索していきたい所です。
市場の健全化
海外:プラットフォーマーによる機能制限/Cookie規制
2018年はこれまでの個人情報保護に対する世論の高まりを受け、5月にGDPRが施行されるなど様々な規制が発効されはじめた年でした。これを受け、2019年、GAFA各社は続々とポリシーを発表していきます。
まず2019年3月に、Facebookが「性別や人種、郵便番号などをもとに配信先を絞り込めなくする」機能制限を、8月にはAppleが続き、Safariにおけるトラッキング防止策の強化を発表しました。
2019年3月
2019年8月
そして2020年1月1日、米国カリフォルニア州のプライバシー法(CCPA)が正式に発効されました。CCPAとは州レベルの法律で、生活者の知る権利に比重が置かれ、生活者から預かった情報を適切に管理・運用していくことが求められる、というものです。【参考】
2020年1月
1月14日、ついにGoogleは「Chrome」で収集したcookieデータの企業に対する提供を2022年までに段階的に止めると発表。続けて22日、同社はネット利用者のプライバシーを重視した新技術の開発を進めると発表しました。
2020年1月
2020年1月
プラットフォーマーが様々な機能制限をかける中、各社はコンテンツの文脈を元にターゲティングする「コンテキスト広告」に注目したり、DX施策を進めていくなど、Cookieに代わる技術を用いた広告手法を模索しています。
Cookie問題はコロナ危機によって風化する事は考えにくく、オンラインでのタッチポイントが増えている今はむしろ、将来に備えて”脱Cookie”準備を整えていく事が肝要かと思います。
日本:企業コンプライアンスへの追求
海外同様、日本でも個人情報保護や企業コンプライアンスへの意識の高まりを背景に、様々な動きがありました。
対GAFA
10月、Cookieや位置情報を利用者の同意なく収集して利用すれば独占禁止法違反になる恐れがあるとし、規制する方向で公正取引委員会を中心に調査が進みました。
11月、プラットフォーマーとの公平な関係を保ち、日本の広告業界を健全化する事を目的としJAAが「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言」を発表。
そして1月、日本新聞協会が「市場の寡占やデータの独占を背景に取引構造がブラックボックス化する状況は巨大プラットフォームの問題点」などの指摘を意見書として提出。
3月にはいよいよ、日本版GDPR/CCPAといえる「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定しました。
2019年10月
2019年11月
2020年1月
2020年3月
なお、Google・Facebookはシンガポールなどの低税率国・タックスヘイブンで売上高を計上する事で納税額を過小におさえているとして各国より追求を受けていました。
それを受け9月、フランスでGoogleが1150億円を支払う事で和解しました。この捜査は2016年より続いており、Googleは長引けば企業イメージの悪化につながるとみて和解を選んだようです。
そして12月、Google・Facebookは日本でも「広告事業の売上高を日本法人に直接計上する」との方針を固めています。
2019年12月
大手プラットフォーマー以外の市場動向
日本のインターネット広告市場で5月に発表された2018年度 PR業実態調査によると、「インフルエンサー活用などのソーシャルメディアコミュニケーション」の伸長率は66%と他項目と比べ最大となり、インフルエンサー活用は今、勢いのあるPR手法の一つであると言えます。
しかしながら、宣伝であることを隠してPRする”ステルスマーケティング”がインフルエンサーから行われたとし、10月に京都市が、12月に『アナと雪の女王2』が相次いで騒動となっています。
また、8月、リクルートキャリア社が学生のサイト閲覧履歴などを「リクナビID」に突合し、それを基に内定辞退の指標を顧客企業に提供する、つまり個人情報を第三者提供していたとして大きく報じられました。
2019年5月
2019年8月
2019年10月
2019年12月
コロナ危機に際し、4割以上が「良くも悪くも企業SNSの見方が変わった」と考えるようになったとの調査や、EC市場で「応援消費」が伸長しているとの調査も出ています。
企業活動が倫理的に正しいかどうかについて、今まで以上に厳しい顧客の目が向けられている事実には留意が必要です。
まとめ
2019年、GAFA・TikTokはEC・動画を中心にサービス拡充を行い、Zホールディングス(現 LINEヤフー株式会社)は「スーパーアプリ」構想に基づきZOZO・Yahoo!・LINEの合併をはじめ様々なアプリを展開。市場規模の拡大にともない、日本のインターネット広告費は2兆円規模となりました。
そんな中でGAFA内部での市場シェアの序列構造に変化が見え始めたのは特徴的で、その背景には各社の企業努力はもちろんの事、日本を含む各国のGAFA包囲網の影響がありました。その根底には「生活者の個人情報保護への意識の高まり」がある事は念頭に置いておかねばなりません。
生活習慣が一変したポストコロナ時代において、生活者と企業の接点創出に「オンライン」という場が今まで以上に重要な鍵になるのは間違いないでしょう。
昨今は特に、生活者は企業の正しいあり方をよく見る意識を強めています。疫病・災害・新規テクノロジーの進化などにより、将来の予測が困難な”VUCA”時代においては、「人々が何を考え・どう暮らしているのか」という基礎に立ち返り、ついに突入したポストコロナの“新しい時代”を戦い抜いていきましょう!
2018年度まとめはこちらから!