自治体が着実にDXに取り組むための『自治体DX全体手順書』とは

2021年7月7日総務省は「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定し、自治体DX推進のヒントとなる「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会」の内容をとりまとめた資料を公開。本記事では資料のなかから、『自治体DX全体手順書』の概要についてお伝えする。

※DX推進指標の概要についてはこちらから『自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)~2025年までにおきること~

参考:「自治体DX推進手順書」の作成


目次[非表示]

  1. 自治体DX推進手順書の趣旨
    1. 【自治体DX推進計画 概要】
      1. 1.自治体におけるDX推進の意義
      2. 2.自治体DX推進計画策定の目的
      3. 3.推進体制の構築
      4. 4.重点取組事項
      5. 5.その他の取組事項
  2. DX推進のために必要な手順
    1. ステップ0:DXの認識共有・機運醸成
    2. ステップ1:全体方針の決定
    3. ステップ2:推進体制の整備
    4. ステップ3:DXの取組みの実行

自治体DX推進手順書の趣旨

自治体の各施策について重点的に取り組むべき事項・内容と、総務省・関係省庁による支援策等をとりまとめた「自治体DX推進計画」が2021年7月7日に総務省のホームページにて公開された。

具体的には、各自治体における情報システムの標準化・共通化や、行政手続きのオンライン化などの重点取組事項が自治体DXを効果的に推進するための方策として掲げられている。

しかし、自治体によっては体制が整っておらず取組みを開始するまでに時間がかかる、何から始めれば良いか分からない、自分たちの環境に最も適した方法を知るといった課題への対処をする必要があるため、「自治体DX推進計画」をヒントにAIやRPAの利用推進、テレワークの推進などの施策を進めていくことが自治体DX実現への近道となる。


【自治体DX推進計画 概要】

1.自治体におけるDX推進の意義

新型コロナウイルス対応において、様々な課題が明らかとなったことから、デジタル化の遅れに対して迅速に対処するとともに、「新たな日常」の原動力として、制度や組織の在り方等をデジタル化に合わせて変革していく、言わば社会全体のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が求められている。

政府が示す目指すべきデジタル社会のビジョン「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」の実現のためには、住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市町村の役割は極めて重要であり、各自治体においては、まずは自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させるとともに、デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていくことが必要とされる。

さらに、データが価値創造の源泉であることについて認識を共有し、データの様式の統一化等を図りつつ、多様な主体によるデータの円滑な流通を促進することによって、EBPM等により自らの行政の効率化・高度化を図るとともに、多様な主体との連携により民間のデジタル・ビジネスなど新たな価値等が創出されることが期待される。

2.自治体DX推進計画策定の目的

自治体の情報システムの標準化など、デジタル社会構築に向けた各施策を効果的に実行していくためには、国が主導的に役割を果たしつつ、自治体全体が足並みをそろえて取り組んでいく必要がある。

そのため、総務省は「デジタル・ガバメント実行計画」における自治体関連の施策について、自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化するとともに、総務省及び関係各庁による支援策等をとりまとめた「自治体DX推進計画」を作成。

3.推進体制の構築

・組織体制の整備(全庁的・横断的な推進体制)
・デジタル人材の確保・育成
・計画的な取組み
・都道府県による市区町村支援

4.重点取組事項

・自治体情報システムの標準化・共通化
・マイナンバーカードの普及促進
・行政手続のオンライン化
・AI・RPAの利用推進
・テレワークの推進
・セキュリティ対策の徹底

5.その他の取組事項

<自治体DXの取組みとあわせて取り組むべき事項>
・地域社会のデジタル化
・デジタルデバイド対策

<その他(※デジタル・ガバメント実行計画記載の事項)>
・BPRの取組みの徹底(書面・押印・対面の見直し)
・オープンデータの推進
・官民データ活用推進計画作成の推進


推進体制の構築、重点取組事項についての詳細は『標準ガイドライン群』や『自治体DX推進計画概要』を参考にすると良い。

DX推進のために必要な手順

総務省は自治体DXの推進にあたり、これから施策を実行するにあたり大きく分けて4つのステップが想定されるとしている。


ステップ0:DXの認識共有・機運醸成

「DXの認識共有・機運醸成」はDX推進の前提となるものであり、取組み期間を通して継続する必要があるため、ステップ0と表現する。

「デジタル・ガバメント実行計画」では、行政サービスについて単に新たな技術を導入するのではなく、デジタル技術やデータを活用し、利用者目線での業務の効率化・改善等を行うとともに、行政サービスに係る住民の利便性の向上につなげていくことが求められる。

また、「デジタル社会形成基本法」の基本理念に則り、国との適切な役割分担を踏まえて、その自治体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、実施することが重要視される。

そのためには、首長や幹部職員によるリーダーシップや強いコミットメントが必要であり、「DXとはどういうものか」「なぜ今DXに取り組む必要があるか」など基礎的な共通理解を初めに形成することが不可欠になる。

利用者中心の行政サービスを提供し、プロジェクトを成功に導くためには下記のサービス設計12箇条を念頭に施策を進めるのが重要である。


<サービス設計12箇条>

第1条 利用者のニーズから出発する
第2条 事実を詳細に把握する
第3条 エンドツーエンドで考える
第4条 全ての関係者に気を配る
第5条 サービスはシンプルにする
第6条 デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める
第7条 利用者の日常体験に溶け込む
第8条 自分で作りすぎない
第9条 オープンにサービスを作る
第10条 何度も繰り返す
第11条 一遍にやらず、一貫してやる
第12条 情報システムではなくサービスを作る


【参考】DXの認識共有・機運醸成のための取組事例


ステップ1:全体方針の決定

DX推進のための取組みを効果的に実施するためには、全体的な方針が決定されている必要があり、広く自治体内で共有されることが望ましい。

「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」において、目指すべきデジタル社会のビジョンは「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」とされており、実現のためには特に以下のポイントを意識する必要がある。


・行政サービスについてデジタル技術やデータを活用し、住民の利便性を向上させるとともに、デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていくこと

・ データの様式の統一化等を図りつつ、多様な主体によるデータの円滑な流通を促進することによって、EBPM等により効率化・高度化を図るとともに、多様な主体との連携により民間のデジタル・ビジネスなど新たな価値等が創出されること


各自治体はシステムの標準化について、対象事務の処理に係る情報システムについて国が定める標準化基準に適合する必要があり、全国的なクラウド環境の整備状況を踏まえつつ、「ガバメントクラウド」の構築に向けて取組みを進める必要がある。

これによりシステム調達等の業務に係る人的コストの削減や、カスタマイズの抑制等により、システムの導入・維持管理や法令改正対応に係る費用の削減が期待される。

また、行政手続のオンライン化実施に取り組むことが努力義務とされているほか、2022年度末には業務効率化とともに、デジタル化による利便性の向上を住民が早期に享受することができるよう、全ての国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指し、原則、全自治体で国民の利便性向上に資する手続き(参考:自治体の行政手続オンライン化について)については、マイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続を可能にすることとしている。


これらの実現のためにも、システムの標準化等とオンライン化は、単に新たなシステムの導入や更新をするだけではなく、行政サービスに係る受付・審査・決裁・書類の保存といったバックオフィスを含む一連の業務をデジタル化できるよう、業務内容や業務プロセス、組織体制を含めて抜本的に見直し、再構築することが求められる。

これによりシステム調達等に従事していた職員を、企画立案業務や住民への直接的なサービス提供など、職員でなければ真にできない業務に振り向けることが可能となり、住民サービスの質の向上に寄与することが期待できる。

今後、個人情報保護に関する法律の一元化等を通じて、制度面でのデータの流通基盤が整備されれば、情報システムの標準化等、マイナンバーカードの普及促進と相まって、自治体におけるデータ活用の可能性が拡大する。

これによりデータを駆使した住民ニーズに即したプッシュ型の行政サービスなど、住民目線の新たなサービスの実現や、行政が保有する様々なデータを、国民・企業が活用するためのデータ連携基盤を提供し、民間における様々なデジタル・ビジネスの創出や官民連携による新たな価値の創出など、地域社会のデジタル化のための基盤を構築していくことが期待される。


【参考】デジタル化の進捗状況を確認する際の視点

■組織体制、人材育成の状況
・ 既存の情報政策に係る方針等の有無・その内容
・ 情報政策担当部門の体制・業務
・ 情報政策に係る人材の育成

■業務プロセスのデジタル化の状況
・ ペーパーレス化
・ 電子決裁システム
・ 書面・押印・対面の見直し
・ 行政手続のオンライン化 等

■業務環境のオンライン化の状況
・ 個人用のパソコン端末の配備状況
・ コミュニケーションツール(メール、チャット、WEB会議等)の導入・利用状況
・ セキュリティ対策の状況 等


【参考】DX推進計画等における取組目標時期と工程表


ステップ2:推進体制の整備

DX推進を成功させるためには、組織・人材の両面から体制を整備する必要がある。

組織については全庁的・横断的な推進体制を構築することが求められ、積極的にデジタル技術やデータを活用した自治体行政変革の司令塔となるDX推進担当部門を設置したうえで各部門が緊密に連携する体制を構築することが重要である。

ただし、従来の情報政策担当部門が担ってきた情報システムの構築・維持管理に係る業務や情報セキュリティに係る業務とは異なるものであり、情報政策担当部門が担ってきた業務は引き続き適切に実施する必要があること、DX推進担当部門の役割・業務の重要性を踏まえ、DX推進担当部門は情報政策担当部門とは別に設けることが望ましい。

人材についてはデジタル人材の確保・育成が求められ、自治体の各部門の役割に見合ったデジタル人材が職員として適切に配置されるよう人材育成に取り組むとともに、十分な能力・スキルや経験を持つ職員を配置することが困難な場合には、兼務などの職員配置上の工夫を行うほか、必要に応じて、外部人材の活用や民間事業者への業務委託なども検討する必要がある。


デジタル技術やデータの活用が当たり前となる業務に対応するために、デジタルリテラシーの向上、日々進展するデジタル技術等を学び続け、自らの業務をよりよいものに変革していくためのマインドセットの習得を求められ、DX推進担当部門や情報政策担当部門などに配置される職員は、一般職員よりも高度なデジタル技術等の知識、能力、経験等を身につける必要がある。

経験を身につける方法としてはOJT(On the Job Training)にて日々の業務を遂行しつつ、デジタル技術やデータの活用に必要となる実務知識や応用力・課題解決力などの実践的なスキルを身につけたり、OFF-JT(Off the Job Training)といった職場や業務から離れた研修の活用も検討すべきだ。

例えば栃木県では、「DXの推進に向けた職員研修の実施方針」を策定し、知事、副知事、部局長、一般職員、各所属のDX推進員ごとに、研修目標や内容を設定するとともに、市町の職員等にも研修を実施している。

外部の人材を配置する際には、業務経験に加えて応募者のICTスキルを客観的に把握するために、IPAの情報処理技術者試験合格を応募条件とすることや、IPAが策定するシステムユーザースキル標準(UISS:User’s Information Systems Skill Standards)を活用して要求するスキルを示すことが有効である。


【参考】市町を巻き込んだDX推進に向けた職員研修事例


【参考】UISSのキャリアレベル一覧


ステップ3:DXの取組みの実行

実際にDXの取組みを実行するには、PDCAサイクル等による進捗管理により、適時かつ柔軟に取組みを見直していく必要がある。その際、スピーディーな意思決定が求められることも多くなるが、こうした場合には「OODA(ウーダ)ループ」のフレームワークを活用することが効果的である。

「OODA」とは、「Observe(観察、情報収集)」「Orient(状況、方向性判断)」「Decide(意思決定)」「Act(行動、実行)」の頭文字をつないだ言葉で、意思決定プロセスを理論化したもの。PDCAと異なり、計画を立てるステップがないためスピーディーな意思決定を行うことができる。

現在、各都道府県は域内市区町村と協力し、連絡調整や情報交換の場の開催、研修、ICTの専門家の派遣などの人的・技術的な支援とともに、自治体クラウドの推進、電子申請サービスやAI・RPAの共同利用の推進、自治体情報セキュリティクラウドなどのセキュリティ対策に取り組んでおり、こうした取組みに関する最新の情報を常に収集することも重要だ。


【参考】都道府県と市区町村の協働、都道府県による市区町村支援の事例


なお、「自治体DX推進手順書は、国の取組みの進捗等を踏まえて適宜見直すこととする」とされているため、今後の改訂等は引き続き注視する必要がある。

自治体DXに関するその他の記事はこちらから


trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。
 

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