catch-img

日本のコンビニはAmazon Goになりうるか?「日本版Amazon Go」無人決済店舗の現状と課題

日経トレンディが選んだ2019年ヒット予測ランキングは、皆さんの記憶に新しいのではないでしょうか。次のヒット商品やサービスを予想するこの年末恒例ランキングイベントで、画期的な技術によって社会の常識を変えるとして、「日本版アマゾンGO」が4位に選ばれました。

本コラムでは、日本版Amazon Goについて現状と課題を考察していきたいと思います。


日経クロストレンドEXPOでは、2019年ヒット予測商品が所狭しと並んでいた


目次[非表示]

  1. 米Amazon Goと日本版Amazon Goの違い
    1. 【体験談 1】 JR赤羽駅のAI無人コンビニで買い物してみた
    2. 【体験談 2】 CEATECのRFID無人コンビニで買い物してみた
  2. 日本版Amazon Goが実現するのはいつ?

米Amazon Goと日本版Amazon Goの違い

◆テクノロジーで世界をけん引するAmazon Go

まずはAmazon Go(アマゾン ゴー)について簡単に説明します。Amazon Goは、コンピュータービジョンやAIを駆使してレジ精算を不要にした「レジのないコンビニ」です。

客は専用アプリのQRコードをかざして入店し、欲しい商品を手に取り、そのまま店外に持ち出すことで売買が成立、アプリで決済が完了します。この手軽さに世界中が驚きました。



Amazon.comは詳細を明らかにしていませんが、店内に多数設置されたカメラやセンサーを組み合わせて人と商品の動きを感知し、店内にいる客がどの商品を持ち歩いているのかを識別しています。Amazon Goは、画像認識AIを駆使したストアであり、商品識別にRFID(電子タグ)を使用していないのが特徴です。

2016年に発表、2018年から本格的に展開し、現在はシアトルやシカゴ、サンフランシスコなどに計6店舗をオープンしています。さらに数年のうちに最大3,000店舗まで拡大すると報じられました。気になる日本進出については未定。東京オリンピックまでの進出を期待する声がある一方、法人税の懸念から積極進出はしないのではという見方もあります。


◆実用化へ向けて開発が進む日本版Amazon Go

Amazon Goの日本進出を待たずとも、すでに国内で大手コンビニ各社が実証実験店舗をオープンしていることをご存知でしょうか。日経トレンディの2019年ヒット予測ランキングで選ばれたように、いま日本版Amazon Goの展開が話題になっています。

たとえば、JR赤羽駅ホームの「AI無人決済店舗」。Amazon Goと同じくカメラが客を追跡して人と商品を識別する仕組みです。また、実証実験には至っていないもののCEATEC JAPAN 2018に出展したローソンの「ウォークスルー決済店舗」にはたくさんの来場者が集まりました。こちらはAIによる識別ではなく、商品にRFID(電子タグ)を貼付して決済管理をします。

百聞は一見に如かず。trans+編集部は、JR赤羽店の店舗とCEATEC JAPANローソン店で日本の無人コンビニを体験してみることにしました。

JR赤羽駅の店舗を「AI無人コンビニ」、CEATECのローソンを「RFID無人コンビニ」として区別し、それぞれの特徴を紹介していきます。


【体験談 1】 JR赤羽駅のAI無人コンビニで買い物してみた

JR東日本とJR東日本スタートアップによるAI無人店舗が、JR赤羽駅の5・6番ホームに期間限定でオープンしました。(営業期間:2018年10月17日から2ヶ月程度)

天井のカメラで人物を認識、棚のセンサーで商品情報を取得する仕組みで、事前にAIに商品を個別学習させておくことで人と商品を識別します。識別した商品を無人決済する「スーパーワンダーレジ」は、東日本スタートアップの採択企業サインポストが技術開発しました。



AI無人コンビニでの買い物手順はこうです。

1、交通系ICをかざして入店


2、商品をピックアップ


3、交通系ICをかざして決済完了


※同時に店内に入ることができるのは3名まで。


※交通系ICに残高がない場合は購入できません。

Amazon Goと異なるのは、スマホアプリではなくSuicaやPASMOなどの交通系ICで決済すること。駅ナカ店舗ならではですね。

店内撮影禁止なので、ここからはカメラを封印して買い物スタートです。まず、入口にあるICカードリーダーにPASMOをタッチすると自動ドアが開き、入店できます。

入口と出口に案内役のスタッフが待機しているものの、店内は完全に無人でした。たまたま客が私ひとりだったため、店内には陳列された商品と自分だけがいるというまるで田舎の無人直売所……いやいや、ここは天井に16台、棚に100台のカメラが設置されたAIコンビニです。

複数商品を選択しても問題ないというので、スナック菓子とお茶を手に取り……、数歩進んだところで引き返してスナック菓子を元の棚に戻し、代わりにアンパンを選びました。つまり、スナック菓子はダミーで、私が購入したいのは“アンパン”と“お茶”です。正しく認識できるでしょうか。いざ、出口ゲートへ。


レジの代わりにICカードリーダーが設置されていたゲートで再度PASMOをタッチします。商品を読み取ることなく即レシートが発行され、無人AIコンビニでの買い物は無事終了しました。もちろん商品は正しく認識されていました。

最後に交通系ICで決済するというステップをのぞけば、本家アメリカのAmazon Goとほぼ同じ買い物体験ができたと言えます(Amazon Goでは、タッチして決済というアクションが不要)。まさに日本版Amazon Goと呼ぶにふさわしい無人AIコンビニの登場に、実用化への期待が高まります。

◆AI無人コンビニの課題は「認識精度」


無人AIコンビニのデメリットは、入店人数に制限があることです。赤羽駅の店舗では最大3名までという入場制限がありました。理由はAIの認識精度です。


これは初期のAmazon Goでも見られた現象で、2016年のAmazon Goベータ版では同時に数名しか入店できませんでした。人の出入りが多くなるとトラッキングが困難となり人物や商品が判別できず、AIが機能しなかったといいます。しかし現在では同時に数十名が入店できるほどAmazon GoのAI精度は向上しているため、数年以内に日本でも入店人数制限が緩和するでしょう。


ただ、狭い店舗内に多くの客が集中する日本のコンビニは、AIの認識精度をAmazon Goと同等かそれ以上まで上げる必要があり、実用化に向けた当面の課題となりそうです。



【体験談 2】 CEATECのRFID無人コンビニで買い物してみた

CEATEC JAPAN 2018に出展したローソンが提案するのは、商品に貼付したRFID(電子タグ)を識別することで決済を管理する無人コンビニです。(展示期間終了 ※2018年10月16日から19日まで)

購入したい商品とともにウォークスルーゲートを通ることで、専用アプリを入れたスマホから決済が完了します。RFIDタグによる決済は、カメラやセンサーで人と商品を識別するAmazon Goや赤羽のAI無人コンビニとはまったく別のアプローチです。



RFID無人コンビニでの買い物の手順はこうです。

1、商品をピックアップ


2、スマホアプリのQRコードをリーダーにかざす


3、商品をゲートに通して決済完了


※専用アプリまたは楽天ペイアプリをインストールする必要があります。

AI無人コンビニと違うのは、入店人数に制限がないこと。CEATECローソンブースは店舗内に常時20名ほどの客がいて、お弁当や日用品などを購入するためにウォークスルーゲートの前で列を作っていました。


商品を手に取ると、はみ出し気味にRFIDタグが張り付いています。バーコードと同程度の大きさでした。(注意:レンジで温める場合はRFIDタグを取り外しましょう!)


商品を買い物袋へ入れ、ゲート前に設置されたリーダーにアプリのQRコードをかざします。そして買い物袋をウォークスルーゲートに通すように歩き進めば、2秒で決済完了です。もう一度動画をご覧ください。ほら、本当に2秒でしょう?


ウォークスルーゲートを通過したらスマホアプリに電子レシートが届きます(画像はデモ機)。


CEATECのローソンブースには、RFIDタグの自動貼り付け機も展示されていました。コンベアーに流した商品のバーコードを読み込み、その商品情報をRFIDタグに書き込んでタグの貼付までおこなうという優れもの。多品種・小ロットを扱う店舗や、商品の入れ替えサイクルが早い店舗、そして人材不足に悩む小売全般で活躍が期待されます。

◆RFID無人コンビニの課題は「コストダウン」


RFIDタグは1枚10~20円ほどのコストがかかるそうです。それに対してコンビニで販売する商品の価格は数十円から数百円程度。高コストと言わざるを得ません。量産化や技術革新によるコストダウンがRFID無人コンビニ実現のカギを握るでしょう。

日本版Amazon Goが実現するのはいつ?

AI無人コンビニとRFID無人コンビニには、それぞれクリアしなければならない課題がありました。しかし、両者を組み合わせればより高度なマーケティングや物流管理に活用できる可能性があります。

たとえば、AI無人コンビニはカメラとセンサーで人と商品を追跡しているため、商品を棚に戻した(購入をやめた)人の動きや何も購入せずに退店した人の動きを正確に把握し、消費者行動予測につなげることができます。一方のRFIDタグには、いつどの店でどの商品がどの程度流通しているかが簡単にわかるというメリットがあります。

集中的に混雑する都内のコンビニ事情を考慮すると、現時点でやや精度に不安が残るAI型ではなくRFID型を採用し、マーケティング活用のためにカメラやセンサーを付加するのが現実的なところでしょう。

「日本版Amazon Goは、本家Amazon Goとは別のアプローチで攻める」。

こう意気込むのは経済産業省です。2017年4月には「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を発表し、2025年までにすべての取扱商品に電子タグを利用することでコンビニ大手5社と合意しました。今後、日本で無人コンビニが広がっていくことは間違いありません。

レジの列に並ぶ必要がなく、レジスタッフの作業を待つ必要もなく、支払い行為が不要な日本版Amazon Goによって、私たちがストレスフリーな買い物体験を手に入れる日はすぐそこまできています。

trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

関連記事:

trans+(トランスプラス)に掲載しているコンテンツや、サイト内で紹介したサービスに関することなど、どうぞお気軽にお問い合わせください。

フォローする:

この記事をシェアする:

人気記事ランキング