住民CXを高めるDX推進のポイント進め方・DX推進パートナー支援の活用法 ウェビナーレポート

公民連携・官民共創の歴史は時代とともに変化し続け、平成には官から民へ、民間に出来ることは民間へと役割が移り、令和には行政・企業・大学・NPO・地域社会の全てが協力し公民連携、官民連携を実現していきます。

その背景には公共が担うべき社会的課題そのものが変化しており、昔は道路、公害、公衆衛生などを整備していたものが、現在は人口減少、SDGsといった複合的、包括的社会課題とその持続可能な解決を担う必要があります。

それに加え、公共が担う課題は拡大している一方で公務員は減少しており、ピーク時に比べて55万人も少ない274万人で上記の課題に取り組む必要があるため、一部の公共サービスは民間のビジネスで補わざるを得ない状況になっています。

また、民間についても従来のCSR(企業の社会的責任)を果たすミッションから、昨今はCVS(共創)やSDGs(政府・民間共通の目標と持続可能性)を意識し、公共に関する課題に携わっていくことがビジネスを行う上で重要になっています。

『デジタル・ガバメント実行計画』『包括的データ戦略』『自治体DX推進』といった課題に対し、何から始めれば良いのか、何が重要で何を優先すべきなのか、そもそもDXとは何なのか、本記事では2021年8月6日に開催されたトランスコスモスウェビナー「住民CXを高めるDX推進のポイント進め方・DX推進パートナー支援の活用法」から自治体DXにおけるスマートシティの実現、住民UX・満足度向上のための秘訣をご紹介します。


目次[非表示]

  1. 自治体DXアクセス調査サービスからはじめる自治体DX推進
    1. 自治体DXアクセス調査サービスとは
  2. 「書かない」「待たない」「行かせない」を実現するデジタル申請ソリューション『DEC bot for Government』
  3. セールスフォース・ドットコム社が考える「行政のDX推進において重要なこと」とは
    1. 活用事例
    2. スマート窓口を実現するためのソリューション

自治体DXアクセス調査サービスからはじめる自治体DX推進

清水 久仁彦
トランスコスモス株式会社
公共DX推進部


デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「デジタルエンタープライズ(デジタル企業)になるまでのプロセス」のことを指します。つまりDX化はゴールではなく、あくまで過程であり、そもそもDXとは何なのか、自分たちは何から取り組むべきなのか、現状何が足りておらず何をしなければいけないのかをしっかり理解しなければ、DXの成功はありません。

日本は人口減少や少子高齢化などの課題を抱え、失われた30年の経済低成長が問題視されている一方、世界で急成長しているDX企業の実態を見ると、単なるICTの活用ではなく、スマートフォンを活用した新たな価値の創出などを積極的に行っている企業が右肩上がりに業績を伸ばしています。


ICT化とDXの違い


ICT化(高度情報化)
DX(デジタル変革)
目的
組織の効率化を主な目的として、業務を情報通信技術に代替すること
住民サービスの向上を主な目的として、デジタル技術も用いて新しい価値を生み出したり、仕組みを変えること
目線
業務本位
住民(職員)本位
親和性
業務効率化、省人化、コスト削減
UX、UI、個別最適化
範囲
部分的
全体的
役職
CIO
CDO
具体例
・膨大な事務作業を効率化、省人化するためにRPAを導入する
・投開票作業を効率化、省人化するために電子投票システムを導入する
・在宅勤務を実現するために、クラウド環境を整備する
・すべての住民の参政権を保証するために、遠隔電子投票システムを導入する


ICT化とDXの違いとしては上記のように比較できます。

これまではシステムの構築や導入にばかり予算をかけていて、結局それを使いこなすための勉強時間や手間・工数がかかっていたのに対し、DXでは働き方の仕組みそのものを変えていく、そのために必要なシステムを選択していく、生きた予算の使い方をすることが重要です。


では自治体DXとはそもそも何をするものなのかと言うと、

  • デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会をつくる
  • デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させる
  • 業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げる
  • データの円滑な流通を促進することによって、EBPM等により自らの行政の効率化、高度化を図る
  • 多様な主体との連携により民間のデジタル、ビジネスなど新たな価値等を創出する

といったものがあげられ、これらを実現するためには、自治体DX推進手順書に基づいて「デジタル技術・データを活用した住民視点でのサービス向上と業務効率化」を目指し、利用者(住民・職員双方)視点でのサービスの在り方を検討することが求められます。

これまでの自治体の情報発信は行政サービスの情報を担当部門が網羅的に管理し、情報が滞りなく掲載されていることが重要視されていました。しかしそれでは住民は必要な情報を探すためにしかホームページを訪問しないうえ、行政の情報を見慣れていない住民は、「該当ページを見たがよくわからない」「どこを見ればよいか分からない」「動作が遅くてストレスがたまる」といった不便や負担を感じることとなり、結果として住民満足度の低下、総合電話窓口の混雑といった行政が抱えやすい課題に繋がります。

重要な情報が見つかりづらいメニューやコンテンツ構成、結局何をすれば良いのか分かりにくい説明、これらは「住民が目的に辿り着きにくくしている原因」であり、自治体が解消すべき課題です。

そのため、知りたいことがすぐに見つけられるWebページを作るための導線調査や、離脱の少ない自己解決型のWebページにするための対策アドバイスを活用することで、ミスコミュニケーションを無くし、問い合わせをスムーズに処理、住民手続のオンライン化を実現し、住民の満足度向上に直結させることができます。


自治体DXアクセス調査サービスとは

こうした行政の課題を解決すべく、トランスコスモスでは「自治体DXアクセス調査サービス」を提供しています。自治体DXアクセス調査では、民間では当然のように行われているUI/UX視点での接点調査、住民ファーストの視点での住民のアクセス状況調査を、豊富なDX実績・経験を持つトランスコスモスが実施し、スマート窓口化・行政の申請手続きのオンライン化を適切に進めるための支援を行います。


自治体DXアクセス調査フロー


そもそも、なぜ民間企業ではUI/UXの視点での調査を当然のように行っているのかと言うと、Webページでの情報掲載が疎かになっている、メニューが分かりづらい、困りごとが解決できそうにない、と判断されると、それが例えどんなに良いサービスだったとしても二度と使ってもらえなくなってしまうからです。

その点、行政の場合は自分が住んでいる地域のサービスを受けざるを得ないという背景があるため、どれだけ分かりづらいWebページでも真剣に情報を探しますが、それこそがストレスの原因であり、住民満足度の大幅な低下を招いています。

住民は何らかの目的をもってWebページを訪問、もしくはSNSを利用しますが、「自治体DXアクセス調査サービス」では、利用・閲覧される頻度の高いコンテンツをチェックし、該当ページへの流入経路、検索ワード、情報窓口としてどれだけの住民が利用しているのか人口対比で訪問率を調査し、住民視点でのUXの調査を行います。また、実際に窓口に訪問して行う「窓口利便性調査」も用意しています。

住民ファースト視点で実施する「DXアクセス調査」とあわせて、システム・データの標準化、DX人材育成、DX推進体制の強化など、自治体DXの喫緊課題を解決することを目的とした「DX推進調査」も行うことで、課題解決に最も適したソリューションやサービスの提供を行います。


ニーズに合わせたサービスを提供

「書かない」「待たない」「行かせない」を実現するデジタル申請ソリューション『DEC bot for Government』

山崎 兼太郎
トランスコスモス株式会社
DM・EC・CC統括 DX推進本部
DECS統括部


新型コロナウイルス感染症等の影響を受け、デジタルを活用した新たな日常に対応した転換が必須となるなか、行政手続きのオンライン化に加え、来庁が必要な場合であっても窓口において、待たずに、書かずに申請できるスマート窓口の整備が求められています。

窓口での混雑緩和や来庁時の住民、職員双方の負担軽減を図るために、そして住民に利用してもらう為の「住民視点」でのサービス提供を行うことが重要となり、それを実現するためのソリューションとして、トランスコスモスはDEC bot for Governmentをリリースしました。


行政手続き申請の事前入力サービスである「DEC bot for Government 1.0」は「住民の利便性(CX)の向上」をメインテーマに掲げているサービスで、既にいくつかの自治体様にもご利用いただいています。

これまでは自治体で書類を提出するにあたり、窓口に行って質問などを行い、サンプルを見ながら手書きで申請書を記入、出来上がった書類を窓口に提出するという流れが一般的でした。

しかし、従来の申請の方法では、

  • どの書類をどの窓口に申請すれば良いのか分からない
  • 不明点は都度、窓口で質問しなければならない
  • 書類を手書きするのに手間と時間がかかる
  • なかなか都合があわず、ゆっくり申請に行けない
  • 申請に関する待ち時間が長い

といった多くの悩みや負担を、住民、窓口職員ともに抱えています。



こうした課題を解決するために、「DEC Gov 1.0」では以下のようなサービスを提供しています。

・申請書のWebフォームにチャットボットが自動で誘導
 ⇒窓口へ赴く手間と時間、どの書類をどの窓口へ提出すれば良いのか分からないといった課題を解決

・空き時間に手元のスマホなどから申請書を事前入力することが可能
 ⇒手書きでの申請書の記載ミスによる時間や労力のロス、窓口での受付完了に要する待ち時間を排除



[導入事例] トランスコスモス、川越市にてチャット、Webフォームによる申請書事前作成の実証実験を開始

  川越市にてチャット、Webフォームによる申請書事前作成の実証実験を開始 チャットボットとの対話で申請書を作成できるDEC Bot for Governmentで手書き申請書のオンライン化を支援 最短2週間で導入可能! https://www.trans-cosmos.co.jp/company/news/200709.html


申請書のフォーマットを事前に設定しておくことで、フォーマットに沿って情報を入力するようチャットボットが自動で誘導することができ、住民はあらかじめ入力した情報を各自治体に備え付けられているQRコードリーダーに読み込ませ、プリンターで印刷するだけなので手間と時間がかからず、書き損じなどの心配もなく、すぐに窓口に申請することができます。

また、申請の内容によっては複写式や複数の申請書に記入する必要もあるかと思いますが、そういった場合でも「複写機能」や「入力データ他項目転記機能」など、一度入力した情報は自動的に反映される仕組みが備わっているので、特別な操作などをせずに申請書を作成することができます。

「DEC bot for Government 1.0」を活用することで、住民・窓口職員ともに以下のようなメリットがあります。


【住民】

  1. チャットボットの誘導に従うだけで良いので分かりやすい
  2. 申請書の記入にあたり、時と場所を選ばず、拘束もされない
  3. QRコードに申請内容を埋め込むため、システムに個人情報を保持させないのでセキュリティ面も安心

【職員】

  1. 新サービスや補助金等の追加があっても、すぐに対応可能なので窓口業務をストップさせない
  2. 現行の申請書のフォーマットや対応フローの変更、新たなフローを追加するわけではないので手間や負担はかからない
  3. システムに個人情報を保持しないため、個人情報漏洩などのリスクをなくすことができる
  4. QRコードリーダーやプリンター、ネットワークの貸与まで含めたパッケージなので、新規に何かを用意する必要が無く、すぐに始められる


新機能として、申請書受取後の窓口職員の作業効率化を目的とした「DEC bot for Government 2.0」も実証実験を開始しています。

具体的には、「DEC bot for Government 1.0」で出来ることはそのままに、窓口職員向けに「原課の業務効率化・負担軽減」「ネットワーク環境の影響なく住民情報を業務端末に連携させる」といった仕組みを取り入れており、「DEC bot for Government 1.0」を利用して提出された申請書についているQRコードをスキャンすることで、申請書の内容が担当者のPCに自動的に取り込まれます。

そして取り込まれた情報をもとに、事前に設定しておいた作業フローをRPAが実行し、データの保存、他部署との連携、書類発行などを自動で完結させることができます。

RPAでの処理もQRコードから読み取った情報をCSVでローカル保存し、その内容を業務システムに自動転記入力するというPC内の自動処理で作業が完了する仕組みなので、ネットワーク回線に依存せずに利用することができます。


DEC Gov 2.0運用イメージ


さらに今後は、住民の来庁不要、スマホから直接申請受付、もしくは郵送での受付をするモデルの「DEC bot for Government 3.0」のリリースを予定しています。

申請依頼を受付後、職員へ受付メールを通知。自治体ごとにカスタマイズした申請受付システムで受付内容を確認して、職員から必要書類を住民へ郵送することで、来庁することなく申請がオンラインで完了します。

また、申し込み内容が多岐に渡る場合、一度画面を閉じて別日に再度入力しても途中から入力を開始することができる一時保存機能なども実装予定で、住民のUI/UX向上にさらに貢献するサービスを提供していきます。


DEC Gov 3.0運用イメージ

セールスフォース・ドットコム社が考える「行政のDX推進において重要なこと」とは

住民サービスを強化・満足度を向上させるため、あるいは職員の働き方改革を推進するために、デジタルを活用する自治体が増えてきましたが、行政のDX推進については、業務の電子化とあわせて「住民をお客様と捉えたサービス提供」が重要であり、こうした考えのもとデジタル活用を進めている自治体が多くなっています。

また、システムを導入しただけで満足するのではなく、関係各所がシステムを通じて繋がり、全体感をもってデジタルの活用を進めていくためにはどうすれば良いかという相談も増えています。

Salesforceはビジネスに必要な各種情報を1つのクラウド基盤上へ集約し、様々な部門・業務で活用することができます。ビジネスに必要な標準機能はアプリケーションとして既に備わっており、申請・審査管理など独自の仕組みはカスタムアプリを作成したり、パートナー企業が提供しているサービスで補うことができます。全てが同じプラットフォーム上にあることによって素早く柔軟なシステム構築が可能となり、一部の業務でシステムを導入し、そこから無駄なく拡張していくことができます。



ときには、クラウド上のサービスをご利用いただくうえで、「LGWAN経由での接続は可能?」「データの管理方法などが不安」といった疑問や不安に関するご相談をいただくこともあります。

LGWAN経由での接続については、パートナー企業にてLGWAN経由でSalesforceのクラウドに接続するためのサービスを提供しており、インターネットに繋がっていないPCからも問題無くサービスが利用できます。

データの管理方法についても国内に2つのデータセンターを設けており、国内にデータを留めて利用することが可能です。また、APPLIC認定、CSゴールド認定、ISMAPをはじめとする様々な認証/資格を取得しており、万全のセキュリティ体制のもと、行政のDX推進を後押ししています。


活用事例

公共に関わるサービスの導入実績は日本全国で350以上、人口規模や職員数に関係なく様々な業務で活用されており、特にスピード感が求められる新システムの立ち上げには、クラウド型で標準機能を備えたSalesforceが採用されるケースが増えています。

素早くシステムを立ち上げることができるという特徴は、コロナ禍でのシステム構築においてはとても強みであり、千葉県船橋市では今後増大するであろう問い合わせに対応するため、保健所を対象に新型コロナウイルス関連の住民からの問い合わせの管理や、受け入れ病院紹介などの情報をリアルタイムに発信する、クラウド型業務支援パッケージが活用されています。


千葉市保健所、「新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージ」を採用

https://www.salesforce.com/jp/company/news-press/press-releases/2020/05/200520/


また、このほかにも、京都府にて新型コロナウイルス対応支援給付金の申請オンライン化を支援するなど、公共DX推進を後押しする事例等は下記のYouTubeチャンネルでも公開しています。

https://www.youtube.com/user/JPsfdc/featured


スマート窓口を実現するためのソリューション

最後に、ここまでご紹介したDX推進を実現するためのソリューションを簡単にご紹介します。


どんな世代の方でも使いやすい窓口をご案内する『総合案内メニュー』

・電話、メール、Webチャットなどの窓口をひとまとめに表示
住民は好みの窓口を利用することができ、若い世代はチャットボットによるセルフサービス、高齢者には電話による手厚いサポートを同時に案内

・マウス操作で素早く作成、どんなWebサイトにも設置可能
ノンコーディングで作成でき、既存・新規どちらのWebサイトにも設定可能

・メニューの内容はいつでも変更可能
臨時の案内時には特設ページへの直接誘導や、窓口の増設など、状況に応じてメニューの内容を変更可能


場所を問わず映像でリアルタイムにサポートするためのビデオ通話

・映像を活用した対話型のサポートを提供
画面に指示を書き込むなどして、住民や事業者からの問い合わせ、職員の対応をリモートで支援

・AIによる支援機能
AIを活用した文字認識により、書類の読み取りを円滑に実現、低速接続やオフラインの環境にも対応

・素早い設定でROIを陣族に実現
ブラウザベースの映像サポートを素早く立ち上げ、対応にかかる時間を短縮


このほかにも、トランスコスモスとSalesforceは申請の受付、ワクチン接種予約といった業務において、システムはもちろん業務委託も含めて提供しているため、ご興味・ご関心のある方はお気軽にお問い合わせください。


trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

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