LDH長瀬氏、CLAS久保氏、シーオーメディカル瀬出井氏が「感情に訴える顧客体験」に迫る!#adtech10【アドテック東京2018レポート】
アドテック公式事前アンケートで人気ナンバーワンに輝いたセッション「感情に訴える顧客体験・顧客接点の設計とは何か?」。
トランスコスモスの佐藤俊介がモデレーターとなり、LDHの長瀬次英氏、CLASの久保裕丈氏、シーオーメディカルの瀬出井亮氏とともに、共感、幸福感、満足感を生み出す顧客体験とはどのようなものかに迫りました。
▼モデレーター
佐藤 俊介 トランスコスモス株式会社 |
▼スピーカー
長瀬 次英氏 |
久保 裕丈氏 |
瀬出井 亮氏 |
目次[非表示]
感情に訴える顧客体験にデータは必要か?
最初のテーマは、顧客体験の設計においてデータは必要か否か。
感情を数値に置き換えることはできるのか?データはどう活用するべきか? 2018年4月に事業開始した久保氏、設立15周年を迎える成長企業LDHの長瀬氏が、それぞれの立場で語ります。
久保氏
CLASのビジネスはスタートしたばかりなので、この段階ではあまりマスデータに頼りません。それより人に直接質問するほうがいい。データは0→1のタイミングではなく、1→10の段階で活用すべきです。成功の打率を高めたいとき、仮説の精度を高めたいときにデータが有効になると思っています。
佐藤
スタート時期ではなく成長時期にデータが有効ということですね。では長瀬さん、成長企業ではどうでしょう?
長瀬氏
今回のテーマである顧客の感情はエクスペクテーション(期待値)に左右されます。そこで期待値のもととなるデータが必要だと考えます。
長瀬氏は有名ブランド店での買い物体験を例に、来店時のスタッフ対応にバラつきが生じると顧客の期待値がブレるというエピソードを披露。来店時に提供したサービスという「顧客体験」を店舗側で共有しておけば、期待値をデータとしてデザインすることが可能だと長瀬氏は提言します。
ファンの期待値を上回ることで感動を与えたいと話す長瀬氏
佐藤
エンタテインメントを扱うLDH社では期待値データを活用するような事例はありますか?
長瀬氏
まだまだこれからです。最近興味深いと感じたのは、笑顔になった回数で観客の支払額が決定するという海外のスタートアップ。今後は感情の可視化にデータを活用したいですね。
表情(感情)の変化で、料金やサービスがリアルタイムに変動する――。エンタテインメント業界を中心にそのようなテクノロジーが採用される未来は、そう遠くないかもしれません。
感情に訴える顧客接点に最適なSNS活用法は?
続いてテーマは、顧客接点を生み出すSNS活用に移ります。活用方法やKPIからSNSの未来の姿、SNSとの向き合い方まで、スピーカーたちの話題は広範囲に及びました。
瀬出井氏
SNSはよく利用していますし、インフルエンサー活用もしています。シーオーメディカルが扱う下着や美容関連商品は、インスタグラムやLINEと相性が良い。多いときには月に何千万円も予算を投下しています。KPI設定は、LIKEやコメント数・コメント行数など。これらすべてを分析してCPOに換算しています。
長瀬氏
顧客の期待値もSNSから吸い上げて活用できるといいですよね。
例えば、旅行前にインスタグラムで旅先の素晴らしい風景写真を見つけてしまったら、実際の旅行では同等かそれ以上の風景を目にしないと満足できなくなる。旅行会社は、顧客の期待値を満たすためにSNSの感動をどう提供するか考える時代になるでしょうね。
久保氏
SNSを使って動かすことのできる感情は「きれい・おいしそう・楽しそう」というプリミティブ(原始的)でシンプルな感動です。複雑な欲求を満たす場合はハードルが高い。サービスによってSNSとの向き合い方は変えたほうがいいと思います。
SNSは、複雑なストーリーライティングを必要としない単純明快な欲求を満たすのに向いていると語る久保氏。ソーシャルチャネルやインフルエンサーはもちろん、サービスや目的などの適正を見極めてSNSをビジネス活用することが望ましいとしました。
SNSが持つ特性からSNSとの向き合い方について仮説を立てた久保氏
価値ある顧客体験に必要なのはアナログ・デジタルどっち?
ステージの空気が充分に温まったセッション中盤。感情を動かす顧客体験においてアナログとデジタルの一方だけを選択するのはナンセンスとしながらも、佐藤はあえてどちらが必要かというテーマをぶつけました。
長瀬氏
どちらか一方を選ぶなら僕はアナログです。ライブ会場の盛り上がりはアナログそのもの。デジタルはその盛り上がりを促進してくれるものです。ファンの喜びや涙といった感情を演者が感じ取るライブ会場の一体感はアナログにしか生み出せません。
瀬出井氏
僕も長瀬さんと同じく、アナログの手段としてデジタルがあると考えます。ただ、アナログにおいてもデジタルにおいても大切なことは、簡潔に伝えること。人の心に留めて置ける情報には限界があるので、10秒以内、3つ以内で訴えかけるよう心がけています。
久保氏
二人ともアナログだったので、僕はあえてデジタルを選ぼうかな(笑)。
CLASが扱う家具は圧倒的にアナログ寄りの商品です。時間をかけて郊外の店舗に足を運び、大きな荷物を持って帰って自分で組み立てる。これは、アナログ故のユーザーペインです。デジタルには、クリックひとつで家に届いた家具が勝手に組みあがる可能性があります。
アナログで人の心を動かし感動を生み出すことも、面倒なユーザーペインをデジタルで解消することも、優れた顧客体験の提供です。テクノロジー先行になりすぎず、アナログもデジタルもサービス向上のために活用すべきだとあらためて考えさせられました。
アドテックであえてアナログな「感情」をセッションテーマに選んだ佐藤
顧客視点での感動体験(BtoB/BtoC)を教えて
顧客体験を設計する立場にあるビジネスパーソンは、同時に顧客としての鋭い視点も持ち合わせています。企業のサービスや担当者のホスピタリティに感動した自身の経験について、瀬出井氏が語りました。
瀬出井氏
マックナゲットをテイクアウトした時の話です(笑)。
袋を開けたら頼んだはずのバーベキューソースが入っていなかった。そこで店舗に電話をかけたらすぐに駆けつけてくれたんです。バーベキューソースだけでなく、マスタードソースとコーラを持って。こちらの期待以上の対応に却って好感度が上がりましたよ。小さなミスが叩かれる時代において、対応ひとつで好感度を高めるスイッチングは素晴らしかった。
瀬出井氏
BtoBでも感動体験はあります。
以前、代理店による広告施策が失敗を繰り返していた時期がありました。翌月その担当者がやってきて「御社にピッタリの人材がいる」と広告ではない提案をしてきた(笑)。驚きながらも採用したら、これが大正解。プロモーションには失敗しても、企業理念やビジョンの遂行において本質をとらえた提案で非常に満足しました。
人や企業の発展を支援する「コーチング」の専門家でもある瀬出井氏
佐藤
なるほど。顧客体験というとBtoCをイメージしがちですがBtoBでも設計できますよね。では、BtoBの顧客体験ではどのようなことを意識していますか?
久保氏
実は、家具レンタルはBtoCよりBtoBの需要が大きい。だから僕はステークホルダーとなる方のメリットを常に意識しています。うちのサービスを利用することで、クライアント側の責任者が彼らのミッションを達成することができるか、それを重視しています。
今日から使える顧客体験・顧客接点の設計テクニック
最後のテーマは、感情に訴える顧客体験・顧客接点の設計テクニックについて。スピーカーの3名が日々どのように考え、またどのように行動しているのか垣間見える内容でした。
瀬出井氏
業界内でのタブーが、実はお客様の求めていることだったりする。それを見つけることが新たな顧客体験・顧客接点を生み出すことにつながる近道だと考えます。
長瀬氏
とにかく人に会って話を聞くこと。なぜなら、人の本音なんてどこにあるかわからないから。ツイッターの発言が本音とは限らないでしょう。逆にツイッターが本音で普段は建前を話しているかもしれない。だが、表情は本物だと信じています。本物の感情を拾ってビジネスにつなげたい。
佐藤
最後は久保くん。バチェラー・ジャパンに応募する以外に何かありますか?(笑)
久保氏
バチェラーも認知獲得になりますが、それ以外で(笑)。
我々はつい商品やサービスの差別化を考えがちですが、顧客はさほど「差別」していません。それよりもブランドのパーソナリティや顧客との寄り添い方で「区別」してもらうほうがより長く親密な関係を築けると思います。
佐藤
皆さんありがとうございます。サービスも専門も異なるそれぞれの視点が非常におもしろかった。またこういうセッションで皆さんの意見を共有したいと思います。
訊かれるままにリアルなバチェラー体験を語る久保氏と、笑顔で耳を傾ける長瀬氏&瀬出井氏
セッション終了後すぐに自撮りする4人
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【独占入手画像】まぶしい笑顔からセッションの手応えを感じます!
【アドテック東京2018 人気スピーカーランキング発表】
アドテック終了後、人気スピーカーランキングが発表されました。
本セッションに登壇したLDH 長瀬次英氏が2年連続ナンバーワンを獲得!CLAS 久保裕丈氏は8位にランクインしました!
全240名のスピーカーから選出されるという快挙ですが、ユーモアと学びにあふれたセッションをこの目で見るとお2人のランクインは必然だと感じます。
本当におめでとうございます!
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