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Amazon Connectで実現する新しいクラウドベースのコンタクトセンター像


コールセンターサービス(コンタクトセンターサービス)は1990年代から本格的にアウトソーシングサービスとして立ち上げた、トランスコスモスの中でも歴史のあるサービスだ。その強みは長年の運用ノウハウだけでなく、コールセンターシステム/インフラ部分が占める割合も大きい。昨年、トランスコスモスは基幹システムとして初めてアマゾン ウェブ サービス(AWS)が提供するクラウド型コンタクトセンターシステム Amazon Connect(アマゾン コネクト)を活用することを決めた(プレスリリース:https://www.trans-cosmos.co.jp/company/news/181212.html)。

今後トランスコスモスのコンタクトセンターサービスはどう変わっていくのか、現状の取り組みと今後の展望について開発責任者の宮澤に話を聞いた。


【インタビュイープロフィール】

宮澤 朋成


トランスコスモス株式会社
デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括デジタルコンタクトセンタサービス総括 サービス企画推進本部 


2003年4月トランスコスモス入社以降コンタクトセンターシステムインフラ担当者として従事。業務立上げ、コンタクトセンター構築、社内PBX、ネットワーク、サーバなどのシステム設計・構築・運用を経験。既存コンタクトセンター運用・保守及び、新たなコンタクトセンタープラットフォーム戦略・構築などを担当


目次[非表示]

  1. BCP対策が高めたクラウド化機運
  2. ハイブリッド運用による付加価値化
  3. システム運営ノウハウを活かしたカスタマイズ
  4. アウトソーサーならではの品質管理
  5. コスト削減とCX向上を実現する新しいコンタクトセンター

BCP対策が高めたクラウド化機運

ーーはじめに、現在のトランスコスモスのコンタクトセンターの規模やシステム構成はどのようなものでしょうか?

  宮澤

トランスコスモス全体では世界中にコンタクトセンターがありますが、日本国内で33拠点、約18000席あります。さらにタイでは日本国内の電話が受けられる仕組みになっています。 

※2019年6月現在

データセンターにコアシステムとなる基盤を置き、全く異なるエリアを利用したBCP環境を準備しておりますので、トランスコスモスのコンタクトセンターは常時安定して稼働できるレベルの回線、設備が提供可能となっています。

ーーなるほど。オンプレミス型であっても、データセンターに設置することで、トランスコスモスの拠点内であればどこからでも利用できる仕組みになっているのですね。

  宮澤

はい、プライベートクラウドで拠点間を繋いでいます。2011年の東日本大震災以降、BCP対策の必要性が高まり、トランスコスモスでもコンタクトセンターシステム群のプライベートクラウド化を進めてきました。

トランスコスモスのコンタクトセンタープラットフォーム「Contatct-Link」。プライベートクラウド化しているため、急なコール増加時にも他センターで対応が可能


ーーオンプレミス型ならではの良い点や苦労されているのはどのような点でしょうか?

  宮澤

自社環境内にシステムがあるため、通信距離・経路など内部環境で処理ができ、安定性を維持できるのが良い点ですね。ただし、環境構築費用、一過性の増席に対して拡張性の考慮、一度入れたシステム機能拡張に課題がありました。

ーーコンタクトセンターは「ファシリティをいかに効率的に運用させるか」、という点と急な増席対応のために「ある程度バッファも持っておかなければいけない」という点のバランスが非常に悩ましい問題ですね。

ハイブリッド運用による付加価値化

ーーAmazon Connectの導入はトランスコスモスの中でも大きな変革になると感じています。クラウド型サービスの活用を決めた理由はどういった点ですか?

  宮澤

お客様企業の変化とテクノロジー革新により次々にイノベーションが起きる時代・環境になってきました。この情勢を考えたとき、我々はアウトソーサーとしてお客様企業のニーズに応えられるようスピード感と柔軟性をもつ必要があり、クラウド型システムとオンプレミス型システムを併用することで新しいビジネスモデルが提供できると考えたためです。また、BCP対応・一過性の繁忙などオンプレミス型では限界があり、ビジネスの状況に応じて自在に変化させ提供できるようなると考えています。もう一つは、在宅勤務など働き方改革を実現するにはクラウド型システムの検討がどうしても必要でした。

ーーオンプレミス型の良いところ(大規模業務での安定性や実績)を残しつつ、課題点(スケーラビリティ・ノンボイス対応へのシームレスな移行・クラウド型システムとの親和性)をAmazon Connectで補うのですね。




ーークラウド型のコンタクトセンターシステムはすでにいくつかの海外・国産メーカー製品がありますが、実績の少ないAmazon Connectを選択した理由はどうしてでしょうか?

  宮澤

2点ありまして、1つめは世界中のAmazonのコンタクトセンターですでに同じ技術が使われているという技術的な実績がある点。2つめに、クラウドソリューションとの連携がしやすい点が決め手になっています。特に、音声Botなど今後コンタクトセンター運用に重要となる機能がAWS上にそろっている点が魅力です。日本語化がまだまだなものも多いですが(笑)

ーー料金形態が従量課金制になっていますが、トランスコスモスとしての提供はどうなりますか?

  宮澤

従来のオンプレミス型を利用する場合、1席/月の費用形態で提供していますが、Amazon Connectであれば席数に依存せず、利用した時間に応じた従量課金での提供が可能です。

ーーAmazon Connectのコストメリットが出しやすいのはどのような使い方になりますか?

  宮澤

これは非常に答えるのが難しいですね(苦笑)。先に述べたように、Amazon Connectはノンボイス対応への移行・クラウド型システムとの親和性が特長です。電話だけでなく様々なチャネルやソリューションを活用する業務であれば、AWS上のサービスで簡潔に構築出来る可能性があるため、オンプレミス型に様々なソリューションを連携させるよりも、構築期間が短縮でき、トータルでコストメリットが出しやすいです。

ーーなるほど。お客様企業のコンタクトセンターの運営方針/ビジョンに合わせて「オンプレミス型」「Amazon Connect」それぞれのメリットを活かしつつご提案できるようになったのですね。

システム運営ノウハウを活かしたカスタマイズ

ーーすでに実業務で導入実績が出ていますが、これまでの取り組みを教えてください

  宮澤

まず、Amazon Connectが日本に上陸したときにシドニーリージョン(シドニー経由でのアクセス)ではありましたが、2018年1月よりテストを開始し、トランスコスモスの採用業務での電話対応にAmazon Connectを利用して検証しました。電話対応以外に①窓口の営業時間制御②時間外・待ち呼に対してSMS(ショートメッセージサービス)を活用したノンボイス誘導③より運用しやすいようにオリジナルソフトフォンを開発しました。



ーーコンタクトセンター現場の反応はどうでしたか?

  宮澤

「音声はクリアに聞こえる」「操作も簡単で意外と使える!」という反応でした(笑)

標準のソフトフォン


トランスコスモスが開発したソフトフォン。オペレータが使いやすいようにカスタマイズされている。これも長年ノウハウのたまもの


ーー通話録音装置や、CRM/CTSシステムなどとの連携はどうでしょうか?

  宮澤

Amazon Connect自体に録音機能があり利用可能です。CRM/CTSについては、トランスコスモスオリジナルのCTSツール(Contact-Link for CTS※とCTI連携しています。Salesforceも連携できることを確認しています。

※トランスコスモスが開発したCTS:https://www.trans-cosmos.co.jp/special/callcenter/contactlink.html

ーーノンボイス対応への移行が強みとのことでしたが、具体的にどのような機能が利用できるのでしょうか?

  宮澤

AWSですでに用意されている機能の検証を進めています。

① Amazon Lex(音声Bot)の利用検証および対応内容のCRM/CTS連携
② Amazon Transcribe(音声認識)によりリアルタイムでの書き起こし(Speech-to-Text)を行い、Amazon Comprehend(自然言語処理)への連携
③ Amazon Comprehendのキーフレーズ抽出、感情分析などを利用し、キーフレーズによる自社CRMへのFAQレコメンドや感情分析に基づく感情グラフを表示

アウトソーサーならではの品質管理

ーーコンタクトセンター業務は数値管理が非常に重要ですが、レポートや数値管理はどうでしょうか?

  宮澤

標準で提供されるレポートで必要な数値が取得できますが、トランスコスモスとしてもう一歩踏み込んだマネジメント(レポート活用)を提供していくため、レポートについては拡張を検討しています。

ーーAmazon Connectに限らず、アウトソーサーとしてクラウドサービスへの不安はありませんか?突然システムが落ちるとか・・・

  宮澤

不安がなかったのかと問われると、全くなかったとは言えません。そのため様々なテストを実施しました。実際の採用業務をAmazon Connectで運用し、実用レベルに耐えうるか検証を行いました。シドニーリージョンから試験をしていますが、東京リージョン※移行後(2018年12月)もシステム停止などは現状発生していませんね。このあたりはAmazon のコンタクトセンターで使われているテクノロジーの実績が背景にあると思います。

※Amazon Connectの日本上陸時はシドニー経由でのアクセスしか出来なかった。2018年12月に東京でも立ち上げ済み

ーーなるほど。これは、トランスコスモスが長年自社でシステムの運営/管理していたノウハウや品質基準が活かされていますね。構築で、苦労した点はどういったところがありますか?

 宮澤

最初の頃はどのシステムベンダーもあまり知見がなかったため、手探りでの調査・テストが大変でしたね。。。今ではメーカー、システムベンダー含め色々協力を頂けるようになったので、新しい事にも挑戦しやすい環境になりました。

コスト削減とCX向上を実現する新しいコンタクトセンター

ーー今後、Amazon Connectを活用することでトランスコスモスのコンタクトセンターはどうなっていきますか?

 宮澤

他のサービスと連携してどのようなサービスモデルを作っていくかによると思っています。単体システムでは提供できないサービスが、Amazon Connectを利用して提供できるようになるため、今までのコンタクトセンターオペレーションの一部をさらにシステム化し、有人対応の価値を上げるようなCX向上に繋がるサービスモデルを提供できるようにしていきたいと思います。


コンタクトセンターを開設している企業は「コスト削減・効率化」という永遠の課題に対して、AI・Botによる自動化やチャットなどノンボイスチャネルの活用による解決策を模索し始めているが、すべての問い合わせを自動化・無人化できるわけではない。AI・Botで解決できなかった問い合わせが有人対応に流れるとなると、オペレータ対応のさらなる品質向上や負担軽減も平行して検討しなければコンタクトセンター品質は大きく低下してしまう。
Amazon Connectを活用することで、AI・Botによる自動対応やノンボイスチャネルへの誘導がしやすくなるだけなく、音声チャネルでも音声Botを活用することでより自動化できる範囲の拡大が可能だ。また、有人対応が必要になった場合も音声認識を活用した自動FAQ表示など、オペレータの負担削減にもつながり、より品質の高い対応が期待できる。
コスト削減とCX向上という両軸をAmazon Connectの活用でシームレスに実現することをトランスコスモスのコンタクトセンターは目指している。

※アマゾン ウェブ サービス、AWS、Amazon Connect、Amazon Simple Notification Service (Amazon SNS)、AWS Lambda、Amazon Lex、Amazon TranscribeおよびAmazon Comprehendは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。


trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

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