ホンネで語るコンタクトセンターの在宅勤務
働き方改革や新型コロナウイルス肺炎の蔓延により、在宅勤務のニーズが日増しに強くなっています。パーソル総合研究所の調査では緊急事態宣言後のテレワーク実施率は全国平均で25.7%という結果がでており、トランスコスモスでも100社を超えた在宅コンタクトセンターが日々運用されています。
一方で、“在宅勤務を今後続けるか”という方向性は、各社足並みがそろっているとは言えません。在宅勤務は、周囲に上司がいないため「働きすぎや、さぼるのではないか」という不安の声を聞きます。たしかに在宅勤務は、職場に居るときのような緊張感が薄れるなかで、個々の自己管理能力が求められます。
今回は実際に在宅勤務をしているトランスコスモスのコンタクトセンターメンバーで座談会を実施。生の声を集めて、実体験に基づいた管理の方法や在宅勤務のメリットとデメリットを紹介していきたいと思います。
【インタビュイ―】
IT機器(PC・大型プリンター)テクニカルサポートセンター
・白木 マネージャー
・黒川 事業所責任者
・佐藤 スーパーバイザー
・不動 リーダー
・奥山 コミュニケーター
・渡長 コミュニケーター
・吉津 コミュニケーター
・井藤 トレーナー
コンタクトセンターの在宅化
----------はじめに、在宅化している業務内容について教えてください。
白木:大型の精密機器を扱うテクニカルサポート業務の窓口です。メインは電話対応ですが、一部チャットも在宅化しました。
----------コンタクトセンターの在宅化は難しいと言われる中、どのような経緯で進んだのでしょうか。
白木:私どものお客様企業がもともと在宅化を推進されていたのと、グローバルでコンタクトセンターを運営しており、新型コロナウイルスに対する危機感を非常に強くお持ちでした。そのため、人命優先で2020年3月末から段階的に在宅勤務へ移行し、5/8には100%在宅勤務へ移行しました。
緊急事態宣言が解除されてからは、一部従来のセンター勤務へ戻りましたが、8月現在でも50%は在宅勤務にて対応しています。
----------PCやインターネット環境の手配など準備は大変だったように感じます。
白木:自宅にインターネット接続環境がないメンバーに、モバイルルーターを手配しました。
業務システムへのアクセスに関しては、インターネット接続環境があればVPN接続 (※1)で利用可能なシステム環境としたので、センターからリモートPCとヘッドセットを自宅へ送るだけですぐに在宅勤務が始められました。リモートPCには個人毎に制御をかけており、業務資料のダウンロード等は不可となっております。
(※1 バーチャル プライベート ネットワーク接続の略。インターネット上に仮想の専用線を作り、暗号化して接続すること)
----------在宅環境要件やインターネットの接続の必要な速度はどのように基準をクリアされたのでしょうか。
白木:在宅勤務開始前に、スピードテストを使って測定しました。モバイルルーターでも操作可能な実証がとれ、想像していたより速度が低くても使えることがわかりました。
しかし、在宅勤務が始まると自宅のインターネット環境ではツールのレスポンスが遅いと一部不満があがりました。(Wi-Fi環境・契約速度・回線安定性)。その場合、モバイルルーターを貸し出すなどの対策を実施しています。
また、セキュリティに関してはお客様企業のポリシーにあわせて、随時、変更・強化を実施しています。
<在宅勤務の様子>
生産性・品質・CSへの影響
----------在宅化によってコンタクトセンターの生産性や応対品質に影響はあったのでしょうか。
白木:在宅前の生産性を100%として、開始当初は50~60%程度まで下がりましたが、同時にコール数自体も減っていたため応対品質は維持できていました。徐々に慣れてくると、3か月後には90%以上の生産性は担保できるようになりました。
現在は呼量も戻ってきましたが、生産性も向上し、CS調査も影響は出ていません。
----------8月時点は50%が在宅勤務と伺いました。在宅勤務者とセンター勤務者で品質に差は出ていますか?
井藤:問い合わせいただいた案件がクローズした際にNPS調査を実施しています。在宅勤務者とセンター勤務者で品質に差はなく、在宅へ移行したメンバーの品質低下もありませんでした。「テレワークで頑張っているね」とコメントいただくこともありました。
奥山:お問い合わせいただく方も在宅が多かったです!
井藤:私は品質管理でモニタリングをしていますが、回線が途切れた時に在宅勤務の話をすると「しっかりした会社ですね。いい取り組みしていますね!」と評判は良かったです(笑)
----------ブランドイメージの向上につながったのですね(驚)
白木:驚いたことに、在宅起因の苦情は1件も発生しませんでした。
井藤:音声が聞こえにくくなり、ムッとされる方等がいたことは事実ありました。しかし、声色から察して在宅であることを伝えると「それは仕方ない」と納得されていました。
白木:在宅であることを隠さず伝える事は、お客様企業様と取り決めた一番のポイントでした。
----------教育やエスカレーション対応など、コミュニケーターの支援方法を教えてください。
不動:基本的にはチャットでやり取りをしていますが、文字で説明がむずかしいときは、電話や画面共有を利用しています。
今回、在宅勤務へ向けて全員が画面共有を利用できるように準備しましたが、以前から業務で利用していたため、ハードルは高くありませんでした。
佐藤:センター時に対面で教育やエスカレーション対応しているときに比べて、質問する側もされる側も、伝える力が必要となりました。怪我の功名ではないですが、この3か月で経験が増え、エスカレーションがスムーズになっただけでなく、考える力が醸成されて、自己解決するケースが増えた気がしています。
----------在宅勤務で一般的な課題でもある労務管理や稼働管理はどのように対応しているのでしょうか。
白木:コンタクトセンターはコール業務もチャット業務も常にシステムにログインし、稼働状況が管理できます。ログイン状況を常に監視し、問題があればモニタリングができます。
離席状況もツールで管理できており、センターでの運用と同じ管理が在宅でも可能です。出勤・欠勤管理と残業管理は、相手の顔を見ることがコミュニケーションとして重要だと考えているため、朝終礼をZoomで実施しています。
----------コンタクトセンターは数値管理が徹底されているので、むしろ“在宅向き”かもしれませんね。
在宅勤務によるライフスタイルの変化
----------在宅勤務で生活スタイルに変化はありましたか。
渡長:子供を保育園に送り出してあげられるようになりました。センター勤務時は17時に終業してお迎えに行く必要があり、就業時間より少し早めに退勤していましたが、在宅の場合定時まで働くことが可能になりました。子供の顔を見て送り出し・お迎えができることは小さい子を持つ主婦にはありがたいです。
白木:お昼休憩時に夕ご飯の仕込みなど有効活用されているかたもいます。
井藤:休憩時間は効率的に晩御飯の下ごしらえをしています。お肉に下味つけたり、アサリの砂を吐かせたり。あと、ニンニク料理を気にせず食べられるようになりました(笑)
白木:外食が減り、昼食代が節約できているとの声も多いです。
奥山:お昼休憩中に洗濯をしたり、お風呂掃除を早くできたり、いいことが多いです。
吉津:通勤時間の短縮だけでなく、自分のお弁当を詰める時間も節約できるようになりました。
<在宅勤務前後の生活サイクルの変化。勤務時間が増え収入が増えたとの声も>
在宅勤務のメリット・デメリット
----------マネジメント層視点で在宅勤務のメリットを教えて下さい。
白木:スキルホルダーを確保できる点が大きいです。引っ越しを機に通勤時間が影響して退職になる方が多いのですが、在宅勤務が可能であれば引き留めが可能です。
今回新型コロナウイルスの影響ではないのですが、たまたま旦那様の仕事の都合で引っ越しされ、通勤時間が片道1時間以上かかる方もいたのですが、在宅勤務が可能であったこともあり継続いただけることになりました。仮に退職されないにしても、センターへの出勤になると就業時間短縮の可能性がありますが、在宅勤務であれば以前と変わらない勤務条件で働いていただけます。
----------経験者のみ在宅勤務を許可したのでしょうか。
白木:雇用形態にかかわらず全員を在宅化させました。また、新規雇用者においても最低限電話対応が可能になった時点で在宅へ移行しました。今後はwithコロナ対策として、在宅勤務可能者をあえて採用することも考える必要があると思います。
----------在宅勤務を導入して見えてきた課題はありますか。
白木:二つあります。一つ目はトレーニングです。もちろんZoom等Webチャットで代替可能ですが、大型の精密機器を扱っていますので、どうしても実機を見ないと対応できないケースが発生します。今回は説明書やナレッジのキャプチャーを取って対応していますが、動画やVRのようなFAQの充実が必要です。
黒川:二つ目はコミュニケーションが希薄になる点です。極力、顔を出してのコミュニケーションを強化していますが、会話自体が減ってしまいます。
井藤:一人暮らしの人は”寂しい”という一面もあるため、Zoom飲み会などコミュニケーションをとる仕組みが必要です。応対品質のフィードバックをする際、以前は日ごろのコミュニケーションを大切にしていましたが、それができないのでちょっとした気遣いなど日頃のコミュニケーションを意識して取り組んでいます。
後は突発的なことですね。マンションが停電になったときは焦りました。準備が必要になります。あとは・・・運動不足が避けられません(笑)
不動:その他挙げるとすると、在宅勤務する場合はネットワーク環境がセンターに比べると少し遅くなるので、センターにいるときより少し動作が重たいことがあるので、PCのスペックを上げてもらいたいです。メモリ増設するだけでも良くなると思います。
----------今後も在宅を続けたいですか?
全員:在宅勤務を希望する人6名 どちらでも可能2名(※2)
(※2 主婦のコミュニケーターは全員継続希望。SVとLDは効果を認めつつ、継続課題もあるので併用希望)
----------継続したい人が多いですね。
白木:課題はありますが、メンバーの受けもよいので、お客様企業と連携して続けていくつもりです。
井藤:センターで勤務する管理者は新型コロナウイルスにかなり気を配って運営しなければなりません。在宅であれば、他のメンバーに感染させる心配がなくなります。
仮に家族が新型コロナウイルスに罹ったとしても本人が陽性でなければ、仕事を継続でき、業務品質維持が出来るというのが最大のメリットだと感じているので、引き続き在宅勤務を推進していってもらいたいです。
まとめ
在宅勤務の導入は、通勤時間の短縮によるプライベート時間の拡充など、働く側のライフスタイル変革に目がいきがちです。
Withコロナ時代において店舗や窓口などカスタマーとの接点が閉鎖や時間短縮される中、在宅コンタクトセンターは新型コロナウイルスの蔓延抑止として社会貢献に繋がり、そしてカスタマーと企業とのコミュニケーションラインを提供し続ける事が可能になります。そしてそれは企業の取り組み姿勢としてカスタマーからも評価され、ブランディング向上へ繋がります。
また、コンタクトセンターを管理・運営する側としても、引っ越しによる退職抑止、自立による自己解決能力の向上、労働力の確保・新型コロナウイルス蔓延抑止など人財(※3)を守るメリットがあります。
一方で課題もあります。1つ目が教育・人材育成です。特に新人のオンボーディングは、OJTを活用することが多いためオンライン教育の方法含めた代替策が必要です。2つ目が在宅環境のセキュリティ対策です。より多くの業務を在宅勤務へ移行するためには、さまざまなニーズ/ポリシーにあわせて準備や対策を続けていく必要があります。
トランスコスモスでは、取材センター以外でも100社を超えるセンターでお客様企業と在宅化を実現したノウハウをもとに、【在宅コンタクトセンターサービス】をリリースしました。
在宅環境における様々な懸念に適切に対処していくために、人と技術を融合させお客様企業の在宅化導入を推進していきます。コンタクトセンターの在宅化に興味のある方、検討される方はお気軽にこちらからお問い合わせください。
(※3 トランスコスモスでは人が財産ということから人財と表記)