1年でデジタルチャネルへ30%移行 協和のコンタクトセンターデジタル化成功の秘訣とは?!
コンタクトセンターの課題の一つとして、FAQサイトによる自己解決率向上やチャット対応など電話中心のお問合せから対応からデジタルチャネルへの移行が進まないことが挙げられます。
先端美容を追求しエイジングケア美容液ブランドNO1 ※「fracora(フラコラ)」を展開する株式会社協和様は、2019年より全社的にデジタル化への取り組みを推進。
コンタクトセンターでは有人チャットなどデジタルチャネルを導入し、2020年2月の開始から1年で電話中心のお問合せから、約30%までデジタルチャネルへの移行を実現しました。
今回は、デジタル化比率向上に向けての取り組みや課題など、株式会社協和 山崎様とパートナーとしてチャット運用を中心にデジタルでの問合せ比率向上施策を支援するトランスコスモスの古謝さんに成功の秘訣を伺いました。
※化粧品マーケティング要覧2021 2020年実績(株)富士経済
株式会社協和
本社 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-22-2 新宿サンエービル9F
創業 1960年2月
URL https://www.kyowa-group.co.jp/
株式会社協和
デジタルコンタクトセンター責任者 山﨑 ちか 様
トランスコスモス株式会社
DEC統括DX推進本部 古謝祐希
目次[非表示]
全社的なデジタル化推進の動き~テレビ広告からデジタルへ新規獲得方法の見直し
------------デジタル化推進のきっかけを教えてください。
山崎様:協和の大胆な方針転換として、それまで新規顧客流入の柱だったTV広告を2020年3月で終了し、オンラインへシフトしたことが大きなきっかけです。テレビ広告で獲得できるユーザー層の年代がどんどん高くなってきて、60才以上の女性がメインになっていました。
しかしながら会社としてメインターゲットとしたいユーザー層は40~60代だったことや、世の中の流れ的にデジタルシフトをすすめる必要があり、協和社内では2019年を「DX元年」として計画が動き出しました。
顧客対応窓口であるコンタクトセンターにかかわる私のチームのミッションは「オフラインをオンラインへ」ということで、デジタルチャネルの整備に取り組みました。
------------パートナー企業として、トランスコスモスを選ばれたのはなぜでしょうか。
山崎様:もともと協和は「持たざる経営」をキーワードに、様々な機能を外部に委託しています。そのため、デジタル化を進めていくにあたってもパートナー企業と進めていくことになりますが協和が実現したいことに対して、複数の会社と調整しとりまとめていくよりも、1社で設計から運用までお任せできる企業と組んで進めたほうが、早く確実にデジタル化のスキームを構築できるとして、トランスコスモス社にお願いすることになりました。
既存ユーザーへデジタルツールをいかに受け入れてもらえるか
------------実際に、デジタル化にあたってハードルになりそうな点はありましたか?
山崎様:既存の定期サービスをご利用いただいているユーザーは、「協和=電話で問合せ」のイメージが強く、電話が使い勝手がよいチャネルであると感じていらっしゃる方がほとんどでしたので、どうしたらデジタルチャネルやツールを受け入れていただけるかが課題でした。
デジタルチャネルやツールがいかに便利か、使えると感じていただけるか、を伝える努力や工夫が必要でしたが、認知度を上げることに注力すると「今後は電話をしてはいけないの?」や「WEBを利用しない私は時代遅れなの?」という声をいただくこともあり、コミュニケーターへの案内指示を含め、協和側とユーザーへの伝え方が難しいと感じました。
まず、オンラインへの誘引を目的に、WEBサイトの存在を知っていただくこと。そしてWEBで可能な手続き内容と、手続きの方法を知っていただくため、トランスコスモスからご提案をいただいたV-IVR(サポートコンシェルジュ https://www.fracora.com/vivr/main.html)をつくることで、お客様のハテナに応える導線を整えました。
そして、既存ユーザーが多く目にする会員誌「フラコラ新聞」に、チャットやV-IVRのご案内を掲載、お知らせメールの問合せ先をサポートコンシェルジュに変更、さらにSEO対策を実施し、Webで「フラコラ」と検索した際に、サポートコンシェルジュのページが表示されるようにしました。
サポートコンシェルジュ(https://www.fracora.com/vivr/main.html)とコンタクトセンターを紐づけたことで、ユーザーの都合の良い方法でコンタクトしていただけるようにしました。
古謝:その他にも、お問合せをする際の電話番号入手場所を調査したところ、商品の配送箱や明細書からが多かったため、明細書へのサポートコンシェルジュのQRコードの追加、配送箱へ検索キーワード「フラコラ 問い合わせ」を追加することでデジタルへの流入導線を強化しました。
スモールスタートで進めた有人チャット
山崎様:有人チャットは、まずはスモールスタートで、対応できる要件を極力最小化し、Botの補助を行なうことで、各種手続き方法のページへ誘導するようなところから始めました。
スタート当初は、顧客特定しなくて良い要件からスタートしました。その理由は、チャット対応メンバーの協和業務経験がまだ浅かったため、判断に時間をとられることを省きたかった点と、チャット対応を行なうシステムと顧客情報管理システムがつながっていなかったため、チャットトーク上で一から個人情報のやりとりをする手間をかけさせたくなかった点になります。
しかしながら、ユーザーは定期便利用者が多いことから、スタート当初の対応範囲では、チャットならではの利便性が伝わらず、当初は1日20~30件程度しか利用されませんでした。
また、“チャットをはじめました”と告知するだけでは、ユーザーはなかなか利用してくれないことがやってみて分かりました。想定ではメールや電話の代わりにチャットを利用して頂けると思っていましたが、実際には電話、メール、チャットそれぞれのチャネルには特性があって、チャットが電話やメールに置き換わることは無いということ。そのため、チャネルに合わせた活用方法も併せてご案内すべきだと感じました。
その後、コミュニケーターに業務知識を深めてもらうことや、Bot上で顧客特定をしたうえで対応できるようシステムを整えることで対応できる範囲を増やしていき、ユーザーへ「このようなご用件はチャットでどうぞ」という利用シーンをイメージいただく取り組みと認知度を高めるための施策を増やして行きました。
チャットやV-IVRの認知度を高めるために
------------チャットの利用促進にどのような取組みを実施されたのでしょうか。
古謝:チャットはあることは知っていたけれども利用したことがないユーザーに対して、まずはチャットに触れてもらう、実際に使ってチャットの有人対応を体験してもらうためのキャンペーンを企画させていただきました。
コンタクトセンターが中心に企画し、チャット利便性向上を目的に実施
古謝:このキャンペーンの反響は大きく、チャットの問合せが4.5倍に増加。ご利用いただいたユーザーから「初めて使ったけど良かった」「ちょっとしたスキマ時間に問合せできた」「丁寧に対応して頂けるのは電話と変わらないですし、今回のキャンペーン以外でも利用して行けたらと思います」など、チャットを利用するきっかけとチャットに対するポジティブなイメージを持っていただけました。
このような施策で、デジタルチャネルの利用率を20%程度までは順調に伸ばすことができましたが、そこから有人チャットの利用率が伸び悩んでいました。有人チャット利用率の伸び悩みには、アクセス方法がわからないというサイト導線の問題と、ユーザーがそもそもチャットで何が解決できるのか分からないことも原因であると考えられました。
そこで、さきほどの認知度向上のためのキャンペーンを実施し、キャンペーン内で実施したアンケートの設問を通して、チャットでできることへの理解を深めてもらおうと考えました。さらに、チャットで実現してほしい要件などもアンケート内でヒアリングも行った結果、チャットBotのシナリオに課題があることが分かり、大幅な見直しも行いました。
電話のお問合わせからデジタルチャネルへSMSの活用
古謝:最近のチャットBotの取り組みとして、未解決率を下げるために、コンタクトセンターの現場と一緒になぜ未解決になってしまうのか原因を深堀りし、回答をブラッシュアップして利用率向上を目指しています。また、電話でお問合せいただいた方の中でご希望の方にはSMS(ショート・メッセージ・サービス)をお送りしてデジタルチャネルを利用するきっかけを作っています。
------------SMSでは具体的にどのような内容が届くのでしょうか。
山崎様:1つは、受付時間外にかかってきた電話に対し、これまでは「受付時間外です」という音声メッセージを流すだけでしたが、受付時間外でもWEBで問い合わせできますよというメッセージをつけてサポートコンシェルジュへ誘導しています。一定数の方がSMSを受け取って実際にチャットやお問い合わせフォームといったデジタルチャネルをご利用いただいています。
もう1つは電話でお問合せいただいた内容に関して、口頭では分かりづらい場合にSMSを利用しています。例えば、買い物をすることで貯まるフラコインで交換できる特典は、デジタル化施策の一環としてWEB受付限定の商品を増やしました。そこで、電話でフラコインの特典交換の申し込み、お問合せをされた方に、WEB限定商品のご案内をする際にご希望の方に詳細情報のURLをSMSでお送りしています。WEBサイトをあまり利用してこられなかった方にとっては、WEBへアクセスする心理的ハードルが高いので、利用するきっかけを少しでも作れたらと思っています。
古謝:このような口頭案内にプラスする補足のご案内パターンを10個ほど用意しています。
チャネルを超えてワンストップ対応可能な問合せ窓口を目指して
山崎様:SMSの取り組みも誤送信があってはいけないので、対応要件を絞りスモールスタートで開始しました。ただ、コンタクトセンターの現場から対応範囲が狭いと利用しにくいという声や、実際にSMSでのフォロー対応をしていないと、いつまでたっても対応に慣れないということで対応範囲を拡大していきました。
チャット導入後しばらくして、電話は電話、チャットはチャット、メールはメール、と各チャネルで対応範囲を決めてしまうようになりました。しかし、ユーザーから見れば、どのチャネルも同じ「協和のお問合せ窓口」であって、こちらの都合でチャネルごとに対応用件を限定してしまうのはカスタマーエフォートが高くなると考えます。
そのため、電話だけでは伝わりづらい、あるいはWEBサイトで補足可能な問い合わせであればSMSを活用してサイトURLをご案内する、チャットで即答できない内容はメールで送るなど各チャネルの連携を意識して対応をするようにしています。上手にチャネルを超えて、ひとりひとりのユーザーにとって必要な情報を的確なチャネルでお届けできるように取り組んでいきたいと考えています。
様々な取り組みを経てデジタルチャネル30%を達成
------------デジタル比率が増えているなかで、今後取り組みについて教えてください。
山崎様:ノンボイスでの受付が増えると正確にユーザーの要件をログとして残すことができます。電話では、コミュニケーターが要約して記録するため、どうしてもコミュニケーターの主観が入ってしまいます。手間をかけずに生の声を残すことができるデジタルログは今後も活用したいと考えています。
古謝:ECサイトの不具合があった際に、チャットへのお問合せが多くなった時期がありました。電話だけでなくデジタルチャネルがあったでことで、不具合による離脱を防ぎ、より多くのユーザーへ対応ができたのではないかと思います。ユーザーの具体的な声をもとに、不具合に対して早期にリカバリー施策を打つこともできるのもデジタルチャネルの強みだと感じました。
積極的な姿勢がデジタル化を後押し~これからの協和のコンタクトセンターについて
山崎様:協和は「他社がやらないことをやる」など、行動の速さ・積極的な姿勢が評価される社風なため、現場の声やログデータをもとにより取り組みをスピードアップしていきます。
古謝:これだけデジタル化が進んだのは、協和様の積極的な姿勢があっての成果だと思います。まだ、デジタルチャネルについて目を向けてくださる企業様は多くない状況で、ご提案した施策について前向きに検討、取り組んでいただけました。
山崎様:ユーザーのインサイト・ニーズを掴むことがコンタクトセンターの使命であり、どうすればデジタルを活用してエフォートレスな体験を提供できるか、システムやWEB担当者へユーザーニーズをコンタクトセンターの関係者が「通訳」できる力をもっとつけていきたいですね。
古謝:コンタクトセンターはユーザーの購入前から購入後までの声を唯一直接収集できる組織です。単なるトラブルがあった際の窓口ではなく、マーケティング機能の一部としてコンタクトセンターが機能するようにすることを目指しています。
「(ユーザーが)怒っている」で終わるのではなく、「なぜ怒っているのか、どうすればよかったのか」コミュニケーターのスキルも向上していくことでコンタクトセンターのDX化に近づくのではないかと思います。ユーザーの特性を把握し、その人にあった適切なご案内ができるように体制や環境・システムを整えていきます。
------------トランスコスモスに今後期待することは?
山崎様:古謝さんと今後の未来像、「エフォートレスの具現化」を共有して、齟齬がないように取り組みを進めていきたいです。
コンタクトセンターで出来ることを増やすのは重要ですが、品質も大事にしなければいけません。トランスコスモスがすごいなと思うのは、施策を実施したあとに、その結果が○か✕かきちんとした判断基準をもっているところです。判断基準がないと、良いか悪いか決められず、「品質が高いとは」という基準作りで時間がかってしまいます。その点で、トランスコスモスでは、きちんと判断基準を持って施策計画、実行してくださるので、今後も頼りしています。
お忙しいなか貴重なお時間をいただきありがとうございました。
これからも、トランスコスモスはよりエフォートレスな体験の実現できるよう、ツールの導入から運用、改善活動を支援してまいります。