
日本向けのアプリ開発をリードするトランスコスモス技術研究所
ITソリューションサービス大手であるトランスコスモスグループの中で、システム受託開発を中心に事業を展開するトランスコスモス技術研究所。2019年10月にShopify Plus Partnersの認定を獲得し、Shopifyを活用したアプリ開発やシステム開発に力を入れています。同社代表取締役である下田 昌平さんにShopify導入の経緯と今後の展望について伺いました。
※本記事は2020年9月28日にShopify ブログに掲載された記事を転載しています。 |
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豊富なAPIやグローバルな市場規模が決め手に
同社は、チャットボットや動画プラットフォーム開発など、システム受託開発事業を中心に展開していました。EC市場の成長にともない、多くの企業がデジタルトランスフォーメーションを進める中で、さまざまなシステムをECと連携することで大きな価値を生み出せると確信し、EC支援事業への取り組みを始めました。多種多様なシステムとECの連携を行ううえではAPIがカギになると考え、さまざまなECプラットフォームを調査して出会ったのがShopifyでした。
「Shopify のAPIの豊富さやインテグレーションのしやすさに興味を持ち、パートナーになってアプリを開発したりAPIにアクセスしたりできるようになりたいと考えました」
実際に導入してみると、アップデートの速さやインターフェイスの使いやすさは期待以上でした。
「コロナ禍におけるローカルデリバリー機能の追加など、バージョンアップデートの速さは非常に魅力です。またマーチャント様からは、インターフェイスの使いやすさや、大量のトラフィックにも耐えうる強固なインフラ面に高い評価をいただいています」
アプリで日本市場へのローカライズを
同社はShopifyのアプリ開発やシステムインテグレーションに力を入れています。下田さんはアプリ開発をはじめた経緯を次のように語りました。
「グループ会社全体で、デジタルトランスフォーメーション(DX)のビジョンをもっています。EC支援事業においては、Shopifyをプラットフォームにして、お客様に物販物流のDXを提供しようと進めてきました。その中でやはり、アプリを作って業務を効率化していくことはすごくいい取り組みだと思いました。一つひとつカスタマイズしていく案件は今後どんどん減っていくと思っていますし、公開アプリの形でいろんな人が使えるものを開発していこうと考えました」
現在、リリースされている4つのアプリを紹介します。
・Kisuke:LINEを販売チャネルとして活用できるECマネジメントサービス。セグメント配信やリッチメニュー配信などが可能
・Uchuya Shipping Cooperation:配送日時指定や送り状印刷、追跡番号一括処理ができる
・shopping for note:noteで情報発信するためのアプリ。商品URLを貼るだけでリッチ表示が可能
・ポイントニンジャ‑Point Ninja‑:会員ランクを設定できるポイントのマネジメントシステム
以上のアプリはどれも「日本市場へのローカライズ」という視点から、日本ならではのニーズに応える機能を提供しているのが特徴です。
「Shopifyの機能はミニマムです。世界中の8割の人が必要とするものでない限り、標準機能にはならないという話も聞きました。おそらくLINEとの連携などは一生開発されないでしょう。そこで弊社が、日本の特殊なマーケットに合わせたアプリ開発を行っているのです。他にも現在、携帯キャリアメールへの到達率の低さを改善するメール配信システムを開発中です。今後は日本発で世界に通用するアプリ、サービスを構築したいと考えています」
パブリックにリリースされているアプリ以外に、カスタマー向けのプライベートなアプリもこれまでに10個ほど開発しました。アプリ開発は早いもので1カ月、長いもので4カ月ほどの期間をかけますが、開発で重要なのは最初の設計だと言います。
「そもそもAPIの利用にもリミットがあります。どのような処理を自分たちで行い、どのような処理をShopify側で行うかの設計をはじめにちゃんとやらないと、最後に設計変更が必要になってしまうこともあります。APIの仕様を完全に理解したうえで進めることが重要です。また最近では、品質を担保するための審査が厳しくなっているので、そのための期間もある程度みておくようにしています」
定期的なアップデートへのキャッチアップも欠かせません。Shopifyの開発者ブログを読み込み、月に1度は社内で更新内容を翻訳して発信するなど、情報共有にも努めているそうです。
Shopifyを活用したECサイト制作事例として、リユース事業を行う株式会社バイセルテクノロジーズの新規事業「バイセルブランシェ」をご紹介いただきました。
「このサイト制作でよかった点は、お客様のほうからShopifyの現状の仕様に寄り添っていただいて、ものすごく短期間でローンチできたことです。今後はShopify自体がコモディティ化されていくと思いますし、高いお金を払ってECサイトを立ち上げる必要はなくなっていくでしょう。ただ、その実現のためには、プラットフォーム側に寄り添ったローンチ計画やデザインが必要だと思います。他のパートナーさんも、そういう風にお客さんと進めてもらったらいいんじゃないかなと思います」
風通しの良いShopifyコミュニティの活用
同社はShopifyコミュニティとの連携にも積極的です。下田さんはShopifyコミュニティーについて「パートナー間での距離の近さ、風通しの良さが特徴的」と語ります。
「パートナー同士での特徴を理解し、それぞれが補い合い、エコシステムを構築していると感じます。弊社は技術サイドからの支援が得意なため、他パートナー様と共同でアプリを構築する企画もあります。お客様のニーズには同じようなものも多いので、個々に作るよりも一緒にやりましょうと話をしています。また、パートナー同士でミートアップやセミナーも共催しています。パートナー同士、敵対心をもっているというよりは、共存意識の高いコミュニティですね。フォーラムで同じような課題を抱える開発者に質問し、問題が解決することもよくあります」
今後も、よりパートナー間での連携を増やし、コミュニティを成長させる取り組みに力を入れていきたいと考えています。
「カナダでのShopify Uniteに参加した際に、参加するパートナーたちの熱量に圧倒されると同時に、Shopifyを支えるパートナーたちの存在の大きさを感じました。日本市場でマーチャント様が増えるために活動することも当然ですが、パートナーが増え、Shopifyがより良いプラットフォームに成長することで、マーチャント様にとっても魅力的なものなっていくはずです」
グループ全体のアセットを活用しDXを推進していく
今年4月からは、本社であるトランスコスモス株式会社と連携したECワンストップサービスの提供も始まりました。
「本社との連携にあたっては、Shopifyのグローバルな成長規模はもちろん、ヘッドレスコマースに代表される今後のEC・流通のDXへの流れの中で活用しないわけにはいかない、と説明しました。セミナーやブログ、SNSなどメディアも活用しながら、地道に啓蒙活動を続けています」
今後はトランスコスモスグループ全体のアセットを活用しながら、同社の技術力を活かしてロジスティクスやその他システムとの連携を実現し、マーチャントのDXを進めていきたいと考えています。Shopifyはその実現のための「データ基盤」です。
「6月からは、Shopifyアプリを通してトランスコスモスの持つ自社倉庫との連携を実現する『スピードロジ』というサービスも始まりました。D2Cブランドを悩ませるバックエンド業務の効率化につながればと考えています」
日本のEC化率は6%台(2019年)と、まだそれほど高くはありません。これからさらに伸びていくEC市場において、同社はShopifyを軸にEC領域のサービスの幅を拡大し、バリューを生み出していきたいと考えています。さらには、「Shopify Plusパートナーとして、エンタープライズ向けプランShopify Plusの日本市場における啓蒙活動も続けていき、アプリ開発だけではなく技術面で幅広くサポートしていきたい」と下田さんは言います。今後Shopifyが日本市場へと広がっていくうえで、同社の取り組みが大きな役割を果たしてくれそうです。