[interview]グランドデザイン社小川社長に聞く脳科学に基づいたSDGsの取り組み方
※本記事は2021年7月19日にトランスコスモスSDGs委員会に掲載された記事を転載しています。 |
みなさん、こんにちは!「トランスコスモスSDGs委員会オープン社内報」副編集長のタキザワです。今回は「脳科学に基づいたSDGsの取り組み方」をテーマに、当社の関連会社であるグランドデザイン株式会社小川和也社長に、インタビューさせていただきました。
小川和也/グランドデザイン株式会社 代表取締役社長CEO アントレプレナーとして独創的なアイデアで新しい市場を切り開く一方、フューチャリストとしてテクノロジーに多角的な考察を重ねて未来のあり方を提言。 2017年、世界最高峰のマーケティングアワードである「DMA国際エコー賞」(現ANA国際エコー賞)を受賞。北海道大学 産学・地域協働推進機構 人工知能活用マーケティング研究部門 客員教授として人工知能研究、FMラジオ放送局J-WAVE『FUTURISM』番組ナビゲーター(2017年4月~2020年3月)、沢井製薬テレビ・ラジオCM「ミライラボ」篇に出演し薬の未来を提唱するなど、多方面でフューチャリストとして活動。 人間とテクノロジーの未来を説いた著書『デジタルは人間を奪うのか』(講談社現代新書)は高等学校現代文B文部科学省検定済教科書を始めとした多くの教材や入試問題にも採用され、テクノロジー教育を担う代表的論著に。近著『未来のためのあたたかい思考法』(木楽舎)では寓話的に未来の思考法を説く。 |
グランドデザイン株式会社 生活者と商品をつなぐ買い物マッチングプラットフォーム「Gotcha!mall(ガッチャ!モール)」の開発・運営。テクノロジーで社会のあらゆる課題を解決し、新たな市場の創出やイノベーションを起こす会社。 |
「Gotcha!mall」 「Gotcha!mall」は、生活者と商品をつなぐ買い物マッチングプラットフォーム。コンビニエンスストア、GMS/スーパー、ドラッグストア、飲食店、専門店など生活に密着した実店舗を中心に約40,000店が参加、年間ユニークビジター数は1,800万人、買物総額は年間400億円を突破。脳科学に基づく報酬システムを買い物の領域へ応用した独自のシステムデザインを通じて、一人ひとりの生活者に適した商品情報やクーポンなどのインセンティブ(報酬)をマッチングし、楽しくお得な買い物体験を生み出し、国内外の生活者の買い物を支援。 |
本社オフィス移転
高山
今年の5月に本社オフィスを移転されたということで、きっかけや経緯などについて伺わせてください。
小川
新型コロナウイルス感染症が拡大していく中で、当社でもリモートワークを開始しました。リモートワークが長期化する中で、仕事の質と業績を共に向上できるのか、家で孤独を抱えているのではないか、コミュニケーション不全になっていないかなどについて、社員にアンケートを取りました。当社はエンジニアが多いこともあり、リモートワークをベースとした働き方が望ましいとの声が圧倒的で、業務効率化によるパフォーンマンス向上や経費的な観点からも、コロナが終息したあとも、働き方を以前に戻さず進化させようとの判断に至りました。リモートを刹那的な回避策ではなく、新しい働き方の一つとして持続的に機能させたいと。
そうした中で、社内外のオンライン会議が増えることを前提に、コミュニケーションスペースと個室のバランス感が良いオフィスを探していたところ、ご縁があり、こちらのオフィスに移転させていただくこととなりました。オンライン会議が増えるとともに、それに適した個室のニーズが高まっており、社内に個室ブースを増設することで働きやすさに繋がるという判断です。
高山
私達も見学させていただきましたが、とても仕事が捗りそうです。新しいオフィスのコンセプトは「パーク(公園)」にされたのですね。
小川
新しい働き方におけるオフィスが担う役割を再定義したところ、「安全・安心の上でコミュニケ-ションやアイデアの想像が活性化される環境」「リモートワークとオフィスワークがシンクロすることで働き甲斐を体感できる環境」づくりを行うべく、「パーク(公園)」を新しいオフィスのコンセプトにいたしました。各会議室・執務室のルーム名には世界の公園の名称を採用(例:Mitchell Park)しております。
「Gotcha!mall」を通じたフードロス対策支援
タキザワ
「Gotcha!mall」会員に対し「食品のお買い物におけるフードロスの意識調査」を実施されたり、学校給食のフードロス対策支援を行ったりするなど、フードロスという切り口で積極的に取組を展開されておりますが、取組に至った経緯などについて伺いたいです。
小川
データとして明らかになっていることですが、日本では、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」が年間600万トン発生しています。国民1人当たりお茶腕約1杯分の食べものが毎日捨てられている換算です。我々は年間1800万人のユーザーと4万の店舗と接点があり、ある種のハブとして、家庭部門・業務部門双方の食品ロスの削減に貢献したいと強く思っておりました。例えばスーパーとかで、総菜等が毎日大量に捨てられています。
また、売れ残りそうな状態になると赤札を付けて割引をしているのが実情です。捨てられそうなものだからと、レッテルを貼られるように公然で安く販売するというのは食べ物に対して失礼だとの意見を持っています。廃棄を減らすための次善策ではあっても、その前にできる知恵で改善したい。需給は様々な要因で変動するため一筋縄ではないものの、需要予測の精度を高めることで、ロスを減らすことは十分可能です。
例えば、特定日の惣菜の需要を「Gotcha!mall」が持つシステムで事前に予測して、可能な限り最適な数量を店頭に並べる。それでも結果的に売れ残りそうだったら、公然ではなく個々人にアプローチして、何かしらのインセンティブをつける形で買っていただけるとすれば、食べ物に対して失礼にならないのではないかと考えました
タキザワ
私も「Gotcha!mall」を使っているのですが、個別にクーポンをいただくことがあります。
小川
そうしたイメージです。そのようなアイデアをフードロス対策として取り組みましょうという提案を進めていたところ、コロナ禍となり、学校給食が休止したことで生産者や給食関連事業者が多大なる影響を受けるという事態が発生しました。そこで、捨てられそうな学校給食用の食材を束ねECで売るという事業者さんと連携し、「Gotcha!mall」会員に対して、未利用の給食食材を買っていただくきっかけを提供いたしました。結果的にすごく反響もありました。継続的な仕組みにしていきたいと思っております。
脳科学に基づいたSDGsの取り組み方
タキザワ
「Gotcha!mall」の買い物マッチングを根幹で支えている報酬システムデザインは、脳科学に基づく報酬システムを買い物の領域へ応用したものだと認識しております。脳科学に基づく報酬システムはSDGsに取り組む上でも応用可能でしょうか。
小川
もちろん応用可能です。現状のSDGs全体について、より一層の報酬システムのデザインが必要だなと考えまして、そうした意味で我々が役に立てる場面も多いのではないかと思います。ラジオのナビゲーターを務めた際もSDGs的な話を沢山取り上げたのですが、それっていい話だよねという反応が実践に至るにはまだ距離があると感じていました。
スーパーなどでレジ袋が有料化されたことに伴い、使用量の削減が実現しています。袋は必要ならお金が発生するということで、逆報酬システムと位置付けることができます。人間は報酬システムのデザインがないとなかなか継続的な行動につながらないということは、SDGsについても強く感じるところです。
人間はふわっと生きているようで、外的報酬や内的報酬、様々な報酬を動機に行動している場面は多い。そうした内的・外的報酬のデザインをするというのが我々のシステムのコアコンピタンスなんです。SDGsには報酬システムデザインが見えにくいので、我々のシステムを提供することで、さきほど取り上げたフードロスなどを含めて変えられる部分があるのではないかと思っています。
高山
フードロスだけではなく、省エネルギーなどもそうですし、報酬システムのデザインで問題解決に繋げられるようになるとよいですね。
小川
新電力への切り替えなども、ポイントが溜まるからという理由で切り替えている人なども一定数おりますし、まさに報酬のシステムの設計の巧さが物事を変えるのだなと思います。
ポストSDGs
高山
2030年にSDGsが終わることを見据えて、「ポストSDGs」のような議論も出てきていて、その1つの要素に「ウェルビーイング」を入れようとの動きがありますが、どのような指標で測定するかは定まっておりません。そうした指標を決めるときに、報酬システムのデザインの考え方も活用できるのではないかと思いますが、ご意見をお聞かせください。
小川
私達は、常日頃から脳内物質の何が分泌されるのかという観点に着目して報酬システムのデザインを実施しています。「ウェルビーイング」や幸福感といった曖昧な指標も、脳内物質の分泌という側面からアプローチしていくことも有用なのではないでしょうか。
参考サイト
<グランドデザイン株式会社>
<新型コロナ感染症への対策でどう変わる?食品のお買い物における「フードロス」意識について>
https://www.gd-c.com/pdf/GrandDesign_news_20200530.pdf
<買い物マッチングプラットフォーム「Gotcha!mall」、学校給食のフードロス対策支援を開始>
https://www.gd-c.com/pdf/GrandDesign_press_201124.pdf