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【対談】製薬企業 第3極の販路圏 DXプリホールセラー企業はなぜ誕生した? 第1弾~医薬品の供給から、治療プロトコル全体を狙う~

※本記事は9月27日にEC-X ECブログに掲載された記事を転載しています。


Session1:製薬・ヘルスケア企業を取り巻く環境と業態変革の必要性

対談者


目次[非表示]

  1. DXプリホールセラーの概念とは
  2. DXプリホールセラー企業はなぜ誕生した?
  3. 製薬・ヘルスケア企業の変革を握る二軸
  4. 消費者の変革を見極め、価値観を連動させる

DXプリホールセラーの概念とは


本多:
「製薬・ヘルスケア企業を取り巻く環境は中長期的に厳しくなることが想定されています。医療用医薬品群は、常に特許切れのリスクを抱えるという製薬会社特有の普遍的事情に加えて、研究開発動向の変化や財政的制約などによって、新薬を開発する難易度がますます上昇し、上市しても過去ほど大きな利益が期待できないと想定されるためです。

一方、OTCに代表されるH&BC製品群は、堅調だったインバウンド需要が2020年以降は激減。反動減が大きく新たな収益モデル構築が急務となっています。また、COVID‐19感染症拡大の影響で、既存品の販売戦略再構築が喫緊の課題となっています。」


鳥山:
「こうした状況を踏まえると、自らの事業領域や販路を限定しておくことはリスクにもなり得ますね。」


本多:
「そうですね。新しいビジネスモデルを実現していくためには、医薬品や既存販路の枠を超えてDXやITといった異業種との連携や提携といった手段も必要になるのではないでしょうか。」

DXプリホールセラー企業はなぜ誕生した?

鳥山:
「本日は、製薬・ヘルスケア企業を取り巻く環境や状況を踏まえ、『DXプリホールセラー企業はなぜ誕生した?』というテーマでこの場を設けさせていただきました。」


本多:
「Pre-wholesaler」は、わが国において馴染みが薄い概念ですが、欧州においては、メーカーの物流業務を代行する関連会社を指します。もちろん、欧州とわが国は医薬品やH&BC製品を取り巻く環境が異なるものの、政府は医療費償還額を減らすため、薬価を抑制する政策を今後も進めてくるでしょう。

社会保障・財政的観点からは、ますます予防や予後のプロセスに力点が置かれるとおもいます。このような製薬・ヘルスケア企業が現在直面している環境変化の兆候にどのように対応すればよいのか。当社は、製薬・ヘルスケア企業のお客様のPre-wholesalerのような役割を担うことができればと思い、テーマ設定しました。」


鳥山:
「わが国の製薬・ヘルスケア関連企業は、研究開発から製造、物流、マーケティング、営業と一気通貫したバリューチェーン機能を有しているという点では、他国とは大きく異なる強みですよね。」


本多:
「はい。わが国の製薬企業は創薬経験がある企業が複数存在しており、裾野が非常に広いという点で、他国とは大きく異なる特徴を有しています。こうした企業は、医薬品という領域において研究開発から製造、マーケティング、営業と一気通貫したバリューチェーン機能を有しています。

一方、顧客である消費者の行動は大きく変化しました。購入経路はもはやファネルではなく、ソーシャルメディアや、検索、ECなどを経由して、さまざまな順序で行われます。今日の消費者は、複数のソーシャルメディアやデジタルチャネルを通じて、かつてないほど多くの人々と興味や関心を共有する力と手段を得ています。購買活動において消費者が主導権を持つ時代に、当社はどのようにして製薬・ヘルスケア企業へ貢献できるのかという点にフォーカスし、テーマ設定しました。」


鳥山:
「そうですね。消費者の購買行動の変化は、ビジネスを変化させ、バリューチェーンやサプライチェーンも変化させ、かつてないほど強大な影響力になりました。このように消費者が購買活動で主導権を持つ時代に、当社はどのようにして製薬・ヘルスケア企業へ貢献できるのか。これからさらに注視しなければならないかと。」


本多:
「消費者はかつてないほど強くなっています。ビジネスや社会では、消費者やコミュニティの周辺にネットワークが形成されており、それを可能にするテクノロジーも加速度的に進化しました。変化した消費者、変化したビジネス、そのようななか、製薬・ヘルスケア企業のニーズに変化は生じていますか?」


鳥山:
「医療用医薬品は別として、製薬・ヘルスケア企業からECに関するニーズは年々高まっていると感じ得ております。その点についてはこれから事例を通してお話しできればと思います。」

製薬・ヘルスケア企業の変革を握る二軸

鳥山:
「まずはあらためて、製薬・ヘルスケア企業を取り巻く環境についてどう捉えておられるかをお聞かせください。」


本多:
「冒頭で少し触れました通り、環境面においては中長期的に厳しくなることが想定されています。理由は、いくつかありますが、医療用医薬品群であれば、将来的にはシェア8割に達するとも言われている後発医薬品のシェア拡大。一度浸透してしまえば不可逆ですので、創薬型メーカーにとってはアゲンストです。また、研究開発難易度も向上すると考えます。低分子医薬品からバイオ医薬品へという流れも難易度が上がるのでないでしょうか。

加え、薬価収載のハードル向上、薬価の抑制という観点においては、ブロックバスターの可能性が低下するのではないかという後顧の憂いがあります。

一方、OTCに代表されるH&BC製品群は、上述のとおり堅調だったインバウンド需要が2020年以降は激減。反動減が大きく新たな収益モデル構築が急務となっています。」


鳥山:
「業態変革の必要性が議論されていますがいかがでしょうか?」


本多:
「製薬・ヘルスケア企業自身、事業領域の再定義について活発に議論されています。私個人の見解として2つの軸があると考えています。

まず、1点目が製薬・ヘルスケア企業の担う役割変化です。本日のサブタイトルでもあるのですが、今後は従来の「医薬品群の供給」という役割から、「治療プロトコル全体での医療技術の供給」へ拡大していくと感じています。例えば、今までは、医療用医薬品群であればシック、H&BC群であれば未病・予防という領域に限定した思考でした。しかしながら、これからは未病・予防、プライマリー、シック、予後というカスタマー・ジャーニー、ペイシェント・ジャーニーを俯瞰した考えが必要になってきます。そして、未病・予防及び、予後という領域により力点が置かれてくるとおもいます。

2点目は、医薬製品群のボーダレス化です。既存の流通網を使い創薬メーカーが医療用医薬品を供給する、OTCメーカーがOTC医薬品を提供するという、従来の構造ではなく、プロトコルを横断する展開が予測されます。もともと製薬・ヘルスケア企業は、事業領域を医薬品群に絞り込んできました。これは、化学や食品など周辺産業よりも医薬品群の利益率が圧倒的に高かったためです。

しかしながら、医薬品群が高利益率という前提は、崩れる可能性があります。例えば、社会保障・財政的観点からは、ますます予防のプロセスに力点を置き始めています。また、疾患の完治が医薬品を含めた医療の究極的目標ですので、予後管理といった治療後のプロセスについても、より重視されていくと考えます。

したがって、今後は『セルフホリスティック製品』、『オプティマルヘルス製品』という概念が重視されてくるのではないでしょうか。」

消費者の変革を見極め、価値観を連動させる

鳥山:
「流通構造に変化はありますか?」


本多:
「製・配・販の流通構造については、今までのような対関係は薄くなっていくのではないでしょうか。私は製・配・販の関係を伝統的対関係と表現しているのですが、従来メーカーは原則的にプッシュ型の流通施策を基本としておりました。リテールに対しては、売上高基準によって、ランク付けし売買差益、販促費、リベートを提供。このため、売上高が大きければ、それだけ総体的なリベートが利益となって確保できる構造です。メーカーの量産量販が利益確保になり、一方でリテールの量販が利益確保になるという対関係でした。

しかしながら、消費者が変化しました。消費者はもはや受動的ではありません。複数の選択肢によって力をつけた消費者は業界に変革をもたらしています。こうした変革を受容し、業界と消費者の価値を連動させていくことに力点が置かれていくとおもいます。」


Session2はこちらから

trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

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