
Webサイトのデータ分析の切り札「機械学習」とは AI・ディープラーニングとの違いから、活用事例まで解説
第3次AIブームといわれる昨今、さまざまなシーンで生成AIをはじめとする人工知能や機械学習、ディープラーニングといった言葉が飛び交うようになり、これらはいまや私たちの業務や日常生活の中に存在しています。
たとえば、AIチャットボットは24時間体制で消費者の質問に応じ迅速かつ効率的に問題を解決し、マーケティングにおいてはデータ分析を通じて消費者の行動を予測し最適なプロモーションを提供するために活用されています。また、ディープラーニングを用いたアルゴリズムによって市場の動向を分析し、リスク管理や投資戦略の立案などにも貢献しています。
こうしたなか、データから自動的に学び、予測や意思決定を行う能力を持つ技術として、さまざまな分野で広く活用されているのが「機械学習」です。
本記事では、機械学習の基礎知識から、機械学習を活用したWebサイトの課題抽出、消費者の行動分析などを事例を交えてご紹介します。
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機械学習とは
機械学習(ML:Machine Learning)とは、 AIに属するデータサイエンスの手法のひとつです。コンピューターがデータを反復して学習し、パターンや規則性を分析して見つけ出し、予測や判断を行うことができます。
機械学習には、コンピューターに正解を示して膨大なデータを学習し、その特徴を把握させる「教師あり学習」や、正解を与えずラベルのないデータを学習して特徴や傾向を見つけて分類させる「教師なし学習」、教師あり学習の分析結果を人間が評価し、試行錯誤しながら最適解を求める「強化学習」といった種類があります。
機械学習に深く関連する用語として「AI」や「ディープラーニング」という言葉も頻出しますが、以下ではそれぞれとの違いについて解説します。
AIと機械学習の違い
AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間が行う認識や思考といった知的活動をコンピューターで再現する技術の総称です。画像や映像、会話形式の文章などの生成を可能とする生成AIをはじめ、データの分析による推測や文章・会話の要約など、さまざまな用途でAIが開発・利用されています。
一方、機械学習はAIを開発・活用するための技術のひとつです。目的に合ったデータやさまざまなアルゴリズムを用いてコンピューターが自動的に学習することにより、AIによるアウトプットの精度向上に活用されています。そのため、データサイエンスの分野では、これらの密接な関係にある技術を総称して「AI/ML」とも表されます。
ディープラーニングと機械学習の違い
ディープラーニング(Deep Learning:深層学習)とは、機械学習を実施するための手法のひとつであり、機械学習と同様にAIの開発・活用に関連する技術のひとつです。
機械学習との違いは、着目すべきデータやパターンといった特徴量をコンピューター自身が自動判別可能であることです。
ディープラーニングでは、脳の神経回路を模した複数の層からなる「ニューラルネットワーク」と呼ばれる仕組みを用いることで、機械学習モデルの精度を向上させ、膨大なデータの中から人間だけでは見つけにくい特徴を把握できるといった特徴を持ちます。
ディープラーニング、機械学習、AIの違い
Webマーケティングでのデータ分析に機械学習を活用する理由
昨今、Webマーケティングの分野においてもデータサイエンスの活用が進んでいます。たとえば、AIを使ったチャットボットや商品レコメンデーションなど用途は多岐にわたります。なかでも、Webサイトのデータ分析の高度化・効率化において、機械学習の活用は有効かつディープラーニングに比べて導入しやすいことで注目を集めています。ここでは、なぜ機械学習がWebマーケティングの用途に適っているのか、その理由をディープラーニングと比較しながら解説します。
機械学習とディープラーニングの比較
機械学習 |
ディープラーニング |
|
定義 |
データからパターンを学習するアルゴリズムの総称 |
ニューラルネットワークを活用した機械学習の一分野 |
特徴 |
特徴量エンジニアリングが重要、さまざまなアルゴリズムがある |
自動で特徴量を学習可能、多層のニューラルネットを使用 |
データ量 |
少量〜中量程度のデータでも動作 |
大量のデータが必要 |
学習時間 |
短〜中程度 |
長時間かかる場合が多い |
計算コスト |
低~中(比較的少ない) |
高(GPUやTPUとそれらのスペックが問われる場合がある) |
ディープラーニングは膨大なデータ量と多くの学習時間、高スペックなハードウェアを要する場合が多く、計算コストが高くなります。たとえば、WebサイトでのCV獲得を目的とした分析に限定した場合、ディープラーニングほどの仕様とコストで初期導入すると、費用対効果の面で高リスクかつオーバースペックとなる場合が多いです。
一方で、機械学習ではデータの質が鍵となるものの、少~中量のデータでも柔軟にWebサイトの訪問者の行動などを分析・推測してCVへと導く施策を始めることができます。Webマーケティングに初めてデータサイエンス系のツールを導入する場合、一般的なデータ量や環境、費用対効果を踏まえると、機械学習の活用から検討することをおすすめします。
データ分析に機械学習を活用するために準備すべきこと
訪問者の行動分析やCV獲得のために機械学習を活用するには、一般的に下記のような要件定義や準備が必要です。
・目的や目標の設定
WebサイトでのCV獲得における現状課題、つまり導入目的や達成したい目標をできるだけ明確に定義しておくことが重要です。
・必要なデータ収集(収集・前処理)
Webサイトのアクセスログや消費者の行動データなど、目的に応じたデータを収集します。データの欠損やノイズを除去し、ツールに対して適切なフォーマットに変換する前処理が重要となります。
こうした要件を明確化して導入に備えるには、社内の分析ツール開発担当者または、ツールやサービスを取り扱うITベンダーの専門家へ事前に問い合わせたり、相談するなどのコミュニケーションやサポートが鍵となります。
課題解決事例:機械学習を活用したCV獲得の手法
機械学習を活用するには専門的な知識や技術を要するため、社内にデータサイエンスに特化した部署とその協力がない場合、機械学習のアルゴリズム選定やシステム構築、さらに学習データのメンテナンスなどの運用を行うことは困難です。そのような場合、機械学習を搭載したWeb分析サービスの導入を検討するのが良いでしょう。
ここでは、トランスコスモスが導入・運用サポートを行うWebサイトのデータ解析サービス「trans-改善MAKER」を例に、機械学習を用いた課題解決事例をご紹介します。
WebサイトのアクセスログからCVしやすいルートを可視化
【課題】
Webサイトでの宿泊予約のCV率を向上させたいが、消費者の行動が把握できず、宿泊予約に繋げるために効果的な施策が立案できない。
【機械学習による解決】
Webサイトのアクセスログから行動全体の流れや、CVおよび入電の影響度が高い行動を把握します。具体的には、機械学習によってサイトへ来訪した消費者の行動導線を分析して、CVが増加および減少する複数のポイントを発見し、可視化します。それにより現状の課題や改善が必要な箇所を把握でき、より効果の高い改善施策の立案に繋げることができます。
プロセスマイニングの技術を活用し、Web上での消費者の行動全体の流れや、
CV・入電の影響度が高い行動を確認することが可能
WebサイトのアクセスログからCVしやすい消費者を見つける
【課題】
ECサイトへのアクセスはあるが、購入に至らない。
【機械学習による解決】
消費者ごとに将来行動を予測。CVしやすい消費者を特定すると同時にその特徴を算出します。過去の行動を分析して、CVへと繋がった訴求パターンを検出。消費者の反応が高い訴求配信の時間も抽出します。また消費者ごとの予測結果を10のランクにまとめ、各ランクごとにどのような施策を実施すべきかを自動で推察して提案することができます。
消費者ごとの予測結果を10ランクにまとめ、
各ランクごとにどのような施策を実施すべきか提案
機械学習を活用したWebサイトの分析・改善企画をワンストップで
トランスコスモスが提供する「trans-改善MAKER」は、機械学習を活用してWebサイトでのCV率向上を図るサービスです。
専門チームが分析設計から改善企画までワンストップで実施。人材育成などの手間や時間・コストがかかりません。また、分析結果の報告まで最短3週間というスピーディーな対応が可能です。
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まとめ
ここまでご紹介した内容を以下にまとめます。
・機械学習はデータから自動的に学習し、分析・予測を行うことが可能。
・機械学習の手法のひとつにディープラーニングもあるが、Webサイトの分析やCV率向上の施策では、費用対効果を考慮すると機械学習からの導入がおすすめ。
・機械学習の要件や目的の明確化、必要なデータを揃える必要があり、それらを具体化するには専門家とのコミュニケーションが重要。
・機械学習を活用したサービスを導入することで、Webサイトのアクセスログを分析し、CVしやすいルートの可視化や改善施策立案、CVしやすい消費者や時間帯などを把握することが可能。
このように機械学習を活かすことで、Webサイトの行動を分析し、課題抽出や改善案を導くことができます。目的に合ったデータサイエンス手法を取り入れることで、これまで取りこぼしてきた消費者からのCVの獲得を図ることができます。
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