DataRobotでAI民主化の階段を駆け上がる「掟破り」のアプローチ【AI Experience 2018 Tokyo】2/2

DataRobotでAI民主化の階段を駆け上がる「掟破り」のアプローチ【AI Experience 2018 Tokyo】2/2

前編では、話題の機械学習自動化プラットフォーム「DataRobot(データロボット)」を活用して「AIの民主化」を実践するための「王道のアプローチ」を、事例を交えてご紹介してきました。

しかし、この「王道のアプローチ」を実践するには、「ヒト・モノ・時間」への相当な覚悟と伴走者が必要になります。そのような覚悟をもてる企業ばかりではなく、人材も予算も限られておりスピードも求められるという現実のなかで、どうやってAIの民主化を進めればよいのでしょうか?

後編では、「王道」を辿ることが困難な企業のための回避策として、トランスコスモスが提案する「掟破りのアプローチ」についてレポートします。

 

東 直良(ひがし なおら)
トランスコスモス株式会社/DM・EC・CC統括 サービス開発本部/アナリティクスセンター統括部 機械学習推進部部長
2003年トランスコスモス入社。システム開発からキャリアをスタートし、分析領域へと拡張した、自称今風(?)のデータサイエンティスト。近年では、マーケティング領域における複数チャネルのデータを統合した解析を専門としている。DataRobotから自然言語処理系までAI導入プロジェクトにも多く参画。2018年度上智大学コミュニティ・カレッジ講師他、社内外における講演・講師経験多数。

トランスコスモスが推奨する「掟破り」なアプローチとは?

AIをスピーディーにビジネスへ導入するには「掟破り」が使える

トランスコスモスでは、AIの民主化に向けて立ちはだかる「ヒト・モノ・時間」というハードルを乗り越えるには、根本的な発想の転換が必要だと考えています。ここで改めてAIの民主化の「本当の意味」と「DataRobotを活用して解決したいこと」を整理しましょう。

AIの民主化の本当の意味は、「導入ハードル」を下げること

前編で「AIの民主化の王道は、シチズンDSを社内で育成すること」だとお伝えしました。しかし、ゼロベースで考え直すと「そもそも、シチズンDSを社内で育成しなくても、AIの民主化はできるのではないか?」という問いに行き着きます。

-東-

「シチズンDSの育成はあくまでも民主化の『手段』であり、本当にやりたいのはビジネスにAI/機械学習を素早く、気楽に取り入れる』ことであり、それが実現できれば、初めの1歩として『民主化ができた』と言えるのではないでしょうか。」

AI/機械学習の民主化とは、あくまでも手段であり、本当の目的は「導入のハードル」を下げること。
AI/機械学習の民主化とは、あくまでも手段であり、本当の目的は「導入のハードル」を下げること。

DataRobotを活用して、お客様企業が最も実現したいことは「ROIの改善」

多くのお客様企業が、マーケティングコミュニケーション領域でのAI/機械学習の活用に期待するものは「施策のROI(費用対効果)改善」がほとんどです。

例えば、テレマーケティングにおけるセールスアウトバウンドコール(電話営業)の場合、100人の顧客リストがあったら100人全員に電話するというのは非常に効率が悪いです。しかし、機械学習によってより商談に繋がりやすい、買っていただきやすいユーザーに絞って電話することで非常に効率が良くなります。これは、インターネット広告やLINEのメッセージ配信など、電話以外のコミュニケーションチャネルでも同じことがいえます。

マーケティング領域でAI/機械学習の導入に期待されているのは「ROI(費用対効果)改善」がほとんど。
マーケティング領域でAI/機械学習の導入に期待されているのは「ROI(費用対効果)改善」がほとんど。

「DataRobotを活用したROI改善」の流れとよくある使い方

それでは、DataRobotを活用したマーケティングコミュニケーション施策のROI改善を行うには、具体的にどのような流れで実施すればよいのでしょうか。

-東-

「だいたいのパターンやスキームはできています。まずはユーザーの『行動』や『属性』のデータをDMP(データマネジメントプラットフォーム)にかき集めます。そのデータをDataRobotが食べやすい形に加工して、DataRobotに取り込みます。DataRobotは、機械学習により「購買確率」や「商談成立確率」などの統計予測モデルをつくります。最後に、その予測結果を各種施策の業務用システムに投入し、各チャネルで予測モデルに基づくマーケティングコミュニケーション施策を実施する、という流れになります。

このスキームは「購買確率」などの獲得施策だけでなく、『退会確率』が高いユーザーのリテンション施策などにも活用できます。

このように、『費用対効果の高いユーザーにターゲットを絞って確度の高いアプローチをする』というのが一番よくある使い方です。」

しかし、ここでデータをDMPに収集・蓄積したり、DataRobotで予測モデルを作ったり、DataRobotと業務用システムを連携させるための仕組みを開発できるような、シチズンDSやAIエンジニアなどの人材がいないという問題に突き当たるわけです。

DataRobotを活用した「ROI(費用対効果)改善」の流れ
DataRobotを活用した「ROI(費用対効果)改善」の流れ

そこで、シチズンDSを育成するという問題を回避して、「”顧客行動予測”+”マーケティング施策”の一体化サービス」を利用するという「掟破りのアプローチ」が登場します。

以下、詳しく見ていきましょう。

「顧客行動予測+マーケティング施策」一体化サービスとは?

「”顧客行動予測”+”マーケティング施策”の一体化サービス」とは、結論から言うと、「DMPでデータを統合・加工」するプロセスと「DataRobotで購買確率を予測」するプロセス、そしてAI/データドリブンコミュニケーションの施策を実行するプロセスを、トランスコスモスのような施策部分も担っているアウトソーサーにまとめて委託するという形態です。

下図の橙色の部分がそれに該当します。

「”顧客行動予測”+”マーケティング施策”の一体化サービス」の対象範囲
「”顧客行動予測”+”マーケティング施策”の一体化サービス」の対象範囲

まずは、お客様企業側で「過去に蓄積したデータ」を準備し、そのデータを使って「実現したい施策の内容」を検討していただきます。

アウトソーサーは、AI/データドリブンコミュニケーションのために用意した専用のDMPにそのデータを格納し、機械学習に活用できるように統合・加工します。

そして、アウトソーサーのデータサイエンティストがDataRobotを使って予測モデルを構築し、確度の高いユーザーのリストを抽出、AIエンジニアが、それをお客様企業の各種チャネルの業務用システムにセットアップし、最後にオペレーション担当者が高確度のターゲットユーザーに対してアプローチするという流れになります。

何のデータを使って何をやるのかを決めていただければ、データの加工も分析も、分析結果のセットアップ作業やアプローチ施策の実施もトランスコスモスのようなアウトソーサー側で代行するというものです。

「”顧客行動予測”+”マーケティング施策”の一体化サービス」の模式図
「”顧客行動予測”+”マーケティング施策”の一体化サービス」の模式図

なぜ「掟破り」なのか?

では、このようなAI/データドリブンコミュニケーションのアウトソーシングサービスを利用することが、なぜ「掟破り」なのでしょうか。

-東-

「日本企業はもともと分析業務やデータベースを自社で内製化したがる傾向が強いです。AIの民主化についても同様で、まずはシチズンDSを社内で育て自力でやっていかなければいけないという通念に捕らわれがちです。その結果、『王道』を歩むことばかりを考え、いたずらに時間をかけてしまう傾向があります。その通念を覆すやり方なので『掟破り』というわけです。

また、トランスコスモスにとっても『掟破り』です。本来、我々は代理店なのでDataRobotを販売し、お客様企業にコンサルティングを行い、ひとりでも多くシチズンDSを育成していくお手伝いをしなければいけません。つまり『王道』のやり方を推進する立場にいるのです。

それにも関わらず、なぜ、シチズンDSを社内で育てなくてもよいというサービスを提供するのかというと、やはり現実はAIの民主化のために十分な『ヒト・モノ・時間』をつぎこめる企業ばかりではないと考えているからです。

トランスコスモスとしては、あらゆるお客様企業がAIや機械学習の恩恵を得られるようなアウトソーシングサービスを用意することが結局はAIの民主化につながり、しかも最短の立ち上げスピードで導入できるはずだと考え、このようなサービスの提供形態をご提案しています。

もちろん、DataRobotさんの了承は得ておりますが、とはいえ、このやり方はイレギュラーなものですので、あえて『掟破り』という言い方をさせていただきました。」

アウトソーシングサービスを利用するメリット

このようなAI/データドリブンコミュニケーションのアウトソーシングサービスを利用する最大のメリットは「立ち上げスピードの速さです。ただ、なぜスピーディーにできるのかという理由を紐解くと、様々な副次的なメリットがあることに気がつきます。

例えば、データを統合・加工するための専用のDMP環境やそれを構築・運用する専門のAIエンジニア、マーケティングコミュニケーション領域に強いデータサイエンティストやプランナーなどの人材を自前で用意する必要がなくなります。また、DataRobotなどのソリューションを導入しただけでは、各チャネルでのアプローチの施策立案やクリエイティブの制作、オペレーションのノウハウなどの問題までは解決できません。

しかし、AI/データドリブンコミュニケーションのアウトソーシングサービスを利用することで、それらの周辺課題も含めたトータルなサポートを受けることができます。まずは、こうした「掟破り」のアプローチでAIの民主化の世界に飛び込み、その価値や成果をいち早く体験してから、改めて「王道」を歩むという選択肢もアリなのではないかと思います。

「顧客行動予測+マーケティング施策」一体化サービスには多くのメリットがある
「顧客行動予測+マーケティング施策」一体化サービスには多くのメリットがある

AI/データドリブンコミュニケーションの実践事例

事例①「Webサイトでのリタゲ広告配信効率化」施策

この事例は、DataRobotで確度の高いユーザーのセグメントを見つけ、確率上位のセグメントを優先するように広告配信数を調整することで、リターゲティング広告のROIを130%以上改善した事例です。

具体的には、ターゲットセグメントを日次で生成し、優良顧客の80%を補足する高精度な予測モデルを構築しました。そのモデルを使って、セグメントごとに入札額を変更し、コンバージョンしやすいユーザーには広告配信数を増やし、低いユーザーへは広告配信数を減らすことで、従来の広告運用と比べ130%以上のROI改善に成功しました。

ここで注目すべきことは、この仕組みを導入するためにお客様企業側でやっていただくことは、自社サイトに専用のタグを入れるだけでよいことです。実際、たった2ヶ月でこの仕組みを立ち上げることに成功しました。

事例①「Webサイトでのリタゲ広告配信効率化」施策
事例①「Webサイトでのリタゲ広告配信効率化」施策

ただし、広告の費用対効果は高まったものの、全体で見ると獲得できたユーザーの総数は2割ほど減少したという課題が残りました。これを「リストシュリンク問題」と呼び、後ほど詳しくご説明します。

事例②「コールセンターでの獲得件数向上」施策

先ほどの事例は、AI/データドリブンコミュニケーションの出口施策がリターゲティング広告でしたが、この事例は出口が「電話」だということです。数万件のお客様リストから、DataRobotで商談に繋がりやすいユーザーを絞り込んで、アウトバウンドコールによるアプローチをした結果、過去のKKDリスト(=勘と経験と度胸で作ったリストの通称)と比較して、獲得件数が8%アップした事例です。

事例②「コールセンターでの獲得件数向上」施策
事例②「コールセンターでの獲得件数向上」施策

この事例では、DataRobotで学習するためのデータを準備する段階では、既存データの仕様確認や加工作業のため、お客様企業もトランスコスモスもそれなりに労力を必要としました。

しかし、使用するデータの形式が確定した現在の定常運用の段階では、月にたった1時間で確度の高いターゲットリストが生成されるようになっています。それをコールセンターの現場マネージャーが架電に日々利用するという仕組みになっています。

ちなみに、獲得件数が8%上がるということはだいたい数百万円の導入効果が出ているということになります。

 

「リストシュリンク問題」への対応

さて、DataRobotに限らず、機械学習を活用して『費用対効果の高いユーザーにターゲットを絞って確度の高いアプローチをする』という施策を展開すると、必ず「リストシュリンク問題」に直面することになります。

「リストシュリンク問題」とは、効率(ROIやCPAなど)と引き換えに規模(顧客数や売上額など)が減少することをいいます。予測モデルの精度のみを妄信し、確度の高い優良顧客ばかりにフォーカスしてしまった結果、リストが煮詰まってビジネスとしてスケールダウンしてしまうジレンマに陥るのです。

例えば、通販会社で、現状は1000人のユーザーに1000通のダイレクトメールを送っているものの、無駄打ちが多く悩んでいる状況を想定しましょう。そこでDataRobotによる予測モデルを構築し、購入確率の低いユーザーを切り捨て、確率上位の顧客に絞って500通だけ送ればROIは格段に向上させることができます。

しかし、切り捨てられた確率の低いユーザーの中にも購入に繋がっている場合があるため、「ROIは上がったけれども、売上額全体としては減ってしまっている」という現象がしばしば発生します。しかも、確率の低いユーザーの中には、現在は低確率でも将来的に高確率に化ける可能性をもった潜在的な優良顧客が含まれている可能性もあります。そうした未来の優良顧客を育成する機会も失われてしまうわけです。

予測モデルの精度のみに注目し、単体施策の局所最適化ばかりしていると、このような現象が起きてしまうのですが、そもそも、予測モデルに基づき低確率のリスト500通を切り捨てたことで浮いたコストはどこにいくのでしょうか。それを上位セグメントの購入確率や購入単価を高めるための施策に投入したり新規獲得キャンペーンに充てたりすることができるはずです。

そこでトランスコスモスでは、予測モデルに基づいていたずらに効率を追及し、アプローチの規模を縮小するのではなく、明らかに無駄打ちになっているセグメントを外すことに活用し、それによって浮いた予算を別の媒体やチャネルにまわし、新規顧客層の開拓や見込み客のナーチャリングを強化するといった、トータルな視点でのマーケティングコミュニケーションのプランニングとオペレーションの全体最適化をご提案しています。

リストシュリンク問題への対応
リストシュリンク問題への対応

最後に ~AIの民主化に必要なものとは?

ここまでAIの民主化の最前線ともいえる事例やサービスが一堂に会した「AI Experience 2018 Tokyo」の内容を、トランスコスモスがご提供したセッションを中心にご紹介してきました。最後に、同イベントの基調講演でDataRobot社のCEOであるJeremy Achin氏が力説されていたメッセージをご紹介します。

-Jeremy Achin氏-
近い将来、あらゆる企業のあらゆる業務で「AI化された世界」が訪れるでしょう。しかし、データサイエンティストやAIエンジニアなどの専門家の人材不足問題はなくなりません

Jeremy氏は、その問題を解決するには機械が自力で学習できるようになる、すなわち機械学習の自動化が必要になると考えDataRobotを立ち上げました。

しかし、「AI化された世界」が現実味を増してきたなかで、企業がAIの民主化を実現し、競争に勝ち抜くために必要なことは、最新のAIソリューションを導入することでも、AIに詳しいコンサルタントを雇うことでも、社内にデータサイエンティスト部隊を発足させることでもありません。

AIの民主化に必要なものとは、企業が持つ自身の「企業 DNA」を「AI DNA」へと変えていくことであり、そのためのAIロードマップをつくることだそうです。

その際に、例えばDataRobotのように経験が豊富なパートナーの助けを借りつつ、少しずつAI DNAを獲得し、着実にロードマップを進めていくのがよいのではないか、それがJeremy氏からのアドバイスでした。

『デジタルトランスフォーメーションパートナー』を標榜するトランスコスモスとしても、覚悟をきめて真正面からAIの民主化の「王道」に挑むという企業にとっての「伴走者」として、もしくは限られたリソースの中でスピーディーにAIの恩恵を得たいという企業にとっての「アウトソーサー」として、あらゆるお客様企業におけるAIの民主化のお手伝いができれば幸いです。

 


これらのサービスに興味がある方は、専任のスタッフから詳しくご説明させていただきます。

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