次世代コンタクトセンターの世界~第1章:変わりゆく、コンタクトセンターのデジタル活用

次世代コンタクトセンターの世界~第1章:変わりゆく、コンタクトセンターのデジタル活用

岩浅 佑一

 

DEC統括
デジタルコミュニケーションセンター総括
ソリューション企画部

コンタクトセンターは、デジタル時代のコミュニケーションの本丸

近年、消費者はスマートフォンやSNSなどのテクノロジーを活用し、デジタルとリアルの多様なチャネルを組み合わせてコミュニケーションを行うようになってきています。その傾向は消費者同士だけでなく、商品の購入や問い合わせといった消費者と企業のコミュニケーションでも同様です。

トランスコスモスのAI研究所「コミュニケーションサイエンスラボ」では、毎年独自に「消費者と企業のコミュニケーション実態調査」を行っています。図1をみてください。

2016年から2019年にかけて、LINEなどのメッセージングアプリやチャットの利用が拡大しており、新たなコミュニケーション手段として定着し始めていることがうかがえます。

図1:LINEなどのメッセージングアプリやチャットが、新たなコミュニケーション手段として定着

このようなコミュニケーションチャネルの多様化とデジタル化を受けて、企業のマーケティングコミュニケーションも大きく変化してきています。

昔のようにマスメディアや流通網を使って一方的に情報を発信するだけでなく、マス、電話、店頭、ホームページなどの従来型のチャネルをはじめ、SNSやチャットなどの新たな手段を整備し、デジタルとリアルを組み合わせた次世代コミュニケーションの構築を推し進めています。

消費者は、商品やサービスを購入・利用しアフターサポートを受ける一連のプロセスにおいて、企業とさまざまなコミュニケーションをとります。その過程で、企業が提供したカスタマーエクスペリエンス(顧客体験価値。以下、CX)によって顧客ロイヤルティを醸成し、ファンを生み出すことができれば、企業はブランドイメージを強化して競合との差別化を図ることが可能になります。

そして、デジタル時代のコミュニケーション戦略の本丸ともいうべき存在がコンタクトセンターです。

コンタクトセンターは今、労働環境の変化とAIなどの最新テクノロジーの登場で大きな変革期を迎えています。そんな次世代コンタクトセンターの世界をご紹介しつつ、デジタル化するコミュニケーションと多様化するワークスタイルがコンタクトセンターの運営・管理に及ぼす影響について考えていきたいと思います。

次世代のコンタクトセンターが果たす役割とAI活用の方向性

人口減少や高齢化を背景に人材採用難が進む昨今、在宅ワークや高齢者採用、グローバル化などの多様なワークスタイルに適応することは喫緊の課題となっています。

パーソル総合研究所・中央大学の「労働市場の未来推計2030」によると、労働需要に対する欠員数が2018年時点で120万人のところ2030年には644万人と5倍近く拡大し、「超」人材不足時代を迎えることになります。もちろん女性やシニア、外国人といった層から人材を確保するアプローチも必要ですが、これだけの規模の人材不足に対応するには、従来のやり方の延長線では到底まかないきれません。

コンタクトセンターも当然このような人材難の問題に直面し、大きく影響を受けることになります。図2の対策4にあるように、コンタクトセンターが「超」人材不足時代を生き残るためには、AI・ボットを活用した無人対応やRPAを駆使した業務の自動化を促進し、生産性を改善する取り組みが不可避なのです。

図2:コンタクトセンターが「超」人材不足時代を生き残るためには、AI・RPA活用が不可欠

ただし、コンタクトセンターにおけるデジタル化やAI活用への取り組みは、そのような社内業務の自動化・効率化といった内向きの課題だけに留めるべきものではありません。顧客の不満を解消し、感動体験を提供することで、ファンをつくり出していくためのデジタル技術やAIの活用とはどう在るべきなのでしょうか。

コールセンターやダイレクトマーケティングの業務を経験し、CRM戦略やCS経営の考え方に触れたことがあるビジネスパーソンであれば、おそらく一度は「グッドマンの法則」を耳にされたことがあるでしょう。「グッドマンの法則」は、20世紀後半の米国における市場調査結果から得られたいくつかの法則をまとめた概念で、カスタマーサービス論における非常に重要な法則とされています。

図3は、トランスコスモスが前述の調査結果をもとに、現代の日本における「グッドマンの法則」を再構築して図解したものです。このフローチャートから、消費者が商品やサービスに不満を抱いたとしても、迅速な顧客サポートによってケアすることでCXを提供できれば高確率で再購入(ロイヤルカスタマー化)につなげられますが、ケアに失敗すればほとんどの顧客が二度とはリピート購入しない「致命傷」に至ることがわかります。

図3:「ファンや感動体験をつくるために」データやAIをどのように活用できるか

従来のコールセンターの守備範囲は、このフローチャートの中央上部、企業に電話で直接不満を伝えてきた顧客に対してのみ受け身で対応するという限定的なものでした。しかし、テクノロジーの進化と消費者のライフスタイルの変化が進んだ現代においては、コールセンターはコンタクトセンターへと進化し、活躍できる範囲や果たすべき役割が拡大しています。
それを具体化したものが、図4の弊社が考える次世代コンタクトセンターのビジョンです。

図4:トランスコスモスの次世代コンタクトセンターのビジョン

AIやデータを活用した最新技術と、ヒトによる親身な対応を組み合わせたチャネル統合型コミュニケーションにより、顧客が企業と好きなときに、いつでも、さまざまなチャネルでつながることができるような顧客接点を構築します。そして、消費者の情報収集や相談対応をバランスよくサポートし、ファンを育成するサービスプラットフォームを展開することが可能になります。

たとえば、チャットや音声による自動応答など、電話以外のデジタルチャネルを活用すれば、顧客応対を迅速化することができます。またビッグデータやAIをうまく活用することで、オペレーターのアシストや管理業務の自動化により応対品質を向上し、顧客の期待を上回る感動体験を創り出すことも可能です。さらには、SNSを活用したアクティブコミュニケーション(企業が消費者のWeb上でのつぶやきなどに能動的に働きかける施策)を行うことで、従来チャネルではリーチできなかったサイレントマジョリティに対してもケアを施すことが可能になります。

このように、次世代コンタクトセンターにおけるチャネルミックス戦略とAI活用は、対内的な業務効率化だけでなく対外的なCX向上の効果も同時に狙って推進していくスタイルが業界スタンダードになるでしょう。

そのためには、図5のように、顧客のライフスタイルや嗜好に合わせて最適なコミュニケーションチャネルをコントロールし、AI・データを駆使することで顧客の解決苦労度(CES)を下げ、より迅速な問題解決を実現し、同時にひとりひとりの「個客」に合わせた気の利いた情報提供やプラスアルファの提案を可能にし、CXを高めていくようなコンタクトセンターマネジメントが今後はますます求められるようになります。

図5:デジタル化やAI・データ活用に対応した、顧客エンゲージメント重視のコンタクトセンター像

トランスコスモスにおけるデジタル化やAI活用への取り組み事例

では、実際にトランスコスモスで取り組んでいる施策のなかから、具体例をご紹介しましょう。

昨今、従来の音声IVRに代わるナビゲーションの仕組みとして、スマホを活用したビジュアルIVRの活用が進んでいます。図6のように、ビジュアルIVRならば、ホームページからサポートサイトTOP画面への誘導をスムーズにし、音声IVRからSMSでサポートサイトのURLを送信したり、顧客がコールセンターに架電したときカスタマーサービスのメニュー画面を表示させたりすることも可能です。

図6:ビジュアルIVRを活用したチャネルコントロール

スマホの画面上に、サポートコンテンツだけでなくコールセンターの混雑状況を開示することで、電話がつながるまで待つ余裕がない顧客をFAQやチャットボットに誘導できます。セルフヘルプや無人サポートならば24時間365日対応が可能なので、急いでいる顧客に対しても迅速な不満解消を図ることができます。

ちなみに、トップページにサポートサイトへのリンクを配置した場合と、2階層以下ページに配置した場合では、過去の経験上、3倍以上のアクセス数の差が発生します。トップページからFAQへの導線を太くしたいと思っても、コールセンターとWebサイトの担当者が異なるため、なかなか思うようにサイトのUIを改善できないといことはよくあることです。

しかし、そのような社内事情は消費者の知ったことではありません。次世代コンタクトセンターの関係者には、コールやWebなど単体チャネルのことだけでなく、チャネルの垣根を越えて自社の顧客接点全体の導線設計から考えるような高い視点での取り組み姿勢が求められるということを、この場を借りて強調しておきたいと思います。

トランスコスモスでは、Webとコールの垣根を越えた取り組みとして、これまで断絶していた、インターネットの情報とコールの情報を連携させる開発に成功しました。これによって、コールオペレーションの効率化のみならずクロスセル/アップセル提案などが可能になり、コスト削減だけではなくプロフィット貢献も担えるような付加価値の高いコールセンターづくりを進めています。

「コストセンターからプロフィットセンターへ」というスローガンを掲げているコールセンターは、昔から少なくありません。しかし、残念ながらコールセンターのプロフィット貢献はなかなか実現してこなかったという歴史があります。その原因はコールセンターという単体チャネルで物事を考えてきたからではないでしょうか。

デジタル技術が発達した今こそ、WebやLINEなどの他チャネルとの組み合わせによって、顧客ロイヤルティの醸成と企業収益の向上に貢献する方向性で施策を組み立てるというアプローチを採ってみるのもよいかもしれません。

クラウド型コンタクトセンターサービスは無視できない存在に

以上で述べてきたような、「超」人材不足時代に対応した業務の自動化・効率化や、AI・データを活用した顧客エンゲージメント強化といった施策を実現していくには、専用のインフラを構築する必要があります。

図7:Amazon Connectを活用したクラウド型コンタクトセンターサービス

図7のようなAmazon Connectなどを活用したクラウドサービスを活用すれば、SMS送信や『Click to Call(Webブラウザに表示された番号へクリックで発信)』といった次世代コンタクトセンターに必要な機能を、予想以上にスムーズに実装できることがわかります。

このように、最近はレガシーのコンタクトセンターシステムよりもクラウドサービスのほうが、素早くインフラを整備でき、しかも他の最新の技術と相性が良いということが多くなってきています。コンタクトセンターにおいて、クラウドサービスとそのインフラ上で作動するさまざまなソリューションの活用はもはや無視できない存在になっていると考えるべきでしょう。

 

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