ニューノーマル時代における電話窓口の在り方 〜電話応対の自動化・AI化〜 セミナーレポート

コロナ禍の影響は業界によって大きく分かれています。ネットサービス業界での電子商取引の利用拡大、アミューズメント関連ソフトの販売好調、次世代規格5Gにおけるインフラ需要など、業界によっては明るい話を聞きます。一方で、電子部品・半導体業界の対中規制強化の懸念、一過性で終わった家電業界における定額給付金の効果、苦戦する自動車業界の瞬時販売など、厳しさが増している業界もあります。

こうした状況のなか、今までの常識にとらわれない本格的なデジタル変革が動き始めています。本記事では、Withコロナ・Afterコロナを見据え、電話応対の自動化・AI化といった側面からデジタル活用方法をご紹介します。


登壇者紹介)

磯部 健 トランスコスモス株式会社 デジタルコンタクトセンター統括 デジタル推進部 AIソリューション課(2021年3月時点)


目次[非表示]

  1. ニューノーマル時代のコンタクトセンター
  2. 音声AIの立ち位置
  3. 音声AIの活用方法
    1. 1. よくあるお問い合わせでの受付
    2. 2. 宿泊予約受付
    3. 3. 電話注文受付
    4. 4. 配送状況確認
    5. 5. 面接予約受付
  4. 音声AIと有人対応の組み合わせ
  5. まとめ

ニューノーマル時代のコンタクトセンター

新型コロナウイルスの影響で、コンタクトセンターを取り巻く環境も変わってきています。

Beforeコロナでは、BCPの観点から冗長化・多拠点化がメインでした。具体的には、台風によるシステム障害や地震などの大規模災害といった、短期的・局所的に発生する事象への対応を目的としていました。チャネルは主に電話やメールで、従業員の働き方もフルタイムあるいは時給制パートがほとんどでした。

ところが、パンデミックという長期的かつ世界規模の事象に、従来の拠点分散型では対応しきれなくなっています。コロナ禍では、在宅オペレーションやそれに伴う働き方の多様化が進むと同時に、デジタル化による応対の自動化や効率化も加速しています。そしてAfterコロナでは、働き方の多様化やデジタル対応はさらに加速すると予想されます。


今後もパンデミック発生時においてコンタクトセンターが抱える課題として、次の事項が挙げられます。

・感染者発生時の窓口閉鎖リスク
・席数減少による受電可能席の不足(ソーシャルディスタンス確保)
・不要不急における非対面でのご相談の増加
・外出制限による人手不足
・お客様の自己解決が進まない
・センター運営によるコスト、生産性効率、品質

この課題に対して今後目指すべき姿は、「分散型の業務運営」や「デジタルチャネル導入による効率化」となります。


在宅運用の推進といった場所の分散とあわせて対応チャネル自体も分散させることで、リスクの軽減が可能になります。また、チャネルのデジタル化を進めることは、同時対応による業務効率化の推進とあわせて、自動応答導入による自己解決の促進にもつながります。

実際に、消費者と企業のコミュニケーションではデジタル化が進行しています。特にスマホを使った、メッセージアプリやWebチャットなどのテキストコミュニケーションが普及・定着し始めています。

しかし、いまだ従来のチャネルである電話の利用比率は8割近くを占め、一定層のお客様は電話によるコミュニケーションを重視している状況です。


消費者と企業のコミュニケーション実態調査2020:https://www.trans-cosmos.co.jp/data/2020dec/


以前、トランスコスモスが行ったチャネル提供割合のアンケート結果からも、電話やメールは依然として主たるチャネルとなっており、音声Botやチャットサービスはこれからのチャネルであることが分かります。



今後の課題は、主なチャネルである電話対応をいかにデジタル化していくかにあると考えられます。

音声AIの立ち位置

矢野経済研究所のデータでは、「音声対話型システムの市場規模は拡大し続ける」との予測が出ています。音声を起点としたサービス、つまり電話の需要は依然として有効なチャネルとして存在し、その中でAI化も進んでいくことが読み取れます。

しかし、音声AIによる自動応答はまだ技術的に黎明期といえます。

~現在の自動応答が抱える課題~

・IVR音声に機械っぽさが残り不自然である
・認識率がいまひとつ高くない
・擬人化やドロップ時の救済法などの運用ノウハウが未熟
・業務カバー領域が狭いうえ、システム連携も大変

そのため、まずは可能なレベルから始めて、段階的により効果の高いものに進めていく必要があります。


初期段階の使い方としては、シンプルで定型化した対応の自動化や、オペレーターへ転送する前に一時処理行うことなどが中心になると考えられます。具体的には次のようなものです。

・IVR(※1)の切り分けをボタンプッシュの代わりにお客様の声で行う
・回答キーワードをあらかじめ用意し、受付または回答をする
・本人認証に必要なお名前や会員番号などを音声AIで聴取しオペレーターへ連携する

※1)IVR (Interactive Voice Response):企業の電話窓口において、音声による案内とお客様の入電理由に応じた番号入力(もしくは音声認識)で用件ごとに適切な担当者への振り分けを行うシステム。



現在、主な音声AIの活用方法としては、例えば、単純業務の自動化や夜間受付、インフォマーシャルのピーク時間にオペレーターが受電しきれない分の対応、オペレーターにつなげる前に問い合わせ内容をヒアリングするといったケースなど、業務領域を絞って導入を行っています。

トランスコスモスが構築を進めているB to Bの物品受注対応の事例でも、まずはシンプルで限定的な範囲から音声IVRの導入をスタートしています。そこから段階的な拡大を図り、最終的には外部DBとの連携を含め、人がいなくても自動で完結できることを目指しています。

まだまだ課題の残る音声AIですが、対応できるところから着手し、段階的に対応範囲を拡大していくことで、今後さらに活用の幅が広がると注目されています。

音声AIの活用方法

音声AIの具体的な活用方法を5つご紹介します。


1. よくあるお問い合わせでの受付

よくある簡単なFAQへの置き換えを実施し、オペレーターの有人対応工数を削減することが可能です。

例えば、会員Webページのパスワード忘れやログイン操作にお困りのお客様受付センターでの利用シーンでも、音声AIで手続きや画面操作、パスワード忘れといったご用件を伺い、回答を案内することができます。


2. 宿泊予約受付

ホテルなどでの宿泊予約受付にも活用ができます。日付や宿泊数、人数、禁煙・喫煙など希望を伺った上でそれに即したサービスを紹介し、最後に受付内容をSMSでお送りします。


3. 電話注文受付

ここで想定しているのは、既存会員の方からの注文受付です。IVRの切り分けをボタンプッシュではなくお客様の声で行います。プッシュ式の場合はボタン操作が必要ですが、音声AIは普通に電話で話す状態で対応できます。

ポイントは次の通りです。

・「えーっと」や「えー」などの不要語は省いて認識させることができる
・会員番号や電話番号など、認識していることが確認できるよう復唱
・有人対応に切り替えるフローを作っておくことで、安心感につながる
・入電時に固定・携帯を判別、またはヒアリングを通しSMSを送信
・注文完了時にSMSで注文内容を送ることで、目視確認できる



復唱はスクリプトが長くなってしまいますが、お客様にはきちんと認識されたという印象を持っていただけます。また、有人対応への切り替えや注文完了時のSMSなどで安心感を高めることができます。デジタルの対応であっても、お客様に安心していただける工夫が施せます。


4. 配送状況確認

流通業界などの配送状況確認でも音声AIを活用することで、スタッフの工数を削減できます。ここでは注文番号などで注文内容を識別して、出荷ステータス状況を確認し返答するというシンプルなフローを想定しています。



配送業者が間に入る場合、自動応答では少しハードルが上がりますが、出荷情報をどこで確認するかを決めておくことで実現可能です。作り方によっては、お客様の連絡先をヒアリングして、固定電話の場合には折り返し有人対応、携帯電話にはSMSで連絡といった方法も考えられます。


5. 面接予約受付

新規採用の面接予約受付も、音声AIの対応を活用することでオペレーターの対応時間の短縮・効率化ができます。本ケースでは、応募者が手元に必要事項を閲覧できる状態でお問い合わせいただいていることを想定しています。



フローとしては、まず申し込みの店舗番号を確認して、応募したい店舗の情報を確認します。その後、お名前や希望シフトなどの情報をヒアリングして、面接日の設定を進めていきます。予約可能な日時をご提案し面接日を設定して受付完了、あるいは希望日をヒアリングしオペレーターから折り返すこともできます。

音声AIと有人対応の組み合わせ

様々な活用シーンを紹介してきましたが、有人対応に切り替えた際の対応もご紹介します。

音声AIで解決しなかった場合やお客様が望んだ場合、オペレーターが対応する導線を作りますが、オペレーターは音声AIから対応を切り替えた際に、受付画面で音声AIとお客様がやり取りした内容を確認することができます。

これにより、お客様は再び同じことを伝える必要がなくなり、オペレーターも内容を把握した上で対応できるため、効率よくスムーズな会話を進めることができ、有人だけの場合よりも通話時間削減に繋がります。また音声AIだけで解決出来ない内容をオペレーターが対応をすることで、問い合わせしても解決できないといったお客様満足度の低下を防ぐことができます。

また、対応切り替え時にオペレーターの回線がふさがっていて接続ができない場合も想定されますが、コールバック受付のフローを組み込むことで解決できます。


※ 今回ご紹介した5つの活用シーンや、有人対応に切り替えた際の対応についてのデモ動画視聴をご希望の方は、「音声AI活用デモ視聴希望」と記載のうえ、こちらからお問い合わせください。

まとめ

音声AIの導入は、注文や修理等の受付業務ですでに始まっています。あふれ呼対応や時間外対応などの人では対応しきれない時間帯での利用が多いですが、変わったところでは配送ドライバーの日報受付などにも利用されています。

昨今の人手不足でオペレーターの採用や育成も難しくなるなか、今後音声AI活用の重要性が高まってきます。

全てを音声AIに任せるのではなく、人とAIが共存した使い方を考えることで、活用シーンはより広がります。音声AIで足りるところは自動応答で効率的に時間や工数を削減し、人でなければ不可能な部分は人が対応していく、そうした音声AIと人との共存を将来像として描いています。

トランスコスモスの誇る音声AIサービスはこちらでご紹介していますので、ぜひご覧ください。


~トランスコスモスの音声AIサービスの強み~

・各業界で実績を持つトップベンダーによるサービス提供
・CC運用と連携した柔軟な構築・運用
・クラウドベースのサービスで迅速な立上げ・改修
・レポート機能充実でドロップ率の改善が容易


トランスコスモスでは、今まで培ったコンタクトセンター運用の知見を生かし、お客様の業務に合わせてシステムを構築することが可能です。ぜひお気軽に担当営業、もしくはこちらからお問い合わせください。


trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

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