接続性の時代におけるCXの重要性

モバイル端末の普及や、ソーシャルメディアの台頭によって、“我々は以前とは全く新しい「接続性の時代」に突入している”、とコトラーは著書である「マーケティング4.0」で指摘しています。

カスタマー同士がつながり合い、さまざまな情報にアクセスできるようになった接続性の時代で、コトラーが提唱する新時代のカスタマージャーニーは、認知(aware)・訴求(appeal)・調査(ask)・行動(act)・推奨(advocate)であり、カスタマージャーニーのゴールは、行動から推奨行動へ定義されます。

カスタマーが推奨行動を取るためにはカスタマー・エクスペリエンス(以下CX)は、特に重要なものとされています。

商品を購入したりサービスを利用したりする際にカスタマーが得られるCXが期待以上であればカスタマーは感動し、リピート(行動)し、さらにカスタマーの評価が口コミなどで広がっていくことで、新規カスタマー獲得(推奨)に繋がる可能性が高まるからです。

近年、CXを提供する上で、コンタクトセンターの位置付けは更に重要なものとなってきています。

かつてコンタクトセンターといえば、「いかに多くの問い合わせに迅速に答えるか」というスピードや効率性が最優先され、そこでの価値は、「いかにカスタマーの待ち時間を少なくするか」が重要視されていました。

しかし現代では、Webやスマートフォンがあるため、ほぼ全てのカスタマーはあらかじめFAQなどを見たうえでコンタクトセンターに問い合わせをします。つまり、Webを見てもわからないこと、あるいは自分が知りたいことを「より深く」聞きたい、それがカスタマーの希望です。

そのため、コンタクトセンターも一人ひとりを意識した対応が求められます。カスタマーの行動を一貫して捉え、一人ひとりに適切に対応することが、CXの改善に繋がります。

カスタマーが自ら企業に問い合わせたり、要望を伝えたりすることは、企業にとって大きなチャンスです。そのチャンスでカスタマーをきちんと理解し、真摯に対応することができれば、カスタマーにとって良い体験になり、リピートのきっかけにもなり、良い口コミにも繋がるため、カスタマーが推奨者となります。

そこで今回は、コンタクトセンターの現場において、CXを向上させるためにトランスコスモスがどのような取り組みをしているのかについてご紹介します。


目次[非表示]

  1. 事業所MVVの策定を推進
  2. お客様企業を交えたワークショップの実施
    1. お客様企業を深く理解する
    2. カスタマーを深く理解する
    3. 我々のミッションを明らかにする
  3. まとめ

事業所MVVの策定を推進

トランスコスモスでは、2019年度より「事業所MVVの策定」という取り組みをお客様企業の窓口単位で導入推進しています。

事業所MVVを策定することで、生産性や応対品質など「現状課題の改善を目的とした運営」をしていた従来のコンタクトセンター型から、CXの創出・改善、プロフィット化など「クライアントの経営理念、ビジョン実現に向けた戦略的な運営」をしていく為の新時代型コンタクトセンターへ移行していくことを目指しています。

「事業所MVVの策定」とは、カスタマーが期待するタッチポイントを実現するため、お客様企業のありたい姿(Vision)を理解し、コンタクトセンターが果たすべき役割・存在意義(Mission)を認識した上で、ミッション・ビジョンを実現するために個人の行動指針(Value)で落とし込むトランスコスモス独自の取り組みです。



そのための具体的な取り組み内容の一部をご紹介します。


【要件設定】お客様企業を交えたワークショップの実施

・お客様企業とのVisionの共有

・カスタマージャーニーの策定

・ペルソナの策定


【コンタクトセンター構築】ワークショップ未参加メンバー、新規メンバーへの浸透

・参加型研修にて定めた事業所MVVの共有

・個人行動指針の策定


【コンタクトセンター運営】浸透チェック、お客様企業への提案

・カスタマーの問い合わせ背景を理解した上で対応できているかのチェック

・事業所MVVからCXを向上させるための提案活動


これらの取り組みから期待できる効果には、「応対品質の向上」「CXの向上」「プロフィットセンター化」が挙げられます。

個人の行動規範(Value)に関しては、トランスコスモスとしてお客様企業に価値を提供する原点である「経営の基本理念」と「サービスマインド」を行動に移しやすくするためにTCIPという言葉で置き換え、それぞれの窓口毎に設定しています。



これまでは、お客様企業に合わせた業務ルールの設計をしていくことを重要視していましたが、昨今の状況の変化を踏まえ、コンタクトセンターで働くメンバー一人ひとりの意識改革でCXが変化するという考え方のもと、全てのメンバーがお客様企業の理念を理解し、一丸となって業務に取り組むことに重点を置いています。

次章では、全てのメンバーが一丸となって業務を行うために必要なことを、具体例を交えてご紹介します。

お客様企業を交えたワークショップの実施

トランスコスモスでは、カスタマーの期待を明確にし、より高いタッチポイントを実現するために、お客様企業のビジョン実現に貢献するためのコンタクトセンターを開設する際に、お客様企業を交えたワークショップを開催しています。従来から委託いただいているお客様企業でも本取り組みの一部を開始しています。※1



お客様企業を深く理解する

お客様企業を深く理解するために、企業沿革、ビジョンの共有、発注経緯とトランスコスモスへの期待に関して綿密な打ち合わせを実施しています。実際に運用を担当するメンバーが、お客様企業の目指すビジョンと、トランスコスモスへの期待について深く理解する場を設けることで、委託業務開始後に「こんなはずではなかった」といった初期トラブルの防止にも寄与します。


カスタマーを深く理解する

お客様企業を理解した上で、お客様企業と関わりのあるカスタマーについても理解する必要があり、理解しないことにはCXを高めることは出来ません。

しかし、カスタマーとひとくちに言っても、年齢や性別、趣味嗜好などは人によって様々です。
そのため、まずはターゲットとして設定するカスタマー像を明確にするために、ペルソナを設定します。

ペルソナとは、架空の人物像です。現状カスタマーの情報や、インタビュー、調査データなどの実在する情報から、架空の理想のカスタマー像を描きます。タッチポイントやマーケティングに関わる全ての関係者に、理想のカスタマー人物像が共有できます。そしてペルソナに対し、どのような製品やサービスを提供するべきなのかを考えます。



仮に100人に「今、どこかに旅行するとしたら、どんなところに泊まりたいですか?」と質問をしたとします。すると100通りの答えが返ってくるのではないでしょうか。

一概に旅行に行くと言っても、100人それぞれ目的や泊まりたい場所などが異なります。温泉に行きたい人もいれば、テーマパークに行きたい人もいます。自然の多い旅館に泊まりたい人もいれば、市街の高級ホテルに泊まりたい人もいます。なるべく安く済ませたい人もいれば、豪遊したいという人もいます。

このように個人の好みや考えによって変わる期待を「個別的な事前期待」といいます。

そこで、ターゲットとするカスタマーの人物像をイメージしながら「カスタマージャーニーマップ」を作成することはカスタマーを理解するうえで必須です。

カスタマージャーニーマップとは、その名の通りカスタマーの行動や思考、感情などを時系列順にマップ化したもので、サービスを設計する際に活用することで、サービスの課題や問題点などを可視化することができます。

設定したペルソナの情報をもとに、どのような選択をするか、どのような思考なのか、感情の動きはどうなっているのか、注意すべき点はあるか、などを想定し、よりカスタマーの期待に応えるための方法を考えます。

カスタマージャーニーマップは、サービスのアイデア発想や設計のためのヒントを発見し、よりよいCXを実現するのに役立つ為、トランスコスモスではカスタマーを深く理解するための手法として取り入れています。


我々のミッションを明らかにする

お客様企業、カスタマーを理解した後は、一人ひとりがどのような目的を持って仕事をしていくべきなのかを考えます。仕事の目的の有無によって、行動に大きな違いが生まれます。

仕事の目的がある場合は、やるべきことが明確になり判断に迷うことなく一丸となってサービスを提供することができ、仕事に対する意欲も高いレベルで維持できるようになります。企業にとっては離職率の低下をもたらし、社員にとっては仕事にやりがいを感じられ、仕事への積極性も向上していきます。その結果、カスタマー側にとっては常に高いレベルでサービスを受けることができるため、必然的にCXも向上するという良い循環が生まれます。

一方、仕事に目的がないとやることが明確でないため、社員の行動にバラつきが出たり、判断に迷う、不安になるなど、精神的にも肉体的にも疲弊してしまいます。また、仕事に対する意欲が湧かなければ、当然、やりがいなども感じられず、結果として離職率の増加や提供されるサービスの品質低下などに繋がります。もちろん、カスタマー側としても提供されるサービスの品質が低ければ満足度は下がるため、CXを向上させることは難しいでしょう。



トランスコスモスでは、メンバー一人ひとりに仕事の「目的」を理解してもらった上で、お客様企業のありたい姿(Vision)を理解し、コンタクトセンターが果たすべき役割・存在意義(Mission)を認識した上で、ミッション・ビジョンを実現するために行動規範であるTCIPを設定しています。

まとめ

CX向上に向け、トランスコスモスの事業所MVVの取り組みについていくつかご紹介しましたが、策定をしたら終わりでは意味がありません。トランスコスモスでは「事業所MVV」を基に、お客様企業とコミュニケーションを取りながら、日々の改善活動を実施しています。

また、取り組みをレベルアップさせるためにも、「ベストオブMVV賞」という社内表彰制度を設定し、成果事例の共有と表彰をコンタクトセンター本部全体で取り組んでいます。

トランスコスモスのコンタクトセンターサービスでは、接続性の時代において、重要となるCX向上に向けたコンタクトセンター設計から運用改善まで提供することが可能です。

実施内容や効果事例に興味がある方はお気軽にこちらからお問い合わせください。


※1 随時導入中。詳細は営業担当までお問い合わせください。


trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

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