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【コミュ調2021 徹底解説】前編:技術先行ではなく、消費者理解からはじめるDX推進

「コミュ調2021」徹底解説 ~はじめに~ はこちらから

  【コミュ調2021 徹底解説】消費者と企業のコミュニケーション実態調査から読み解く、令和の「DX推進」新常識 ~はじめに~ 消費者と企業のコミュニケーション実態調査2021を徹底解説する特設ページを公開しました!コミュ調2021の調査結果をもとに、消費者視点でDXの在り方を捉えなおします。企業が消費者コミュニケーションのDX推進に失敗する理由を考察し、DX推進のために必要な組織体制や具体的な施策について、全3回にわたってお伝えします。 trans+(トランスプラス)


目次[非表示]

  1. 消費者コミュニケーションで普及しつつある「新チャネル」
  2. マルチチャネル化する消費者コミュニケーション 
  3. DX推進の新常識 その①

消費者コミュニケーションで普及しつつある「新チャネル」

昨今のコロナ禍により、消費者と企業のコミュニケーションにおけるデジタル化が加速したといわれています。

実際「店舗より通販を利用し3密を回避したい」、「スマホのほうが早くて便利」という声をよく耳にします。

コロナ禍を契機として、非対面接触チャネルの重要性が改めて認識されることになったわけです。しかし、本当のところ消費者はどのようなコミュニケーション手段を利用しているのでしょうか?

まずは、消費者同士のコミュニケーションの実態から見ていきましょう。この6年間で、SNS、メッセージアプリ、チャットなどスマホを起点としたデジタルチャネル利用が拡大し、新たなコミュニケーション手段として定着しつつあります。


図1:消費者同士のコミュニケーション変化


図1からも分かるように、消費者同士のコミュニケーションは着実にデジタル化しているといえます。
では、消費者と企業のコミュニケーションについても、デジタル化は進行しているのでしょうか?
消費者と企業のコミュニケーションに用いるチャネルの利用経験率と、増減トレンドを調べてみました。


図2:消費者と企業のコミュニケーションチャネルの利用経験率


図2を見ると、確かにアプリやチャット、SNSといったデジタル技術を活用したチャネルの利用は概ね増加しているようです。

なかでもメッセージアプリとチャットは利用経験者が急増しており、いわゆる“キャズム”(図3)と呼ばれる普及率16%の溝を超え20%以上の消費者が利用しています。しかし、電話や店舗などリアル接点の利用経験率も70%以上と高く、まだまだ根強く利用されています。

消費者と企業のコミュニケーションは、デジタル一辺倒ではなく、むしろマルチチャネル化が進行しているというべきでしょう。


図3:“キャズム”のイメージ画像 


とはいえ、メッセージアプリやチャットなど比較的新しいチャネルのニーズは、確実に存在します。

図4は消費者コミュニケーションにおける新チャネルの利用経験率と利用意向率を比較したものです。利用経験の割合が、ニーズを示す利用意向を大きく下回っています。


図4:利用意向と利用実態からみる
企業の新チャネル実装状況


これは、企業側の新チャネル実装状況が消費者ニーズの水準に追いついていないことを意味しています。

ゆえに企業はこれらの新チャネルを整備し、DXを推進することが急務となっています。

しかし、だからといって、ここで結論を急ぐべきではありません。新チャネルの導入には、もう少し消費者のライフスタイルの変化やニーズについて、理解を深める必要があります。

マルチチャネル化する消費者コミュニケーション 

コロナ禍による消費者のライフスタイルの変化を見てみましょう。

図5にあるように、在宅時間が伸びた影響でスマホや動画を利用する頻度が増加する一方、消費者の55%がECと店舗を使い分けるようになっています。企業側も感染症対策としてEC・デリバリー面を強化するようになりました。

その結果、天気の良い日は店舗を訪問する、人が多く混み合う日はデリバリーを利用するなど、消費者の選択肢が多様になったと考えられます。


図5:コロナ禍によるライフスタイルの変化


つまり、コロナ禍を契機に、消費者はリアルとデジタルをますます器用に使い分けるようになっているのです。消費者と企業のコミュニケーションにおける「マルチチャネル化」が進んでいる背景には、このような消費者の「TPOに応じたチャネルの使い分け」ニーズがあるのです。

DX推進担当者は、コスト削減など企業側の都合を重視するあまり、リアルをデジタルに置き換え「チャネルを一本化」したり「自己解決を促進」したりすることに固執しがちです。

しかし、リアルかデジタルか、自己解決か対人解決かといった「二元論」はあくまで企業視点に偏った発想です。

「なるべく複数のチャネルを使いたい」、「必要に応じて人と相談して解決したい」というニーズを持つのは、消費者視点で考えれば当然のことなのです。

図6は消費者が企業とコミュニケーションを取る際「なるべく複数のチャネルを使いたい」と思う層と「自分で解決したい」と思う層の比率を、商品購入前後の局面*別に示したものです。


図6:局面別の
「自己解決派」「マルチチャネル派」比率


*各局面の詳細は以下の通り

「情報収集段階」:企業の商品・サービスの認知段階から関連商品含めた情報収集を幅広く行う段階
「購入前 相談段階」:ある程度商品・サービスを絞り、購入候補の比較検討を行う段階
「購入後 相談段階」:購入後のサポートや問合せを行う段階


消費者は、情報収集や購入前の段階はできるだけ多くの情報を得たいため、なるべく多様なチャネルを利用しますが、対人チャネルは避けて自己解決を好む傾向にあります。

逆に購入後段階では、困りごとやトラブルを少しでも早く解決したいため、なるべく少ないチャネルで済ませ、必要であれば対人による確実な解決を求める傾向にあります。

また、実際の消費者ニーズは「簡単な内容ならばできれば自己解決したいが、難しい問題だと分かった時は対面や口頭で相談しながらサポートを受けたい」など、かなり複雑なものになっています。(詳しくは中編で解説します)

要するに消費者にとっては、局面ごとに自由にチャネルを使い分けたいというのが本心なのです。

DX推進の新常識 その①

消費者はリアルかデジタルか、対人解決か自己解決かといった企業視点の「二元論」でチャネルを選びません。より良い顧客体験を求めて新旧様々なチャネルを、TPOや局面に応じてマルチに使い分けているのです。

それにも関わらず、デジタル化やコスト削減をしたいという企業都合だけで、リアルチャネルを単にデジタル技術を活用した新チャネルに置き換えても、消費者がすすんで利用してくれるわけはありません。これこそが「チャットボットを導入したが効果が出ない」という失敗が起きる原因なのです。

消費者コミュニケーションのDXを推進する企業担当者は、今いちど足を止めて再考してください。

最新のデジタル技術を導入すること自体が自己目的化していないか?

消費者のライフスタイル変化やニーズに対して、十分な理解や洞察ができているか?

より良いCXの提供のためには、どのチャネルを組み合わせ、どう使い分けてもらうのが最適なのか?

それは消費者にとって、どんなメリットがあるのか、どうすればメリットを最大化できるのか?

このような自問自答を通じて、消費者視点の発想を取り戻すことが、DX推進の第一歩といえるでしょう。


「新常識」 その①

消費者コミュニケーションはデジタル一辺倒ではなく、マルチチャネルの使い分けが前提になっている。

より良い顧客体験を提供するために、TPOや局面に応じて最適なチャネルを推奨・誘導しよう。


では、ここでいう「より良い顧客体験」とは、具体的にどのようなものでしょうか?

次回の中編では、消費者が求めるCXの全体像を明らかにし、より良いCXを提供するための組織体制について解説します。





trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

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