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【コミュ調2021 徹底解説】中編:ファネルではなく、プロセスで考えるCX戦略

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  【コミュ調2021 徹底解説】前編:技術先行ではなく、消費者理解からはじめるDX推進 消費者と企業のコミュニケーションのデジタル化が加速する一方で、電話や店舗などリアル接点も根強く利用されています。消費者のライフスタイルの変化を参考にし、DX推進の新常識について考えます。 trans+(トランスプラス)


目次[非表示]

  1. CX理解のための「優良顧客育成地図」 
  2. 消費者の検索行動がCXに与える影響力 
  3. サイレント・マジョリティがCXに与える影響力 
  4. VOCを全社的に活用するための組織体制
  5. DX推進の新常識 その② 

CX理解のための「優良顧客育成地図」 

「前編」では、より良い顧客体験(CX)を提供するためには、単にデジタルチャネルを実装するのではなく、TPOや局面に応じた最適なチャネルを推奨・誘導すべきであるという「新常識」を確認しました。

では、消費者が求める「より良いCX」とはどのようなものなのでしょうか?

デジタル化やマルチチャネル化が進んだことで、CXにどのような変化が生まれているのでしょうか?

企業はCXの全体像や変化を理解したうえで、どのような組織体制でどんな取り組みをするべきでしょうか?

一般的に消費者は、商品を認知したのち購入し、購入後に満足できればリピーターやファンになり、逆に不満を抱えた場合は離反する、といった体験を繰り返します。消費者がたどるその道のりはカスタマージャーニーと呼ばれ、「AIDMA」「AISAS」「5A」「グッドマンの法則」などの諸理論によって模式化されています。

コミュ調では、それらのエッセンスを「優良顧客育成地図」という形で図解しています。


図1:「優良顧客育成地図」2021年度版


図1の「優良顧客育成地図」を考察した結果、特に興味深い事実を2点見出すことができました。いずれもデジタル技術の普及に伴い、CXに影響を与えた具体例となります。

1. Webが普及したことで、あらゆる局面で「検索行動」の影響がますます大きくなっている
2. 問題発生時に、企業に直接不満を伝える消費者の割合は半数程度にすぎない

以下、順を追って詳しく解説していきます。

消費者の検索行動がCXに与える影響力 

まず、「検索行動」がCXに与えた影響について見ていきましょう。

図1の優良顧客育成地図を見ると、「商品を知るきっかけ」としてマス広告の影響力は依然大きいといえます。

しかし、「比較検討の手段」や「購入を決めるきっかけ」など、実際のアクションを生み出す情報収集手段はWebを利用したものが中心となっています。その中でも、「Web検索」が特に重要な役割を果たしています。

Web上の情報や検索行動が影響を及ぼす範囲は、商品購入前の情報収集段階だけではありません。

図2にあるように、商品購入後に何かしら問題が発生した場合でも、ほぼすべての消費者がWeb検索を行い、約8割が公式サイトの商品情報やFAQの情報を駆使して自己解決を図ります。それでも問題解決できない場合に、電話やチャットなどの対人解決行動に流れていくわけですが、そうした対人チャネルの窓口を探す場合でもWeb検索は欠かせない手段となっています。


図2:消費者が問題解決に至るまでの
カスタマージャーニー


ところが、Web検索やそれ以降の導線整備・コンテンツ改善が不十分なため、「チャットボットを導入したが効果が出ない」という失敗を招くことが多いようです。失敗の原因として、カスタマーサポート部門の管掌業務にWeb改善が含まれていないことが考えられます。

サポート担当者もWebは専門領域外なのでどうしていいか分からず、かといって別部門に属しているWeb担当者との社内調整も難航し、改善活動がおろそかになりやすいようです。

企業全体でWeb検索の重要性を再認識し、プロモーションやサポートといった業務領域の垣根を越えて、役割分担や人材配置の見直しを行う必要があります。

サイレント・マジョリティがCXに与える影響力 

「検索行動」に続いて、購入後に消費者がとる「問題発生時の不満表明行動」について見ていきましょう。

VOC(Voice of Customer|ボイス・オブ・カスタマー)の重要性を疑う人は少ないと思いますが、電話などで企業に直接問合せをしてきた消費者のVOCだけに耳を傾けていてよいのでしょうか。図1の優良顧客育成地図にあるように、消費者が企業に直接不満を伝えてきた際、「迅速かつ満足」な対応ができればリピート率は92%まで高まります。

しかし、よく見ると「企業に直接不満を伝え、改善を求める」のは全体の半数程度にすぎません。残りの半数は不満を感じていても物言わぬ「サイレント・マジョリティ」となるのです。そしてその一部は、不満の声をSNS上の不特定多数のユーザーに共有・拡散します。

図3は、それを聞いた他の見込み客が、どんな行動をとるのかを調べたものです。サイレント・マジョリティを放置することが、不満顧客本人のロイヤルティ低下を招くだけでなく、新規顧客の獲得にも悪影響を及ぼすことが分かります。


図3:SNS上の不満の声を見た見込み客の行動


では、そのようなサイレント・マジョリティに、どう対応すべきでしょうか?

たとえば、サイレント・マジョリティのVOCを聴く手段として、「ソーシャルリスニング」が挙げられます。ソーシャルリスニングというと、キャンペーン直後のバズ拡散トレンドや頻出キーワードなどの反響分析、ブランドに対する意見を良し悪しで分類するポジネガ分析をイメージする人が多いかもしれません。

しかし、ここで収集・分析したいのはそのような尖ったVOCではなく、図4の上段にあるような、商品の購入や利用時に発生する、ささやかな疑問やちょっとした困りごとなどのニュートラルなVOCなのです。


図4:「ソーシャルリスニング」で
聴取できるVOC


見込み客や解約検討者は、コールセンターなどを通じて、その疑問や悩みをわざわざ企業に伝えてくれませんが、SNS上には、企業が直接聞くことができないサイレント・マジョリティのVOCが含まれています。コールセンターとSNSの両方を比較分析することで、ニュートラルなVOCから新規獲得や離反防止につながる消費者インサイトを明らかにすることが可能になります。

また、アクティブサポートのように、SNSユーザーに能動的に働きかける取り組みも有効です。調査結果によると、消費者の73%はアクティブサポートをしている企業に良い印象をおぼえます。

しかし、アクティブサポートは宣伝効果や評判形成を狙って行うものではありません。見込み客や離反客も含めた幅広いユーザーとの関係づくりを目的とした施策だと捉えるべきでしょう。

VOCを全社的に活用するための組織体制

Web検索やSNSの影響力拡大に対応するには、従来の組織体制における役割分担や人材の配置・育成の考え方から根本的に見直す必要があります。

Web検索はあらゆる局面における最重要手段ですので、Web担当者の業務領域をプロモーションだけでなくカスタマーサポートにまで拡大し、両方に精通した人材を再配置しなければいけません。

ソーシャルリスニングやアクティブサポートについても、企業内のどの組織が担うのかが問題になります。

「SNSはWebサービスの一種だからWebチームで担当する」とか、「顧客対応の一種だからコールセンターで対応する」といった形で実行部隊を決めるのも安直です。プロモーション活動が目的なのに、クレーム対応のようにガチガチに形式化したものは好まれません。

一方、カスタマーサポートが目的なのに、軽いノリが行き過ぎると、かえってユーザーの反感を買ってしまいます。だからこそ、SNSコミュニケーションにあった人材を登用し、教育する必要があります。

しかし、多くの企業は、いまだに認知促進や広告宣伝のためのプロモーション部門、販売促進や購入支援のためのセールス部門、購入後のカスタマーサポート部門といった、マーケティングファネルの局面別に組織の役割分担をデザインしています。

このような「ファネル型」組織は、カスタマージャーニーを縦に分割した縦割り組織となり、自部門の目標達成を至上命題とするあまり、他部門との連携をおろそかにしがちです。

その結果、Web検索の改善や導線整備が進まずFAQやチャットの利用が滞り、コールセンターに入電が集中してつながりにくくなり、顧客満足度やロイヤルティが低下するという状況が生まれてしまいます。

ファネル型組織の構造的な欠陥を解消するには、コミュニケーションチャネルを集中管理し、カスタマージャーニー全体を一気通貫で最適化する「統合運用型」の体制構築が求められます。

近年、コールセンターとWebやSNSの運用チームをなるべく近くに設置し、コミュニケーションチャネルを統合して運用する企業が増加しています。

たとえば、大手飲料メーカーA社では図5のように、経営層の指示のもと、VOCを起点としてワンチームでカスタマーケアができるような統合運用型の体制を構築しています。A社では、Web検索の改善や導線整備など、自己解決促進や入電量削減のための連携が円滑化されました。

また、各チャネルに寄せられるデータを多角的に収集・分析してVOCを全社的にフィードバックし、必要に応じて関連部署に迅速なアラートをあげるなどの取り組みを日常的に行っています。それにより、顕在化した顧客だけでなく、潜在的なサイレント・マジョリティとのコミュニケ―ションの活性化を図ることが可能になりました。


図5:コミュニケーションチャネルの
統合運用と活用体制イメージ
 

DX推進の新常識 その② 

消費者は情報収集から相談問合せまで、あらゆる局面でWeb検索を頻繁に利用します。

また、企業への不満を電話で直接伝えるだけでなく、サイレント・マジョリティとなってSNSに拡散します。

このような消費者行動の変化に対応するには、従来の「ファネル型」の縦割り組織では限界があります。組織間の役割分担や人材配置を見直し、消費者視点に立ってCXを全体最適化することが求められています。


「新常識」 その② 

消費者の多くは、まずはWebで自己解決を図り、解決できない時は有人チャットや電話を利用する。
不満を直接伝える消費者は半数程度で、SNS上のサイレント・マジョリティが大きな影響力を持つ。

チャネルの垣根を超えた改善活動やVOC活用のために、
「統合運用型」組織へと移行しよう。


しかし、「チャネル間連携」や「統合運用」は、言葉でいうのは簡単でも実行するのは容易ではありません。だからこそ、それらを実現するためにデジタル技術がその威力を発揮するのです。

最終章となる後編では、デジタル技術の活用による顧客ロイヤルティ向上の要諦について解説します。 






trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

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