行政・自治体サービスに民間ノウハウ活用を! 自治体DXの第一歩はUI・UXの改善から
民間企業では当たり前のように、様々なデータを1つのプラットフォームで管理したり、あらゆる問い合わせチャネルをシームレスに連携させていますが、行政・自治体においては事業や部局毎に異なるシステムやルールが混在し、“管理が煩雑になっている” “意思決定に時間がかかり必要な方に必要な支援が届けられない” “問い合わせ対応で本来の業務に集中できない” など、長らく抱えている課題にお困りの方も多いのではないでしょうか。
本記事では「行政・自治体サービスに民間ノウハウの活用を!」をテーマに、アウトソーシングと最新のテクノロジーを組み合わせて実現する自治体DX事例についてご紹介します。
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行政・自治体サービスに民間企業のノウハウを活用!
行政・自治体の課題として『デジタルトランスフォーメーション(DX)推進』というのをよく聞きますが、まずそもそもDXとは何なのかを理解する必要があります。
出典:経済産業省 デジタルトランスフォーメーションの河を渡る ~DX推進指標診断後のアプローチ~
DXとは何かを簡単に説明すると、DXとは「現行ビジネスの世界からデジタルエンタープライズの世界への河の渡り方」です。
DXはあくまで河を渡るための手段であり、本来の目的は渡った先の世界。つまり行政・自治体が住民に対して実現したい事業です。これを成功させるためにデジタルを最大限活用しましょうというのがDXの本質であると言えます。
民間企業も盛んに取り組んでいるDX推進ですが、行政・自治体の場合はどのような課題に対しDXを進めていくべきでしょうか。
例えば、『必要な人に必要な支援が届かない』というケースについては、補助金の申請をする際、補助金をもらう本人が書類を揃えて、窓口まで行って、各種手続きを行う必要があるというのをよく聞きます。しかしこのケースには、“補助金を必要としている本人が役所の窓口まで出向くことが困難” “書類の記入事項が分かりにくい” “同じ内容を何度も記入する手間がかかる” など、多くの問題があります。
こうした問題に対し、民間企業であれば当然ながらユーザビリティ向上のための施策を実行しますが、これは今や行政・自治体にとっても他人事ではなく、積極的に民間企業のノウハウを取り入れ、活用し、利用者の満足度向上のための取り組みを進めることが求められています。
また、『業務が非効率で本来の目的に時間が割けない』といった問題もよく聞きます。
一例としては、“日程調整や書類手続きに時間がかかる” “同じ質問や問い合わせが多く対応のために業務が中断される” “業務委託しても工程毎に事業者やシステムがバラバラで一貫性に欠ける” などです。
こうした問題についても民間企業ではバックオフィス業務はアウトソーシングを活用し、コスト最適化を図るといったことが当たり前のように行われていますが、行政・自治体においてはアウトソーシングの活用の仕方が分からないという声が多いのが実情です。
このような課題に対し、トランスコスモスではアウトソーシングサービスを提供することで課題解決の支援を行っており、問い合わせ対応や基本的な手続きといったノンコア業務を委託していただくことで、職員が本来のコア業務に集中できる環境づくりをしています。
顧客目線でのサービス提供とUI・UXの改善のために
では具体的にどのような課題から改善し、DXを進めていけば良いのでしょうか。
これを考えるうえで重要なことは2点あり、1点目は『利用者の利便性、感覚を考える』ことです。サービスを利用する側の立場になって、利用者が思う当たり前のことができているか、という感覚に合わせていくことが重要です。
もう1点は、『業務改革の視点を持てているか』ということです。効率化、省力化、コスト削減のために新たな取り組みやサービスを導入するだけで満足するのではなく、しっかりと効果が発揮されているのか、DX推進に繋がっているのかという意識を常に持つことが大事です。
この2点を意識することで、「一方的なデジタル化」や「局所的なデジタル化」といった陥りやすい失敗を回避し、自治体DXの実現に繋がります。
また、自治体DXを進めるうえで避けて通れないのが、UX(ユーザーエクスペリエンス:顧客体験)向上のための取り組みです。
例えば、DX推進の一環として利用者とのタッチポイントを増やしたものの、電話、アプリ、ホームページがそれぞれ独立した窓口になっていて連携ができていない場合、利用者を混乱させてしまうだけでなく、シームレス、エフォートレスなタッチポイントの整備に支障が出る、業務が複雑化してしまいかえって手間が増えるといったことにもなりかねません。
当然ながら利用者にとって分かりづらいサービスは利用されないため、結局、手間だけが増えて効果が出ない、DXが “実装” ではなく “実証” で終わってしまうといった結果を招きます。
行政・自治体での取り組み事例
行政・自治体のみが特別、DX推進の難易度が高いのかというと、そうではありません。
実は民間企業においても同様の課題を抱えているケースは多く、利用者にとってより良いサービス提供や、業務効率化、働き方改革を実現するために日々、運用改善に取り組んでいます。
ここからは、行政・自治体のデジタルを活用したサービス提供事例をご紹介します。
まずは、とある都道府県様の補助金事務局にて、コロナまん延防止の政策目標をアウトソーシングで実現した事例をご紹介します。
この事例では、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言および、まん延防止措置が延長された際に中小企業、特に飲食店の休業・時短営業に伴う支援体制を整備するにあたり、トランスコスモスがサービスデザインを支援しました。
従来であれば申請受付、審査、不備解消、支給決定、振込といった各工程で複数の事業者やシステムが関わり、システムやルールが混在しがちでしたが、これを1つのプラットフォームでデータを管理するように変更。利用者目線のUI改善だけでなく業務プロセスを改善したことで問い合わせから審査までの流れを一元化し、統一性のあるシステムやルールのもとワンスオンリーな申請と迅速な給付を実現しました。
具体的には、紙やWebなど複数の申請手段を提供、申請の方法を専用のポータルサイトに掲載し、Web申請ではフォームの入力制御を行うことで事前の不備を抑止。さらに申請者のマイページを用意し、申請者自身で進捗の確認や不備修正を行えるようにするといった環境を整えた結果、初歩的な問い合わせの抑止などに繋がりました。
バックオフィス業務の効率化といった点でも、審査担当者や自治体職員がリアルタイムで同じ履歴をもとに作業することで、スムーズに組織間の連携ができるようになり、支給決定までのプロセスを大幅に短縮することができました。
次にご紹介するのは、市区町村におけるワクチン接種予約コールセンターの事例です。
新型コロナウイルス感染防止のためのワクチン接種率向上を実現するためのサービスデザインをトランスコスモスが支援。UXを重視し、複数の予約手段と窓口(電話、Web、SNS)を提供、デジタルとアナログのハイブリッド運用による「誰一人取り残されない予約システム」を整備しました。
この事例のポイントは後続処理の効率化が重要であるという考えのもと、それぞれの予約手段から得られる情報を分断せず統合することで、後続処理にあたる職員の負担を最小限にし、利用者の体験価値を高めるだけでなく、職員の業務効率化にも貢献しました。
参考:トランスコスモス、新型コロナワクチン接種の予約システムと、予診票をオンラインで作成できるチャットボットサービス「DEC Bot for Government」をセットで提供開始
このように、単にシステムやツールを導入してアナログをデジタルに置き換えるだけでなく、ノンコア業務のアウトソーシング、利用者の利便性向上、運用効率化のための専門組織の設置、業務プロセスの変更、データの一元管理など、バックオフィス業務も含めた業務プロセスを抜本的に見直し、日々の運用改善に取り組むためのサイクルを作ることが重要です。
自治体DXの第一歩は、サイトのUI/UX改善から!
しかし、こうしたDXの取り組み事例もあるなかで、全体を見てみるとまだまだ特定事業単位の部分最適に留まっているのが現状です。
自治体DXを成功させるためには、全体の目指す価値観の明示が不十分、各事業が目指す方向や取り組みがバラバラ、KPIも事業ごとに独自設定されていて相互の関連性が低いといった現状から脱し今後は、“全体の目指す価値観が統一され、必要なデータやアンケート結果などが明示されている” そして、“KPIも統一・連携でき、すべての事業が同じ方向に向かって進む” といった姿を目指す、つまりWell-beingの実現が必要です。
「とはいえ、何から始めれば良いか分からない…」という場合は、まずは住民とのタッチポイントの起点となりやすい『自治体サイトのUI/UX改善』から取り組むことをおすすめします。
どれだけサイト内の情報を充実させても、利便性が悪く、電話での問い合わせや窓口での対応が減らなければ、職員が本来の業務に集中することができず、DX推進どころではなくなってしまいます。
そのため、問い合わせ導線を整理し、デジタルが苦手な中高齢者に向けた分かりやすいUIの整備、そしてデジタルネイティブな世代へ自己解決を促すためのFAQを充実させる、SNSやチャットといった対応チャネルを拡充するなどして、自治体DXの第一歩を踏み出しましょう。
また、総務省が作成した『自治体DX推進手順書』にてあげられている、推進体制の構築や、重点施策、自治体DXとあわせて取り組むべき事項などを参考にしながら、自治体ごとに足りない部分や、課題となっている点から優先的に着手するのも効果的です。
トランスコスモスでは、データを一元管理するプラットフォームの導入、お問い合わせのタッチポイント構築、各種問い合わせ業務の一時対応、データ分析・改善など、様々な場面で自治体DXの実現を支援しています。
本記事の内容にご興味・ご関心をお持ちいただけた方は、担当営業またはこちらからお気軽にお問い合わせください。
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