
AIが切り拓く未知の声! 顧客心理に着目した越境VOC活用術
顧客と向き合うためにコンタクトセンターやWebサイト、SNSなど様々なチャネルを横断した顧客の声(VOC)の収集・分析・活用、そしてCXを基軸とした事業の改善、これらの重要性に気付き取り組みを進める企業が増えてきました。
重要課題を改善するため、そしてこの先のCX時代を生き抜くためにも “部門の垣根を越えた連携” を念頭に置いた施策を講じる必要がありますが、いざ着手しようとしてもそのための具体的な方法を知る機会がなく、二の足を踏む経験をされたことはないでしょうか。
本記事は2023年7月11日のセミナーの続編として、2023年8月30日に開催された『“活用”できるVOC分析の秘訣 ~WEB広告からコンタクトセンターまで部門を超えたVOC活用~』から、VOCの分析・活用の秘訣をご紹介します。
前回のセミナーの様子はこちら
CX時代を勝ち抜くために! チャネルを横断した顧客体験フィードバック活用法
目次[非表示]
CX時代のVOC分析・活用術
CX事業統括 DX推進本部 DXソリューション統括部
デジタルサービス企画部 部長(※2023年9月時点)
野田 健一
前回は、次の2つのテーマをもとにCX最適化のための取り組みについてご紹介しました。
◆ デジタル武装だけでは競合に勝てず、『自発性』『即時性』『対話性』が特長のVOCを活用し、CXを強化することが重要
◆ ただVOCを分析するのではなく、定量軸と掛け合わせて分析をする、データが少なければヒアリングする、活用部門と密に連携する、などコツをおさえることが重要
参加者様からは、「巷に溢れているVOC分析・活用に関するコツやノウハウのなかでも、なかなか市場に出回らない情報が多かった」「有料でも良いので、さらに踏み込んだ活用方法やより具体的な実践イメージを知りたい」との声を多くいただきました。
今回はこれらのご意見を踏まえ、VOC活用の重要性やコツについてさらに深掘りしていきます。
必ずおさえてきたい越境VOC活用法
CX事業統括 DX推進本部 DXソリューション統括部
デジタルサービス企画部 カスタマーサクセス課 課長(※2023年9月時点)
壁矢 智衣
突然ですが、“VOC活用” とは、どのような取り組みを思い浮かべるでしょうか。
たとえば、新商品の開発、呼量の削減、WebサイトやSNSの運用改善、クレーム改善、FAQ改善、様々なシーンでの活用イメージが思い浮かぶかと思います。これらの取り組みは大きく分けて2つのテーマで考えることができます。
まず1つは『コンタクトセンター内部でのVOC活用』で、呼量削減、クレーム改善、セールストーク改善、コンタクトセンターのFAQ改善など、コンタクトセンター内で完結させるためにスピーディーに取り組んでいく領域です。
もう1つはコンタクトセンター部門を飛び越え、他部門を巻き込んだ取り組みを進めていくための『越境VOC活用』で、新商品の開発、Webサイト改善、SNS運用改善、顧客メッセージ(広告)の改善、などがあげられます。
企業により担当部門が異なるため、必ずしも一概に言い切れるわけではありませんが、多くの場合これらはコンタクトセンターの外で取り組まれることが多く、部門を飛び越えた取り組みを進めることから、トランスコスモスでは越境VOC活用と定義しています。
不満体験(悪い体験)が顧客ロイヤリティに与える心理的影響は大きく、感動体験(良い体験)が与える影響の何倍ものインパクトがあります。
さらに手間や負担感の少ない、いわゆるエフォートレスな体験をした際のリピート率は、そうでない場合と比べて圧倒的に高いことも分かっています。
そのため、顧客のマイナス体験による購買行動への影響を避けるためにも、感動体験を提供し続ける仕組みを作り出すことこそが、これからの時代を勝ち抜くための最重要課題です。
内部改善のための取り組みはVOC活用の基本として身近なものになってきており、前回もご紹介しているため、今回は成功事例をあまり見ることがなく、具体的な手法についても情報を集めにくい越境VOC活用について、詳しくお伝えします。
様々な顧客接点の全てでVOCを活用し、顧客の不満体験をなくすことが求められる
越境VOC活用を成功させるためのポイント
ここからは具体的に、越境VOC活用を成功へ導くためのポイントを2つお伝えします。
ポイント1:VOC分析から始めない
1つめのポイントは “VOC分析から始めない” です。
上の図は前回もご紹介した、VOC活用の全体俯瞰図です。
VOC活用において、陥りやすい失敗の1つが “VOCデータの分析から始めること” です。
手元にVOCデータがあれば、まず手始めに分析しようと考えるのは自然なことで、当然の心理ではありますが、長らくVOCの分析・活用に携わってきた経験上、VOCデータの分析から始めるとほぼ間違いなく失敗します。
実際にお客様企業からVOC活用に関する課題でご相談をいただく際も、蓋を開けてみればVOCデータを分析した結果のみで施策を進めようとしていたが故に上手くいかなかったケースが大半です。
VOCの分析・活用を成功に導くためには、まず『定量データ』と『活用シーン』をしっかりと定めることが重要であり、これこそが成否の9割を決めると言っても過言ではありません。
この2つは例えるなら、山登りにおける目的地とコンパスです。
山登りをするために目的地を決めるのと同じように、VOCを活用するための活用シーンを定めることが大事です。
山登りをするのに目的地も決めずふらふら歩いていては道に迷うのは当然ですが、VOCの分析・活用となると目的地を定めずに歩きだしてしまい、結果、道に迷ってSOSを出すケースが非常に多いのです。
そのため、まず達成したいものが何なのかを定めること、それが売上アップなのか、顧客満足度アップなのか、CVRアップなのか、どのような目的のためにVOCを活用したいのかを明確にし、そのためにどのようなデータを集める必要があるのかを整理することが重要です。
次に、定量データは山登りにおけるコンパスのようなもの、つまりVOCの分析・活用をするうえでの道しるべです。
ただし、定量データはどのようなものを用意するか、どのようなデータなら目的を達成するための道しるべになるかを考えることがとても重要です。
たとえば、商品の改善をしたいのであれば、商品名・商品群・商品番号など特定の商品に関する情報が必要であり、広告の改善をしたいのであればターゲットを区別するために性別・年代・どの広告を見たか・購買に繋がったかの情報が必要になります。
定量データをどのように集めるのかというと、これこそが越境VOC活用の最大のポイントである “VOC活用部門と連携する” ことに繋がっていきます。
どのような場面でどのようなデータを活用したいのか、そのためにどのようなデータを集めるべきか、これらは活用イメージも含め、VOC活用部門が握っていることがほとんどです。
具体的には、次のような内容をVOC活用部門へヒアリングしてみると良いでしょう。
1. 部門内で感じている課題
2. VOCを活用したい領域
3. 過去のVOC活用履歴
4. 過去のVOC活用実績や効果
5. 施策を講じる頻度
これらはコンタクトセンターの中だけで考えていても答えは出ません。部門を跨いで連携することが必須の領域であることを認識し、いち早く行動しましょう。
ポイント2:VOCを仕分ける
活用シーンと定量データを揃えてから、本格的にVOCの分析・活用を進めます。ここでの重要なポイントは、“VOCを仕分ける” ことです。
膨大なVOCデータのなかから、業務改善や顧客満足度アップのために活用できる有益なデータを集めるのに苦労する企業は多く、その様子はまるで「広大な砂漠の中から1粒の砂金を見つけ出すようなものだ」と言われています。
では、その広大な砂漠の中から1粒の砂金を効率よく見つけ出すためには、どうすれば良いのでしょうか。答えは、“砂金がありそうな場所に当たりをつけて探す” です。
具体的にどのように当たりをつけるのか、その方法は3段階にわかれます。
まずは分析するエリアを仕分けて、エリア別に特徴を付けていき、いくつかある特徴のなかから目的にふさわしいものを選別していきます。この際、キモになるのが仕分けの作業です。
仕分けるとは “定量軸と話題分類軸を掛け合わせて分析すること” つまりクロス集計です。
定量軸とは、前述した山登りにおけるコンパスです。定量軸についてはポイント1で準備できているので、次に用意するべきは話題分類軸です。
話題分類軸とは、VOCをその内容によって分類するものです。例えば、購入前・購入後で分けて分類する、ネガティブ・ポジティブに分けて分類する、問い合わせの内容によって分類する、など方法はさまざまです。
分類の方法は大きく分けて2つあります。1つめは『仮説先行型』です。
これは解明したい仮説が先にあり、その仮説に沿って話題を分類する手法です。
例えば、購入前・購入後の顧客の関心事を知りたいと考えた場合、購入前と購入後の大枠のシーン別に分ける、あるいはカスタマージャーニーに沿って分類する、のように知りたいことを探るために条件を絞っていきます。
仮説先行型は従来から用いられてきた手法で、まずはVOC分析をしようと考えた際の多くはこの手法から着手することでしょう。
仮説先行型のメリットは、人があらかじめ考えて分類するため、綺麗な分類いわゆるMECE(漏れなく、ダブりなく)な分類ができるので取りこぼしが少なく、既知の声の根拠材料として示しやすい点があげられます。
一方、既存の枠組みにとらわれるため未知の声を発見しにくい、細かく分類設定を作る必要がある、1件ずつ人が目で見て分類する必要があるため仕分けに膨大な手間と時間がかかる、といったデメリットもあります。
さらに、仮説先行型には致命的な弱点が存在します。それは “いついかなるときも仮説があるわけではない” ということです。
仮説先行型とはその名の通り、仮説が先にあって初めて成立する手法です。
しかし、仮説をいつでも思いつくわけではなく、そもそも分析に適した仮説を設定すること自体ハードルが高い、コンタクトセンターの日常業務にはあまり馴染みがない、などの理由から誰でも気軽に実践できるものではなく、これがVOC分析・活用の定着の妨げになっています。
仮説先行型は、長らくテキストマイニングの世界では主流として扱われていることもあり、今現在もこの手法を推奨している分析講座は多数存在します。
ですが、これからのVOC分析・活用については、もう1つの手法が本命になっていくのではないかと考えています。
これからの本命となる手法、それはずばり『AI伴走型』です。
その名の通り、AIの力を借りて分類を進める方法で、仮説が思いつかない状態でもAIが膨大なデータのなかから規則性や法則を発見・分類し、それぞれの分類軸にポジティブ・ネガティブ、不満、要望、お怒りなど、どのような声が多いのかを集計してくれるため、それをもとに人間が考察し活用していきます。
前述のとおり、仮説先行型の弱点は使用する人を選び、難易度が高いことです。しかしAI伴走型では、熟年のVOCアナリストの力を借りずとも、誰でも気軽に実践することができます。
また、VOCを活用するにも分析にばかり時間をかけるわけにはいきません。スピーディーさを求められる状況において、仮説先行型の考察するための集計や分類に多くの時間と工数がかかるという弱点はVOC分析・活用の定着の妨げになる要因の1つでしたが、AI伴走型は分析するための準備をAIが瞬時に実行してくれるため、現場での展開もしやすく、加えて、既存の枠組みにとらわれないため、未知の声を見つけやすいメリットもあります。
VOCを効率的かつ最大限活用するために
VOC分析を効率的に、そして得られたデータを最大限活用するためには、次の3つのポイントをおさえて取り組むことが重要です。
1. コンタクトセンターの枠を飛び越えた越境VOCの活用
2. 分析する前に定めた目的と定量軸を持つVOC活用部門との連携
3. 仮説のない状態からでもVOC分析の実施を可能にするAI伴走型の活用
トランスコスモスでは、VOC活用における “収集” “分析” “活用” すべてのフェーズをワンストップでサポート可能です。
コンタクトセンター内部でのVOC活用はもちろんのこと、あらゆる顧客接点をカバーする越境VOC活用にも積極的に取り組み、お客様企業のCX推進に貢献していきます。
本記事の内容に関する興味・関心・疑問などあれば、こちらよりお気軽にお問い合わせください。
<参考>
顧客接点を網羅したBPOサービスの展開とCX目線でのVOC活動の再出発
【VOC活用サービス】顧客の貴重な声をビジネス成果につなげるために
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