CX時代を勝ち抜くために! チャネルを横断した顧客体験フィードバック活用法

企業の競争優位性を確立するためにはチャネルを横断したVOC(Voice of Customer)の分析と活用、顧客体験を基軸とした事業の改善が必要不可欠です。

本記事では、2023年7月11日に開催された『~CX時代に競争優位性を築くカギ~ 顧客体験フィードバックを部門横断で活用する体制の作り方 垣根を越えたVOC収集・活用法』をご紹介します。


目次[非表示]

  1. なぜいま改めてVOCが注目されるのか
  2. 垣根を越えたVOC収集・活用を実現するための秘訣
  3. Insight BIを活用して効率的なPDCAを実現
  4. CX時代を勝ち抜くための3つのポイント

なぜいま改めてVOCが注目されるのか

CX事業統括 DX推進本部 副本部長
岩浅 佑一


ビジネスを成長させるうえで顧客の声(VOC)は最重要であり、決して無視することはできません。

VOCの重要性についてはこれまでも言われ続けてきましたが、改めてVOCの有効活用について注目が集まっています。

デジタル化により顧客の声はより身近に、そしてより重要になっており、顧客の声に傾聴することが、商品購入意欲・サービス利用優先度・企業のイメージ向上に直結します。


出典:消費者と企業のコミュニケーション実態調査2022-2023


トランスコスモスが毎年実施している『消費者と企業のコミュニケーション実態調査2022-2023』を見てみると、VOCの収集やSNS上の声に対するソーシャルサポートを行っている企業へ、取り組みを通じて顧客が商品やサービスの購入・利用に積極的になったか、企業の評価やイメージの向上につながったかを聞いたところ、半数以上の企業がポジティブな結果につながったと回答しました。


出典:消費者と企業のコミュニケーション実態調査2022-2023


商品を知るきっかけ、他の商品との比較・検討、購入の決め手になるのはサイトのレビューや周囲の評判、口コミなどです。

顧客の声をすぐに拾い、それをオペレーションの改善へとつなげることが、インパクトのある体験の提供、ひいては顧客体験の変革への近道になります。

従来はVOCをリアルタイムで収集・分析することができず、コンタクトセンターに届いた声を一定期間ごとに分析するケースが多かったものの、近年はコンタクトセンターのデジタル化によってリアルタイムでの分析・活用も容易になったことから、よりスピード感をもって取り組むことが重要です。

様々なチャネルから収集した、

・苦情やご要望
・問い合わせのログ
・アンケートの回答データ
・SNS上のポジティブ&ネガティブな声

を集約し、リアルタイムに分析をかけ、サービスや対応の改善につなげるまでをコンタクトセンターで一元的に実行することにより、これまでのコンタクトセンターから進化をとげた “CX戦略センター” を創出することを目的に、様々な試みを行っています。

垣根を越えたVOC収集・活用を実現するための秘訣

CX事業統括 DX推進本部 DXソリューション統括部
デジタルサービス企画部 部長
野田 健一


VOCという概念は数十年以上前から存在しており、その時代ときどきで有効活用されてきました。

それがいま改めて重要視される理由は、デジタルの革新によって市場のパラダイムシフトが起きているためです。



現代ではモノが溢れかえり、所有することへの欲が満たされている、つまりモノを所有することそのものの価値が低くなってきています。

そのかわり、モノを使った体験や質に対して対価を払う考え方にシフトしており、企業はこうした顧客体験の在り方やニーズの変化を読み取り、体験や質の向上に対してコミットしていく必要があります。

もうひとつ大きな流れとして認識しておかなければいけないのは、現代は顧客が優位であり、主導権を持っているということです。

スマホの普及によって情報武装が促進され、口コミや比較を経て、調べてから購入することが当たり前になったためです。

さらに、データ収集・分析の方法も変化し、様々なサービスがアプリケーションと連動もしくはアプリケーションのみでリリースされることが珍しくなくなり、アプリケーションをローンチしてから顧客のフィードバックやVOCを分析し、その内容をもとにしたサービスの改善や、利用実態データをもとにしたマーケティング活動が当たり前に行われるようになるなど、とにかくスピード感を重視する傾向が見られます。

また、商品やサービスを買ってもらうことはゴールではありません。

むしろ買ってもらってからがスタートであり、その後も顧客と長く付き合っていくことができる企業には有益なデータが集まり、PDCAが加速し、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)が最大化され、その結果として企業が成長し、また新たな顧客を獲得するという好循環が生まれます。

つまり、今後は “デジタル化” が待ったなしの状況になるとともに、“CXと向き合う” ことが企業の活動における大きな潮流になっていきます。


では、そもそもCXの本質とは何なのでしょうか。

これは正解があるわけではありませんが、トランスコスモスでは、“機能や価格ではなく、信頼や愛着こそがCXの本質である” と考えています。

なぜなら、定量化できる品質と機能のみに裏付けられたモノづくりの優位性は徐々に薄れつつあり、定量化できないモノをつくる際の姿勢、歴史、設計者や作り手の性格、提供者や推奨者の審美眼に、顧客が信頼や愛着を感じること、それこそが重要であり大きな差別化の要因になると考えているからです。

そのため、これからはデジタル武装をするだけでは競合には勝てず、顧客体験とそのフィードバックを踏まえてCXを強化すること、そしてCXが最重要のイシューとなり、顧客の声に対して真摯に向き合っていくことが求められる時代になっていきます。


そこで重要になるのが、顧客体験とフィードバックの宝庫であるVOCの分析・活用です。

企業活動によって蓄積するデータベースにはなかなか見られない大きな特徴として、VOCからは『自発性』『即時性』『対話性』をもったデータが集まります。

◆自発性
・実施に商品を使用している顧客からの生々しい情報
・企業側の想定を超えた、真の顧客視点の情報
◆即時性
・商品の不具合やトラブルの予兆をいち早く発見
・商品やキャンペーンの反響を逐一チェック
◆対話性
・顧客の発言に応じた質問や理由の深掘り
・顧客の状況に応じた提案や投げかけができる



VOCを収集・分析するためのポイントを詳しく見ていきます。

まず、『データソース』として、企業に蓄積されたサポートやセールスのログ、そしてアンケートなどのマーケティングのデータを収集・統合し、テキストマイニング、NLP、テキスト系AIなど、企業の特性・タスクにあわせて『マイニング/言語処理』を活用することで効率的にVOCの分析を進めることができます。

そして、定量データを掛け合わせることでVOCを全体像のみで捉えるのではなく、全体と特定のクラスタを比較した際の傾向、A群とB群を比較した際の違い、などさらに深掘りすることが可能になり、効果が倍増します。

この “VOC × 定量データ” の考え方はとても重要であり、さらにプラスしてCRMやBIを使って可視化していくことで、効率的にVOCを分析・活用するための環境を整えることができます。

もうひとつ重要なのは、製品の開発や改善、問題解決、収益への貢献といった、目的に応じた活用シーンから逆算して分析設計をすることです。

まずは活用シーンを定め、そのために必要となるセグメントやターゲットに絞って分析することで「どこから手をつければ良いか分からない」といったよくある課題にぶつかりにくく、自然とVOCの分析を効率的に進めるための導線を取ることができます。



VOCを素早く、効率的に分析するためには、

・あらゆるVOCを溜めておき、いつでも使えるような状態にしておく
・テキスト系の分析と定量データの分析を掛け合わせて両輪でまわす
・結合したデータをもとにPDCAをまわす
・KPIに対する成長度合いや足跡を追えるようにする

を実現するための環境を整えることが重要であり、これらの条件を満たして初めて、VOCを活用した施策の効果が最大限発揮されます。

とはいえ、実際のところ「もっと手前に存在するハードルを越えることがそもそも難しい」というお声を、お客様企業からいただくことも少なくありません。

そのため、“目前のハードルを越えるために必要なこと” についても深掘りしていきます。

VOCの活用で直面するよくある課題は次のとおりです。

1. VOCと呼べるものがない、探しても見つからない
2. せっかくVOCを共有しても改善の実行や施策につながらない



よくある課題の1つめについては、実は気づいていないだけで、普段の何気ない会話そのものがVOCの宝庫である可能性が高く、それでも本当に無ければ聴き出すことで解決します。

“お問い合わせをする” ということは必ず何かしらの理由があります。CRMのログにはテキストデータとして残っていなくても、いざ会話ログを聞いてみると、問い合わせた理由や原因、商品を購入した経緯などの価値あるVOCが、オペレーターとの会話に出てきていることが往々にしてあります。

電話でのお問い合わせの理由や原因が明らかになればWebサイトのUI/UX改善などにつなげることができ、商品を購入した理由が蓄積されれば今後打ち出すキャンペーンやWeb広告のヒントとして活用することができます。

このように、何気ない会話のなかにも非常に価値の高いデータが眠っていることが多くあり、会話データをしっかりと拾い上げるためにコンタクトセンター向けの音声認識ソリューションを活用するのも手です。

<参考> transpeechサービスのご紹介

  transpeechサービスのご紹介 音声認識・品質管理・AI degender・感情解析・対話要約 5つ機能でコンタクトセンターの課題解決を支援します。 trans+(トランスプラス)



VOCと呼べるものが全く無い場合は、顧客に直接、聴き出すのがシンプルかつ最も効果的です。

VOCが見当たらない理由としてよくあるのが、

・そもそも入電数が少ない
・生産性/効率重視でログが簡素である
・会話の深掘りがしづらい
・顧客の商材への関心/関与度が低い

などです。

この場合、トランスコスモスがコンタクトセンター運用で培ってきたノウハウを活かし、生産性を犠牲にしないレベルで、コンタクトセンターならではの対話性を活かしながら、オペレーターに顧客の声を聴き出してもらうための仕組みを設計します。



2つめの課題については、VOCを活用しやすい部門を見極め、タッグを組み、周囲を巻き込みながら取り組みを進めるのが効果的です。

例えば、次のような業務を行う部門であればタッグを組みやすいのではないでしょうか。

・成果直結型の業務をメインにしている
・普段、顧客との接点がなくVOCに触れる機会がない
・運用サイクルが短く新たなアイデアを次々に考える必要がある
・プロダクトとは、モノよりサービス(SaaS)であると考えている
(例)Web広告・マーケティング・顧客育成・EC/LPサイト・プロダクト開発など

この際、プロジェクトを創出するチームが主幹となる覚悟を持つことが最も重要で、さらに以下のポイントをおさえつつプロジェクトを進めることができるとベストです。

・タスクや期間を設定する
・マーケティングのチームなどを巻き込む
・プレ分析から反省、振り返りを経て、実際のマーケティング施策に活かしPDCAをまわしていく

Insight BIを活用して効率的なPDCAを実現

ここまでお伝えした内容をもとに施策を進め、よりクイックかつ手軽にPDCAをまわすために、トランスコスモスは『Insight BI』を開発・提供しています。



CX向上を推進すべき現場ではチャネルのデータが散在し、全体を俯瞰した分析ができておらず、“運用や施策に確証を持てていない” “レポート化に時間がかかりPDCAサイクルが思うようにまわらない” などの課題に悩まされるケースがよくあります。



このような課題を解決するために、Insight BIではこれまで個別に分析・改善していたデータをひとつのダッシュボード内で一元管理。

全チャネルからプライオリティの高い改善点を導き出し、CX向上のための施策を着実に進めることができます。

一元管理されたデータは様々な切り口で、見たい時に確認・共有できるダッシュボードによって、データの分析・活用が恒常化されます。

また、電話・チャットなどの主要接点ごとの個別分析視点から脱し、WebサイトやSNSまでを含むチャネルを横断した全体最適の視点により、問題点の絞り込みや説得力のある打ち手につなげていきます。

さらに、レポート作成時間のタイムロスがなく、よりタイムリーに状況を知ることができ、“データ活用の恒常化”“課題整理や打ち手の説得力アップ” “PDCAの回転率アップ” に貢献します。


多くのお客様企業でCX推進に直結する改善アクションを増やすことに貢献



以上のようにInsight BIを活用することで、

・コールVOCから知見を発見、SNSでエビデンスを強化、といった横断型の分析をリアルタイムで実施
・KPIを施策実施の前後で見比べることによる着実な効果検証
・問い合わせコストの最適化
・レポート作成の効率化

を誰でも簡単に行うことができます。


<参考>デジタルとリアルの境界線を超える! データ統合で実現するビジネス成長と顧客エンゲージメントの向上

  デジタルとリアルの境界線を超える! データ統合で実現するビジネス成長と顧客エンゲージメントの向上 DX推進・CX向上への取り組みを進めるうえで、問い合わせチャネルの統合管理、データ収集・分析について避けて通ることはできません。本記事では、統合管理の必要性や、CX最適化のための取り組みを行うことで具体的にどのような効果をもたらすのかをお伝えします。 trans+(トランスプラス)

<参考>Insight BIサービスのご紹介

  Insight BIサービスのご紹介 DX・CX推進の課題感一つ一つを捉え、解決し、円滑にDXを推進していくためのサービスがInsight BIです。 Insight BI導入をきっかけに、DX・CXで取り組む領域を明確にし、統合データ・レポートをいつでも確認できる環境を作ることで、全体最適視点で説得力のある施策を実行できます。 trans+(トランスプラス)


CX時代を勝ち抜くための3つのポイント

直面するCX時代を乗り切り、勝ち抜く企業になるために、

VOCを収集することが重要であり、様々な思考で会話データ・SNSを交えた良質なデータを溜める
・VOC分析はターゲット/セグメントなどの軸と一緒に実施することで効果が倍増する
PDCAできる環境を整えることが重要であり、BIツールなどで日々の業務に活用していく環境を構築する

の3つのポイントをおさえることで、企業の競争優位性を確立し、顧客体験の差別化をはかることができます。

トランスコスモスはこれからも、お客様企業のCX推進を力強く後押ししていきます。

本記事の内容に関する興味・関心・疑問などあれば、こちらよりお気軽にお問い合わせください


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trans+(トランスプラス) 編集部
trans+(トランスプラス) 編集部
ITアウトソーシングサービスで企業を支援するトランスコスモス株式会社のオウンドメディア編集部。メンバーはマーケター、アナリスト、クリエイターなどで構成されています。

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